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日本交通会長が語るタクシー業界。今までの10年とこれからの10年

ご乗車ありがとうございます。日本交通(株)新卒採用担当です。

この記事は、2022年7月26日に23卒・24卒の就活生に向けて行った座談会ライブ配信のルポ記事です。テーマは「タクシー業界の今までの10年とこれからの10年」。古い業界と思われがちなタクシー業界の意外な内情、そして未来を担う新卒に向けた期待の言葉がたっぷりつまっています。

特に、就活生の方には、業界研究としても役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

出演したのは日本交通(株)の会長・川鍋一朗と、新卒1年目の社員土生はぶ優希。

会社のトップと、入社1年目。立場も年齢もまったく違う二人がどんな掛け合いをするのかも見どころです。

また、今回「会長を前にイベントの司会」という大役を担った土生が、大奮闘する舞台裏の様子はこちらからご覧いただけます。ぜひ併せてご覧ください。

タクシー業界の変化 ~これまでの10年~

土生(司会) 会長、本日はよろしくお願いします。まず、これまでのタクシー業界の10年間はどのように変化してきたのかを教えてください。その変化の中で、会長の思惑はどの程度達成できていますか?

川鍋 今年でタクシーは110周年を迎えます。そしてこの10年の変化は、それ以前の100年の変化より大きいんです。それがなぜかと言うと、スマホの誕生が大きかった。

タクシー産業自体が、誕生後から10年前まではまだオペレーション産業だったんです。つまり、電話でタクシーを呼ぶということですね。たとえば私の祖父の時代は、営業所にいる土生運転手に「今日〇〇町で5時から予約入っているから行ってきて」と言う。そして営業を終えたらまた営業所に帰ってきて別の予約の場所に行く。

無線ができてからは、いちいち戻ってきてもらわなくても、外にいる土生ちゃんに無線で連絡して「次は〇〇へ行ってくれ」と指示が出せるようになった。でも100年の進化ってそれくらいしかなかったんですよ。

でも今は半分オペレーション、半分テクノロジーに変わった。産業の本質が変わったんです。中でもITを担うMobility Technologies(MoT)の誕生は大きい。タクシーの進化は日本交通とその他のタクシー会社、そしてMoT、特にタクシー配車アプリGO、これらの合わせ技で進化したんですね。

ここ10年の流れを見ると「思ったよりちゃんと正常に進化が進んでいるな」という実感があります。

今から4年前にタクシーを進化させようとJPN TAXIジャパンタクシーというワゴン型車両が出たんですね。あれがやっぱり目に見える形で「今までとは違う」というアピールに繋がったと思います。

それまでタクシーは黄色、他社さんだと緑やオレンジなど、カラフルな色だった。それをトヨタ自動車の社長と、東京オリンピックを機に「東京の景色を変えよう」ということで、濃藍という一つのカラーに統一した車両を出すことになりました。

濃藍のJPN TAXIが東京の景色を変えた

支払いがキャッシュレスになったのも大きい変化ですね。10年前、僕がタクシーに乗っていた時は、クレジットカード以外は使えなかった。今は交通系ICやネット決済も含めて基本全部使える。さらにアプリを使えば、タクシーを呼ぶところから支払いまで、すべて完結する。最近は空気清浄機もつきました。

この10年で、車両そのものも呼び方も支払い方法も変化が進んで、タクシーがIT産業化したことが、明確に外からも見えるようになりました。この10年のタクシーの進化は劇的に早いと思います。

新卒採用から10年、現場で起きた想定外の変化とは?

土生(司会) 今、タクシー産業がめちゃくちゃ進化していて、視聴者さんにも感じられる変化が訪れていることがわかっていただけたんじゃないかと思います。

そして日本交通が新卒採用を始めたのが、ちょうど10年前です。私が内定者だった時、会長がおっしゃっていたのは「若いからこそ変化への対応がすぐできるよ」ということでした。実際、新卒に対してそういう印象はありますか?

