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[ 似てるのかも ]シロクマ文芸部(始まりは)

↑コチラの企画に参加しました〜
書いているうちに違う方向へ進んでしまったショートショートです
お楽しみあれ〜😊


画像:てんちゃ/illustAC


[ 似てるのかも ]


「始まりは『い』だよ」

 日本語教師が教える。

「イ、デスカ?」

 タイ人の留学生はそう答えた。

 教師は「そう」と言った後で、

「次は『ろ』、その次は『は』ね」

「ロ、ハ、デスカ?」

「そう、それが伝統的な日本語を覚える時に使われる『いろは歌』の歌い出しね」

「オー、イロハウタ、ステキナヒビキ」

 と留学生はタイ語でメモをとってから、

「デモ、ワタシハ、ニホンゴ、アイウエオデ、オソワリマシタ」

 教師は軽く微笑み、

「そうね、日本でも、今は『あいうえお』で教えることが多いわ」

「ソウナノデスカ、イロハモ、ステキナノニ」

「うん、ステキだよ、なんたって同じ文字が使われていないのに、それでいてちゃんと意味ある文章としてなりたっているのだから」

「オー、スゴイデスネ、オオタニサン、ミタイ」

「そうね、二刀流の元祖なのかしら?」

 教師が楽しそうに言うと、

「ニホンジンハ、ニトウリュウ、スキデスカ?」

「好きかどうかは知らないけれど」

 と言った後で、教師は思い出したように、

「あ、そういうタイにも、ムーガタっていう鍋料理があるよね」

「アリマス、オイシイデスネ」

「あれも、焼肉としゃぶしゃぶの二刀流鍋、って感じだね」

「アー、スコシ、ワカリマセンガ、ニトウリュウナノハ、ナントナクワカリマス」

「タイの人も二刀流が好きなのかな?」

「ソウカモ、デス」

 教師は、フフフと笑ってから、

「じゃぁ、授業に戻るけど、いろは歌の意味を説明するわね、諸説あるのだけれど、仏教の教えが元になっているようよ」

「ブッキョウデスカ」

「そういえば、タイは、仏教の国よね」

「ソウデスネ、ホトンドガ、ブッキョウトデス、デモ、ニホンノブッキョウトハ、カナリ、チガイマス」

「そうらしいわね」

「ソレニ、タイニハ、ピー、モイマス」

「ピー?」

「ニホンゴダト、ヤオヨロズノカミ、ダトキキマシタ」

「へぇ、八百万かー」

 と、教師は楽しそうに笑みを浮かべ、

「二刀流といい、なんかタイと日本って似てるのかもしれないわね」

「ソウカモシレマセン」

「今度、詳しく教えてね」

「ソウデスネ、イマハ、イロハウタノコトヲ、オシエテネ」

「そうね、じゃ、始まりは『いろは』、その後を教えるわね」

「オネゲェシマス」

「あ、わざと間違えたでしょ〜」

 と、教師が笑うと、

「スミマセン」

 と、言って、留学生が手を合わせたので、教師も手を合わせた。

「チナミニ、タイデハ、テヲアワセルコトヲ『ワイ』トイイマス」

「じゃぁ、今は、ワイが二つだから、ワイワイ、日本語だと喜びになるね」

「ワイワイハ、ヨロコビ、デスカ」

「そう、ワーイワーイ、って」

「ワーイワーイ」

「ワーイワーイ」

 一向に授業は進まないが、とても楽しそうな二人であった。


おしまい

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