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【読書記録】アミ 小さな宇宙人

おすすめ度 ★★★★☆

子どもに勧める本を考えてた時に思い出した本。
小学生の時に読んですごく感動したんだけど、調べたら今は絶版でめちゃくちゃ高値で売られていた。
図書館で借りたけど、息子は手に取らず、娘には少し難しかったようで挫折してた。
しかたないので私が読み直した。

宇宙からやってきた少年アミと主人公ペドゥリート。
アミはペドゥリートにいろんな話をする。
宇宙最高の法は愛で、愛が少ないとその種族は自滅の道を進む。
アミはスカウターのようなもので愛の数値を測ることができて、愛をたくさん持っている人を探したり、時々ペドゥリートのように人と接触して布教(?)する。


後半は宗教だった

子どものころは前半のアミとの出会いや、UFOに乗る話がとても素敵でワクワクした。でてくる謎のクルミのようなたべものがとてもおいしそう。
いっぽうで後半のストーリーは全然覚えていなかった。

大人になった今読んでみると、後半は「愛という宗教」「神とは」など、かなり宗教色が強く、観念的だ。
宗教アレルギーな私はゾワゾワしてしまう部分も多い。子供の頃はよくわからなかったから記憶に残らなかったんだろう。

全体の主張はとても美しく、理想の未来の話なので子どもに読ませても良い話だと思う。SDGsを感じるし。

「(僕たちの星は)ああ、もちろん美しいよ。そして、みんなそのことを知っていて、とても大切にしているんだ」
僕たち地球人のことをあまりよくないと、彼が言っていたことを思い出し、そのよくない理由の一つがわかったような気がした。

「たとえば千もの円盤が地球に降りて、各国の大統領に戦争をやめるようにいうとかね」
アミは笑って
「もし、君の言ったようにしたら、まず第一に、何千もの人が心臓麻痺を起こすのは目に見えているよ。(中略)第二に、例えば武器を労働機械に変えるようにとでも言ったら、まず地球を無防備にさせてから、その後支配しようとする宇宙人の策略だとでも考えるだろう。第三に、もしわれわれが無害であることが理解できたとしても、君たちのどの政府もけっして武器を手放したりはしないだろう。」
「どうして?」
「どうしてって、他の国に恐怖を抱いているからね(略)」

「地球人が悪を克服しないうちに、我々が生き延びることを手助けしたとしたら、地球人はすぐに他の星を支配したり、搾取したり、征服したりするだろう。でも進歩した宇宙というのは、平和で、愛と信仰に満ちたところなんだ」

「すべてのものは、みな関連しあって成り立っているんだ。偶然なんて一つもないんだよ。でも、その連結している法則がどんなものか理解できないでいるか。あるいはわざとそれを見ないようにしているだけのことなんだよ」

輪廻転生みたいな仏教っぽさもあり、ノアの方舟的な考えもあり、でも唯一神とかキリスト教っぽい文化もあり、考えながら読むのが面白い。

疑問を持つことも大事

アミでは、アミが完全に正しくて、上位の世界の存在として描かれているけど、それも含めて正しいのか?考えさせるのが本当はいいんだと思う。

ウルトラセブンでも地球のために宇宙人を殺していいのかってテーマがあったり、かなり深いのね(息子がウルトラマンオタクだったので詳しい)。
子供向けでも、そういうことを考えさせるのって大事だなと思う。

愛を測れるのか

アミ(愛の世界の人々)は、スカウターみたいなので愛の度合いを測って、最終的に地球が自滅の道を進んだ時に、愛をたくさん持っている人だけを救出するらしい。誰かのために尽くしていたり、働いているような人たちを。
そして愛の度数が高い人たちだけの楽園的なところで、不自由なく暮らすらしい。

え、こわ。子供の頃は「私は大丈夫」という無垢な気持ちがあったから怖くなかったのかな。選民思想じゃんね。

虐待で後天的に性格を歪められた人はどうなっちゃうんだろう。愛があっても働けない人は。愛がある親の子供が愛の数値が低ければ、親子は引き裂かれるのか。

その楽園的な場所にいる人はなぜかものすごく美男美女で、アミ曰く心が美しい人は外見も美しいという、、美しいの基準はなんなのか。美しくない人は助けなくていいのか。

今ならいろんなことを考えられる。


概して、地球人が地球を支配してお互いに傷つけあうことは愚かだという主張はその通りだと思う。この本が出てから数十年経って、私たちはやっと慌ててSDGsとかやっているけど、それが遅すぎるのかまだ間に合うのかすら怪しいと思っている。

だけど、解決策として「愛がある人だけが救われる」ってのは賛同できない。ぶつかりながらも認め合ったり受け入れたりできるようになりたいし(どうやってもダメな人はいるだろうけど)、そういう泥臭いことを乗り越えて、ひとは成長するんじゃないだろうか。

もしいつか、子どもがこれを読んでくれる時が来たら、もしこの本に感動して盲目的に信じたら、改めて議論してみたい。

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