川鍋 タクシーを進化させる方向性はテクノロジーだとわかってはいるものの、やっぱり業界にはスマホを使ったことがない方も多い。でも新卒の採用を始めたときに思ったのは、その人たちが圧倒的にデジタルネイティブだってこと。新卒を増やせば増やすほど、タクシーの未来とぴったり方向性が合う。タクシーの未来を実現する乗務員さんの姿がそこに見えたんです。

新卒採用を始めた時に、実際に起こった想定外のいい変化として、この会社に元からいるおじさんたちがすごく刺激を受けたんですよね。

元からいた乗務員さんからしたら、新卒の子は自分の子供くらいの世代。道も不案内だし運転もおぼつかくて困っている。ピヨピヨって感じですよね。そこから「ほっとけねえなあ、教えてやるよ」って関係性が生まれました。

逆に若い人がラインとかをサクサクやってると、おじさんたちから「教えてくれ」と言われる。そんな両側からのいい相乗効果が生まれましたね。

土生(司会) それは私もあるなって感じます。私、ときどき妹と夜に舞浜とかへドライブするんですけど、もし乗務員さんだったらナビに出てくる以外の道も知ってるんじゃないかなって。

昔から乗務員をされている方から経験を学び、私たちもデジタルネイティブとして教えられることは共有する。そこはウィンウィンの関係かなと感じます。乗務員になることが楽しみで仕方ないです。

「新卒は俺たちの希望」

土生(司会) 会長は過去の10年で新卒が実績を挙げているという実感はありますか?

川鍋 それはもう世界が変わりましたよ。希望ができた。

というのも、新卒1期生から3期生くらいのうちは、営業所も新卒をどうやって扱っていいかわからなかったんです。「こんなに道を知らないのか」「こんなに運転できないのか」と、できないところばかり目についていた。

毎年年末に営業所の人と「1年お疲れ様です」と言って飲むわけですよ。「今年どうだった?」と聞くと「いや~新卒の子は大変です(汗)」って返ってくる。それが、3年目からガラッと変わって。3年目の終わり、年末に飲み会で飲んでたら「あいつらのいる意味がわかりました。あいつらは俺たちの希望です」と営業所の人が言い始めて。

彼らは運転も下手だし道もわからない。とにかく白紙なんですよ。だから言われたことを「はい!」と言って何でも一生懸命やる。素直なそのまっすぐさを目の当たりにして、自分たちがいかに斜に構えていたかわかった。その時に、これが新卒のいる意味だと気付いたと。

最初は「あんなに一生懸命やっても……」と思っていても、心のどこかで「まっすぐやっていて偉いな。自分も中途半端にやってないで一生懸命頑張ろう」と思うようになる。フレッシュであるがゆえの純真さ、まっすぐさにみんなすごく影響を受けました。

土生(司会) 私も営業所に配属されたら、絶対にまっすぐに素直にいきたいなと思います。

川鍋 言われたことをすぐやると、いいことがいっぱいあるよ。

これまでの変化は序章にすぎない ~これからの10年~

土生(司会) 次に未来の話をしたいなと思うのですが「これからの10年」について、会長の頭の中を知れたらなと思っています。私たちの活躍するフィールドはどうしても未来ベースになるということで、会長はこの先どのようにタクシーが進化していくと思いますか?

