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【読書記録】私だけ年を取っているみたいだ。

おすすめ度 ★★★☆☆

ヤングケアラーがテーマのマンガ。
自伝ではなく、当事者に取材したものを作品にしており、章ごとにヤングケアラーについてのコラムや、支援先の情報も載っている。
当事者や、当事者を理解したい人にとって参考になる情報がたくさんあり、これをきっかけに理解が深まってほしいという作者の想いが伝わる。


小学生から買い物をして家族のご飯を作って生活を支えるなんて、ゆるゆるぬくぬくで育っている我が子を見てると想像もできない。
親からのネグレクトや肉体的・精神的暴力から逃れるために乖離する様子や、感情を殺すのに慣れすぎて感情を取り戻せないこと、大人になってもトラウマに苦しめられる様子がリアルで痛々しい。
ヤングケアラーの問題は大人になっても続くのだと考えさせられる。

主人公は、周りの人や幸運に巡り合って少しずつ回復していく。本人の努力や意志の強さもある。だけど、それらは必ずあるものではない。
むしろレアケースなんじゃないかと思う。
多くの人が大人になっても生きづらさを抱えたまま、一人だけ年を取ったみたいな状態で生活していくんだろう。

想像するだけでしんどい。


マンガだったので、子どもたちも読んでいた。
最近ニュースでもやってるし、学校でも「ヤングケアラー支援」のチラシなどをもらってくるから名前は知っている。
でも、リアルに日常を知る機会はないので、かなり衝撃だったらしい。

小3娘は、「この子、すごく頑張り屋さんだよね。すごいなぁ。感動しちゃった」と涙を流していた。
頑張り屋さんの感動ストーリーではないんだけどな…と思いつつ、今の彼女に理解できる範囲を否定しないことにした。
「このお父さんは何考えてたんだろうね?」「弟はこの後どうしたんだろうね」など、少し考えさせるような問いをした。
もう少し成長したら改めて読んでみても良いかもしれない。

中1息子は、「キッツ」「ダッル」と、もはや日本語と思えないような語彙力のない感想を述べていた。彼にとっては今それがかっこいいことなんだろう。
キッツ、ダッル、エッグ、ゴッツである。まじきっつい。

でも何度も読み返していたし、「クラスにも、もしかしたらいるのかな」という会話をして想像していたようだから、少しは彼の世界も広がってたら良いなと思う。

いずれにせよ、子ども時代から「自分の見えている世界が全てじゃない」ことを知ることは大事だと思う。
実際に体験したり、目にすることがなくても、本を通じて擬似体験したり、多様な社会を知ることができるから。

本じゃなくてマンガでも、ドラマでも、アニメでもなんでもいい。
自分以外の人に対する想像力を培ってほしい。
偉そうにかいてるけど、私自身も培っていかなきゃ。

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