原発性マクログロブリン血症にボコボコにされた話

倦怠感(だるいこと)に困って、数ヶ月我慢していたけど、病院にやってきた方。

画像では、肝脾腫(肝と脾が両方腫れる)とリンパ節腫脹(リンパ節が病的に腫れる)と胸水(肺と周りのスペースの間に溜まる水)、腹水(腹の中の水)がありました。骨髄の濃度上昇(骨髄は白血球などを作る細胞があり機能が異常亢進している)もありました。

これだけでは、多くの鑑別(候補となる病気)が挙がる上、特異性が低い(これだ!とバシッと決まらない)のです。

ここで「・・・があります。」で終わると、主治医にとっては、情報がないので(何の病気か?について進まない)、血液検査など他の検査をみて、候補を絞り込んでいくことが多いです。

ちなみに、そこまでしなくていい、画像検査だけから言えることを言えばいい、という意見がありますが、問題の解決につながらないと僕は考えます。

で、血液検査を見てみると、白血球が異常に上がっている、正球性貧血がある、血小板も上がっている。CRP(炎症のサイン)も少し上がっている、
白血球の上がりは、感染症のそれを上回り血液疾患のような数値(数万)になっており、正球性貧血とは、出血や血液疾患で起こることが多い、血小板が上がっているのは、感染症の時などだけど、これらを合わせても、不気味なことは起こっているが、いまいち何なのかわからなかったです。白血球の値から、骨髄の機能亢進は、画像の見立てと矛盾しないと思ったくらいですね。

あと主治医はあまり深く分析しておらず、追加の検査を出していなかったです。
ちなみに、血液検査と一口に言っても、想定する疾患によって、詳しい検査をしたり、追加の検査をオーダーしたりして、カスタマイズできます。

少ない情報の中から、候補に上がるのは、肝脾腫をきたして、血球が異常になって、リンパ節腫大をきたす疾患ですが、表の中からチェックしていったが、血小板が上がるのが当てはまらなくて難渋。

結局、CML,CLL(慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病)の二つを挙げましたが、いずれも矛盾する箇所があるという歯切れのわるい回答になりました。

紹介先の病院の紹介状の返書を見て、
骨髄穿刺、リンパ節生検などを行って、原発性マクログロブリン血症とのことでした。確かに、ほとんどリンパ腫に近い疾患で、肝脾腫、貧血を呈しますが、通常は血小板は下がることが多いので、やはりここで引っかかって間違えました。おそらく、別の二次的な病態(別の異常な状態)が同時に存在していたのでしょう。

そもそも、すべての検査項目が揃ってもいないのに、先走って疾患名をいくつか挙げると、ミスリードにつながると反省しました。

教訓として、
大量の情報があり、どれを重要と取るかで、他の情報の重みが全く変わってくること。
情報の重みのパターンを変えると、未来の予想図は全く違ったものに見えること。それはさながら錯視や錯覚に近い。
どの情報が重要であるかは、現場に立っている瞬間、つまり前向きには、全く判別不能であること。
(後から見て初めて、ノイズと、重要な情報の区別ができる)
複数の状態がオーバーラップすると、途端に処理負荷が大きくなり、混乱しやすくなること。