川鍋 次の10年の進化は、これまでの過去の10年の進化よりも早いですよ。なぜなら、ようやく道具がそろったからです。いい車もできて、新卒も毎年300人入社する会社になった。アプリも世の中に浸透して、キャッシュレス決済も普通できる。

これまでは、タクシーがより便利になるフェーズでした。これからはようやく、タクシーのさらなる進化を実際に感じてもらえるフェーズになります。

①相乗りタクシーの一般化

今のタクシーは基本的にA地点からBまで行く乗り物で、平均乗客数は1.4人です。これがどう変わるかというと、まず相乗りタクシーが10年後には世の中に浸透しています。来年再来年からどんどん本格化して、10年後には今日アプリを使っているくらい、相乗りが普通に使われるようになります。

来年には、今空港を走るリムジンバスの小さい版が相乗りでできる予定です。空港シャトルですね。新卒乗務員が配車を受けると「一人目は麻布十番、2人目は渋谷、3人目恵比寿でピックアップして羽田空港に行ってください」という指示が出る。

すると何が起こるか。乗務員にとっては、複数個所を回って3人お乗せするので、一人お乗せして空港に行くよりも距離が出るし運賃もプラスになる。また、お客様からすれば、自宅からキャリーケースをひっぱってバス乗り場や駅に行かないといけなかったのが、予約すればその時間に自宅の目の前まで迎えに来てくれる。

土生(司会) めちゃくちゃ便利ですね!

川鍋 そう。もちろん今でもタクシーを予約すれば乗れるけど、それなりにお金がかかるじゃないですか。だからビジネスパーソンとかじゃないとタクシーを呼ぶのってなかなかできない。

でももう少し普通の人たちでもタクシーの3分の1くらいの値段で空港まで行けるようになります。荷物があるときには便利ですよ。

そういう相乗りサービスは空港から始まって、それからは自分の住んでいる地域内でオンデマンドシャトルバスが出てきますね。たとえば近所まで行くのに、タクシーだったらすぐ乗れる代わりに1000円や2000円かかるところを、相乗りシャトルかオンデマンドタクシー……何て名前になるかわからないけど、それを呼ぶとすぐには来ないし何か所か回るけれども、タクシーの3分の1か半分の値段で移動できる。バスとタクシーのあいの子みたいな存在ですね。お客様の移動に新しいオプションができる。それがこれからの10年で日本に一般化します。

それに伴って車も大型化します。今のJPN TAXIもセダンからワゴン型に大きくなったけど、まだ4人乗り。タクシーも今後10年で相乗りができるように大きくなる必要があるので車両もハイエースなどミニバンの大型車になります。

②業界を先導してGXをリード

2番目の変化は、グリーン化です。今もタクシーはLPGガスで走っているからガソリンで走るよりは環境に優しいんですが、これからはGX(グリーントランスフォーメーション)といってどんどんEVになっていくフェーズになります。タクシーがEVになるのを日本交通がリードしていく形ですね。

たとえばグリーンシャトルタクシーに乗ると、CO2排出量がどれくらい削減したかがアプリに提示されたり、そういうタクシーに乗ったらクレジットでポイントがついたりといった、移動における二酸化炭素削減をやっていく。アプリでタクシーを呼んだり、相乗りタクシーを呼ぶことがグリーンで環境にいいという世界です。

③働き方の変化、タクシーでパートタイム?

3番目は働き方の変化です。今の土生ちゃんたちは新卒で入ってフルタイムで働くでしょ。そうではない、パートタイムというチョイスも作りたいと思っています。

たとえば土生ちゃんが結婚して子供ができたとき。子育てのために産休を取って、そのあと保育園に預けてフルタイムで働くという選択肢もあるけれど、たとえば月に3回だけ乗りますとか、昼間だけ月に10回だけ乗りますとか、そういうことをやれるようにしたい。

人生の中でライフスタイルの変化に応じてそのチョイスができる。そういう働き方の変化が今後の焦点です。

その一環として来年から始めるのが、日本交通の看板を背負ってそのまま個人タクシーになるという『日交個タク』。俺は私はタクシーを一生やるんだと決めたらなれる。個人タクシーの免許は法人で10年やらないとできないけど、1期生からもう10年たっているので、新卒でも個タクができるようになりますよ。

他にも、アイドルになりたい人がいれば、月に半分だけタクシーをやって、半分はアイドル修行するでもいい。そのためには短期間でも働けるフレキシブル乗務員を増やしたいです。この仕組みも来年からトライアルを始めたいね。

