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[ 戦国時代の自動操縦 ]:毎週ショートショートnote

↑↑コチラの表のお題【戦国時代の自動操縦】に参加してみました。
いつものごとく、文字数オーバーでお送りします😅


画像: あめんぼう/illustAC


[ 戦国時代の自動操縦 ]

 戦国の世。
 主君を変えることも珍しくない。
 私は、新しい殿に仕えた。
 迎えてくれた殿に恩義を果たそうと戦の策を立案すると、殿は大いに気に入り、すぐに採用された。
 しかし、

「よし、三日後に実行だ!」

 それでは準備期間が少なすぎる。
 少なくとも十日は必要だと伝えたが、

「三日だ。善は急げというじゃろ」

 殿は、軽やかに言った。
 さて、困った、どうするか。

 と、案ずるのも束の間、一刻ののち、ある者がやってきた。

「殿、戦と聞いて、武具をお持ちしました」
「おぉ、いつも迅速な対応、ありがたい」

 真新しい武具が揃う。

「殿、馬を持ってきましたべぇ」
「お主の馬はいつも立派じゃのぉ」

 沢山の馬が馬場に並んだ。

「殿、先陣を是非、拙者に」
「いいやオイラに」
「焦るでない。どちらにも、能力を存分に活かせる場所を用意しておる」

 いかつい武将で、屋敷は一気に暑苦しくなった。

「殿、オラの米を食べてケロ」
「魚で精をつけてくだされ」
「いぁ〜、こんなに沢山、実にありがたい。家族の分もちゃんと残すのじゃぞ」

 長期戦でも無くならない、大量の食料が集まった。
 
 なんと言うことだ!
 次々と人がやってきて、十日どころか、一日で軍備が整ってしまった。

「ここの民はのう、わしが号令をかけると、皆、こぞっていろんなものを持ってきてくれるんじゃ、スゴイだろ」

 そう得意げな笑顔で言う殿は、自動的に人を操れるほどの、人心掌握術を持っているのか。
 私は、身震いするほど、とんでもない人に仕えたのかもしれない。

 その夜、最初の軍議が行われた。

「皆の衆、よく集まってくれた!」
 “オーォォォォォォォ”

 殿の言葉で、武将が太い声を上げた。

「今回の戦は、新しい軍師に任せる。軍師さまの策は天下無双だ!お前たち!勝利は間違いなしじゃぞぉ!!」
 “オーォォォォォォォ”

 武将たちの声が鳴り止まぬうちに、殿は私の肩に手を乗せ、

「頼んだぞ、軍師殿!」
 “オーォォォォォォォ”

 私は太い声に襲われた。

 仕えてまもない私に、これ程の重責を。
 殿の期待に応えねば。

 そしてフト気づく。

 あ、私も、すっかり殿に操られている。
 しかしそれは、実に心地いい。


おしまい。

#毎週ショートショートnote

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