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西表島の陸活動、ピナイサーラの滝の上と下その①

 2020年7月、人生3回目のピナイサーラの滝に行った。2008年7月、日帰りだったが、初めて西表島に来た時に来た場所。日帰りで楽しめ、自然を満喫できるツアーとして定番だ。西表島にはたくさんの滝があって、名前もない滝もある。そんな中、3回って、ピナイサーラ好きだねぇっと言われそうだが理由がある。初めて来た時には友人と別行動をする日だったので1人で参加した。2回目は新婚旅行で旦那さんを連れて、3回目の今回は、2008年7月に別行動をした友人に見せたかったので、合計3回。3回目のピナイサーラの滝は随所にオプション満載の素敵なツアーだった。

 ピナイサーラとは、「ピナイ」はアゴヒゲ、「サーラ」は下がったもの、アゴヒゲのように下がった滝ということだ。落差54m、沖縄県では一番の落差だ。これまでの2回は滝つぼまで行くツアーだったが、今回はピナイサーラの滝の上と下に行く。滝の上と滝の下、両方に行く両成敗な冒険ツアーだ。

  始まりはヒナイ川のカヌー乗り場。民宿さわやか荘のツアーガイドのSちゃんが教えてくれたのだが、地元のおじぃ、おばぁは「ピナイサーラ」ではなく「ヒナイサーラ」と言うらしい。だから、ピナイ川でなくヒナイ川なのだ。カヌー乗り場には川に沿ってズラリとカヌーを収納する棚が続いていて、見渡しても棚の終わりが見えない。Sちゃん曰く、夏のピークの時だと、ここに延々と日帰り冒険家たちの行列ができ、カヌーに乗り込むまで30分以上かかるのだという。今日の冒険家たちは非番が多いのか、カヌーにはすんなり乗り込めた。オールでひと漕ぎ、カヌーがゆっくり水面を走り、私は見上げた。ひそひそ話の内容も筒ぬけの静かな世界。初めて来た時も、2年前も同じ、ひと漕ぎしてから空を見上げ、耳をすました。

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豊かな青と緑と白の世界。もくもくと成長した自然が目に飛び込むこの瞬間が好きだ。初めて西表島でカヌーを漕いだ時に感じたこの瞬間を今も慣れることなく感動できることが嬉しかった。

 こぎ始めて10分、気持ち良いお天気雨が降ってきたかと思ったら、あっという間に雨はバサバサ音を立てて降りだした。負けじと前進していたが、勝てるわけはなく、川の両側に生い茂るマングローブの軒先を借りることにした。完全に雨がしのげるわけではないが、助かったと思った直後に雷3発。大雨と雷3発、みんな全身ずぶ濡れだ。数分後、少し離れた所にいるツアーガイドのSちゃんを見ると、さっきと少し表情が違う。思いがけないオプションのこの先のことを、あれや、これや考えているのか、水面を通してSちゃんの気持ちが伝わって来た気がした。

「こんなオプション付けたっけ?」思い立って、高い音量でちょっと言ってみる。ずぶ濡れだけど楽しかったからね。だって、マングローブで雨宿りする経験が今までになかったもの。

「ボチボチ行きますかっ!」Sちゃんのかけ声がうれしかった。

 40分ほどかけてヒナイ川をカヌーで登り、こんどは40分かけてピナイサーラの滝の上までのトレッキング。道は狭いが、ある程度、登山道が整備されているので登りやすい。登りづらい岩場にはちゃんとロープを垂らしてくれている。途中、タコの足が四方にニョロニョロうごめいているような根っこが特徴のアカギの木が印象的だった。ドンドン登って、視界が開けたら、そこがピナイサーラの滝の上だった。

  ジャングルがすぐそこまで迫っている広い岩盤の上にそっと片足をおろすとジャングルの先からサラサラ水が流れて来ている事に気づいた。流れをたどると、流れの幅は2mほどになり、その先は崖。ピナイサーラの滝の始まりは小さな流れだった。ツアーガイドのSちゃん指導のもと、崖のどん詰まりからうつぶせで真下をのぞく。大量の水の粒のかたまりが潔く落下していくが、終着点はしぶきで白くかすみ見えない。しかし、目の前がパッと開けたような感覚になった。

 その時、肩のあたりが緊張したのは崖をのぞいた恐怖感だけではなく、ある人の言葉を思い出したからかもしれない。思い出した言葉、それはヨガの先生が教えてくれた「見方を変えるとそのあとの目の前の世界が広く明るく見える、ちょっと感覚が変わる」だった。つづく。

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