10年後にはそういう働き方の人がいっぱいいるイメージ。それも全部スマホから始まったテクノロジーの進化によってできるようになる。だからスマホの起こした構造的変化はすごいんだよね。これからの10年は、スマホやアプリが行きわたったことを土台に、入社した新卒で新しいことがどんどんできる。

これからの10年、お楽しみはこれから。これまでは序章に過ぎない。ここからようやく本編が始まります。

新卒への期待

土生(司会) 今変化を3つ教えていただきました。相乗り、EV、働き方の多様化。聞いていて世界が新しくなると同時に、日本交通も新しくなっていく感じがします。それには新卒の力が必要ですよね?

川鍋 新卒の力がなくてはできない!(ビシッ)

相乗りもそうだし、特にEVやGXっていうのは皆さんの世代がネイティブで、ESGやSDGsに対する基本的な感度が敏感なんですよ。そういう方向に世の中は動いていく。

それに従って、会社も「変化はコントロールできない、ただその先頭に立つのみ」の精神をもってタクシー業界の変化は日本交通がリードする。これが日本交通の役割。日本交通から、そして新卒乗務員から、タクシーの未来をどんどん切り開いていきます。

土生(司会) 最高ですね! 時代の最先端を行っている感じがして本当に楽しみになりました。乗務に対する不安だったり、これからの10年ってどうしても見えないものじゃないですか? それが今私の頭の中で少しずつ見える化してきたなって。今これをご覧になってる全世界のみなさまも想像できてきた方がいっぱいいらっしゃるんじゃないかなと思います。時代の最先端を会長と一緒に歩んでいきましょう。

川鍋 一緒に歩むというよりは一緒に作る、だね。未来は予想できないので、むしろ未来を自分で作るというのが正しいですよ。自分たちで先頭に立っていれば、こっちじゃないっていうのもすぐ直せますから。

土生(司会) そこが先頭の強いところですね!

川鍋 そう、TVニュースとかは全部後なんですよ。TVニュースに出てこないことを先にやる。だからニュースになる。

よく「そういうアイデアってどうやって思いつくんですか?」と言われるけど、一生懸命先頭に立って試行錯誤していれば自然と皆思いつくんですよ。でもそれには先頭になってやる人がいないとね。それがあなたです。(ビシッ)

質問①入社を控えた、23卒の学生に何を求める?

土生(司会) ここから先は学生さんからいただいた質問にお答えいただきます。チャットからのご質問で「これからの日本交通に入社する23卒の学生に求めることがあればお伺いしたいです」とのことです。

川鍋 大学時代にしかできないことを一生懸命やってきてください。わかりますよ、仕事をするときに働くような知識を身に着けたいとか、そういう気持ちで質問をしてくれたんだと思いますが。

僕もビジネススクールを終えてマッキンゼーに入るときに、マッキンゼーの人に同じ質問をしました。何が求められますかって。でも答えはむしろ会社に入ってから役立つことを学生のうちにやるのはあまり意味がないってこと。入社したらその環境の中で最大限学べばいいんです。

それよりは今しかできないことをしてほしい。たとえばサークルを一生懸命やる。日本一周自転車旅行するでもいいし、キャンピングカーで皆で旅行するでもいいし、海外行くでもいいし、何でもいいけど今しかできない時間の使い方をしてほしい。

それが遠回りなようでも、後で役立つんですね。あまり勉強とかしない方がいいと思う。勉強より実践。あまりこんなこと言っちゃいけないけど(笑)。

その代わりぼーっと過ごさないで一生懸命やってほしいなと思います。たとえばバイトをやるんだったら、そこでリーダーになれるように頑張ったり、バイトの別の職種に挑戦したり、別のアルバイトに挑戦してもいい。

土生(司会) 私も学生のころいろいろやったんですけど、よかったなと思う点もあって、当時学生ながらにYouTubeに出させていただいたことで今に繋がっているなっていうのはすごくあります。学生の今だからできることもありますし、この質問をしていただいたあなたにしかできないことをやっていただけたらと思います。

質問②入社する会社を決めるうえで重要なことは?

