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【読書記録】わたしに会いたい

おすすめ度 ★★☆☆☆

「くもをさがす」が素晴らしすぎたので、こちらも買って読んだ。
短編なので、好きな作品もあったけど、うーーーん。やっぱり西加奈子さんはノンフィクションやエッセイのほうが好きかもしれない。

8つの短編小説で、ものによって「好き」「苦手」「ものすごく苦手」があった。

先に断っておくと、私は西さんの「くもをさがす」が大好きで、そっちの感想文↑は前のめりにべた褒めしている。ずっと手元においておきたい本だ。
だからもう、すべては好みの問題だ。私が「極端にこじらせた女」が苦手なだけなのだ。これは先日書いた辻村深月さんの「鍵のない夢を見る」にも言える。
そういう人は読むんじゃないと言われたらそれまでだが、読んじまったものは仕方がない。開き直り。


まず「好き」だったのは「Crazy In Love」と「ママと戦う」。
「Crazy In Love」は「くもをさがす」のあるシーンがほぼそのまま描かれていて、要はほぼノンフィクション。
あ、あのシーンだ、と既視感を覚えて、少し小説ならではの補完があったのでほっこり読めた。
「ママと戦う」は、自虐キャラで女性性をネタにしたコラムを書いてきたライターの女性の話で、その娘視点で描かれている。この自虐キャラが西さん流のえげつない品の無さで、よくもそんなネタ思いつくなと思う。落ちていくときはどこまでも、のスピードと方向性に乗り切れないのは、私が少し潔癖なのかもしれない。
そんな感じで途中までうわぁ…ってなるような話だったけど、ラストで母と娘が戦う意味がわかるところは、とても爽快感があった。ドロドロしていたぶん、強くなりたいという気持ちが真っ直ぐかっこよく見える。


あとはまあ「苦手」なのだけど、一つ一つ批判するのはしょうもないのでやめておく。全体を読んで、なんでこんなに苦手なんだろう?と考えた時に、やっぱり設定が極端でえげつないところだな、という結論に落ち着いた。

西さん作品に限らず、女性性をテーマにした作品を読むことが最近多い。
女性が自分らしく、人間らしく生きることの難しさ、社会からの価値の押しつけなど。
今回のように、グラビアアイドルやデリヘル嬢が主人公で、直球「女性性!」なテーマもあれば、超一般人が日常の中でジリジリとすり減っていくような作品もある。共感できる、という意味では後者のほうが共感できるし、読みやすい。前者のような極端にテーマが誇張された作品は、「もうわかった!わかったから!」となってしまう。今作は前者が多かったので、ちょっとしんどかった。

えげつない、でいうと、単に描写の問題である。
例えば「わたしに会いたい」は最後に希望があって、とてもいい話なのだけど、障害を持つ主人公がいじめにあうシーンがものすごくえげつなくて嫌だった。
さすがに先生気付けよ!!誰か助けろよ!と怒りが湧いてしまう。フィクションだとわかっていても、読後も「あのシーンは嫌だったな…」と思い出してムカムカしてしまう。
そういう人は読むんじゃないと言われたらそれまでだが、読んじまったものは仕方がない。(2回目)


総じて、帯に書いてある「8つのラブレター」というのはちょっと「帯煽り」が過ぎていて、もしこれがラブレターなら、6つはヘビー過ぎて受けとりたくない。
西さんのインタビューやコラムもよく読むので、伝えたいことは理解しているし共感もするのだけど、作品になると生々しすぎてちょっと遠慮したくなる、そういう作品だった。


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