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【読んだ】炎上する君

おすすめ度 ★★★★☆

西加奈子の短編集。8作品。
好みが分かれる作品たちだったけど、私が好きだったのは
「炎上する君」
「私のお尻」
「ある風船の落下」
そして、又吉直樹の解説。秀逸だった。

どうやら私はテーマやストーリーがはっきりしているものが好きらしく、よくわからない終わり方をするものが苦手らしい。
わかりやすいものが好き、というと単純な気がするが、その通り単純なのだと思う。

上げた3作品以外は、よくわからない終わり方をしていて、「え?終わり?」になってしまった。最後の又吉解説を読んで、やっと腑に落ちた。

炎上する君

「炎上する君」はキレが良くて素直に面白い。2人の女は親友同士で、こじらせていて、世の中というか男に不信感やら憎しみを抱いている。

とかく男性というのは阿呆で低能で見るのは女の体ばかりで女を自分たちより低級なものであると信じて疑わず頭の中は中身のない女との痴態ばかり、私や浜中のように、自分たちより知識も技術も能力もあるものを敵視するものである。

息継ぎなしのこの感じが、いい。好き。
物語は後半「炎上する君」によって大きく変わるのだけど、文章の気配まで変わるところに西加奈子の技が光っていて見事というほかない。

私のお尻

とにかくお尻の描写が綺麗。
お尻のパーツモデルをしている主人公が、自分のおしりに嫉妬しちゃう話。

もうどういうこと、という設定なのに、なんかわかる気がする。
これは、終わり方はよくわからなかったけど、お尻の美しさが勝っていたので好き。

ある風船の落下

これ一番好きかも。
ストレスによってガスが発生し、風船のように浮遊してしまう病気、風船病。
症状が進むと、SHOOTといって空にふっとばされてしまい行方がわからなくなる。
最初は憐れまれていた風船病患者だが、徐々に自殺願望の表れではないか、甘ったれているのではないかと世間の目が厳しくなる。

「さっさと飛んじまえ」「地上に無用なやつは飛べ」など中傷される様はとてもリアルで、言葉は違えど実際に起きていることだよなと感じる。

主人公にもSHOOTが訪れるが、死ぬことはなく、SHOOTした人たちが浮遊している世界に行く。
地上の辛さから解放され、それぞれ干渉しあわずに風船として生きていくことに、始めは幸せを感じていた主人公だが……という話。

主人公の地上での辛さがリアルだし、心情の変化もキュッとなる。終わり方も素敵。
この一作だけで、読んでよかったなと思える。


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