土生(司会):他にも、悩んでいる就活生からの質問があります。「就活生にとって夏休みは自分が本当に人生をかけて勤める会社を見極める、人によっては踏ん張り時の時期だと思います。進路を決定するうえで、自分の目で見て判断する他に『これは重要だ』ということがありましたら、たくさん教えていただきたいです。」とのことです。

川鍋 一次情報になるべく多く触れてほしいです。たとえば自分の先輩でも親戚でも誰でもいいから「今何の仕事してますか」「その会社はどこががいいですか」「逆にどこがよくないですか」と聞いてみる。

別にそれが自分が入ろうと検討している会社である必要はないんですね。一番よくないのはひたすらWEBだけで情報を収集すること。なぜなら、WEBには基本飾った情報しかないからです。もしくはその正反対の劇的なネガ。どちらも真実ではないんですよ。

実際にその会社入ったら、その会社の劇的にいい、または劇的に悪い情報に触れることというのは本当にまれにしかない。わりかし平凡な日々が続くわけじゃないですか。その平凡な日々が自分に合ってるかどうかというのは、最終的に感覚で判断するしかない。

その会社が自分に合うかどうか、そういう感覚の部分がめちゃくちゃ大事。一次情報を通すと「こういう業界はなんとなく心がときめくな」とか「こういう業界は就活的にはいいとされてるけど自分はいまいちだな」とかがわかってくる。

会社が有名かどうか指標にするのもある程度はいいけど、皆さんこれから30年は働くわけですよ。就活ランキングを見ても、30年前の就活ランキングは今と全然違う。今上位にいる会社が30年後も上位にいるケースは大変まれです。したがって、ランキングや「でかい会社だから」で決めるのは相当ナンセンスなんですね。

自分が本当は何が好きか、何がピンと来るかは一次情報をたくさん得ないとわからないし、わかってもなんとなくなんです。「なんとなくこの空気感いいな」とか「落ち着いてる」とか逆に「活気がある」とか。それを感じてほしい。WEBの情報もいいけど、少なくとも3割、理想は半分以上は一次情報をもとに自分を信じて決めてほしい。最後は感覚的な直観です。

「人生をかけて見極める」……まあそれはそうなのかもしれないけど、学生さんからしたらまだ経験が少なすぎてわからないですよ。1か月の夏を朝から晩まで調べたって無理です。むしろ気になる会社が5社あったら、その5社の本社に足を運んだ方がいい。できれば大きな営業所や店舗へ。そういうところに真実がある。そういう一次情報を見て、自分が好きかどうか判断したほうがいいですよ。

親や周囲からの評価で決めること

土生(司会) ありがとうございます。実は土生も日本交通に決めた理由は直観です。そして”就活生の土生”と”純粋な人間としての土生”って違っていて、就活生の土生は周りからの評価で判断しがちでした。就活生ってそうなってしまいがちだと思うんですけど、いかがでしょうか。

川鍋 たとえば2社内定が出たとします。自分はこっちだと思うんだけど、親がこっちのほうが喜ぶとか、同級生の間ではこっちの方がよいとされているとかってあると思う。当然どっちの会社もいい面あれば悪い面もある。

でも悪い面があっても、自分が選んだことなら受け入れられるんですよ。人の目を気にして選んだ場合、そういうネガを受け入れられなくなっちゃう。そのためには自分で選ぶんだという姿勢が大事。

親はもちろん100%自分たちのためを思って言ってくれます。でも親の人生じゃなくて自分の人生。そして親だって、子供には後悔ない自分の人生を送ってくれることを望んでくれているはず。ただそれを強く望むがゆえに、親から見た理想をつい言っちゃうんだけどね。

親の意見と自分の意見を振り分けて、いかに自分を信じるかが大事。それはこれからの人生においても全部そうです。

質問③自動運転でタクシー、そして日本交通のサービスはどうなる?

土生(司会) 続いての質問です。「自動運転の技術がタクシー業界でオーソドックスになるまでの行程として、会長がお考えになる道のりを教えていただきたいです。また、どの行程の、どういった面で自動運転の技術を日本交通のサービスとして扱いたいと思うか。」といただきました。ありがとうございます。

川鍋 まず入ってくるのは幹線道路におけるバスみたいなものですよ。細かい道路には入らず、でかい道路だけ行く。するとタクシーじゃないんです。まずはバスからですね。それがかなり見るようになるのが10年後。そして、相当見るようになるのは20年後というスピード感です。

今の日本交通の新卒乗務員さんが運転する港区の坂や世田谷区の細い道を自動運転で行くのは30年はかかる。あるいは、世田谷や港区などは一部自動運転車が入れないエリアができるか。それほどまでに、自動運転というのは難しいですね。

海外では人も乗らないリムジンタクシーができましたというニュースはちらほら聞こえますし、これからも聞きますけども、どこからかっていうと、国土の広いアメリカや中国からですよね。そういった国の道路事情と日本の道路事情はまったく違います。

日本における第一は、幹線道路のバスみたいなものからスタートして、それらのうち無人化されるのは10年で1割も満たないんじゃないかな。20年後に6割行ければいいくらい。そのころでもサポートのスタッフは乗っているシチュエーションがかなり多いと思いますね。30年後でも完全なる無人運転にはなってない。

とはいえ、運転自体は相当車がやってくれるようになります。なので乗務員は、車が停止したときに安全確認して合図を送るくらい。メインの仕事はお客様との会話など、ホスピタリティを求められるようになる。

だから、皆さんはまず覚えるべきは運転技術なんだけど、これからは運転技術とともにホスピタリティが重要になってくる。タクシー乗務員に求められる要素が相当変わってくるうえ、過渡期は両方必要になります。だから新卒乗務員さんの力が必要なんです。

学生さんへの言葉 ~死ぬときに後悔しない人生を~

土生(司会) 最後に学生へのメッセージをお願いいたします。

川鍋 自分の人生の最期、死ぬときに後悔のない人生を送るにはどうするか。これが、これから社会に出る皆さんの人生のテーマになってくるんですね。死ぬ瞬間に後悔したくないじゃないですか? その時には親はとっくに死んでるし、周りの友達もいないんですよ。

最期の瞬間に後悔することというのは分析されてて、たとえばやりたいことをやらなかったとか、家族との時間をないがしろにして仕事ばかりやってたとか。基本今の目の前のやらなきゃいけないことのために自分がやりたいことを犠牲にしてきたことをすごく後悔するんです。

そうならないためには、やっぱり今から自分の頭で考えて、自分の意志で決定して行動するという訓練をしていかないといけない。それをやっていけばやっていくほど後悔のない人生に近づく。

親や同級生はこう言っているからという要素と戦いを続ける必要があるんですね。自分の幸せのために自分の人生のコントロールを握ること。そのスタートになるのが就活だと思います。自分を応援するのは自分しかいません。自分の力を信じることです。

今はできないことやわからないことが多くてもいい。最初は誰もわからないんです。僕も大学を卒業した当初はわからなかった。でも自分でやるんだという気持ちをもって自分で決断してやっていく。その過程で間違えることもあるし、あの時ああしてればよかったなと思うこともあります。でも、そう思えるのは自分で決めたからです。

今からは自分との闘いになります。親でも同級生でもない、自分との長い闘いの第一歩が始まる。そのために自分に何ができるのが一生懸命考える。最後はえいやと決めるしかない。でもどこに決めたとしても自分が決めたことであれば、それなりに満足できるはず。

その決めた先が日本交通であることを待ってます!

Text:To Be

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