【2年前の日記やさん】11月2日

2022年1月に頒布した『東京には大阪より16分はやく夜が来る日記』から、2年前の今日の日記を掲載します。


2021年11月2日(火)晴れ  大阪・笹

 今仕事を教えてもらってる先輩は、同大学同学部出身。待ちの時間が生まれたので、喧噪に包まれた職場の片隅で、こそっと聞く。
「大学のとき、積極的に働きたい人なんか(?)周りにひとりもいませんでしたよね……?」
 先輩、深く頷く。ほらぁ! やっぱり! うちの文学部に働きたそうな人なんかいなかったよ! 就活期、インターンに赴くたびに「社会に出たいし、社会で活躍したいし、できると思っている人」の存在を認識して驚愕した。そして大学に帰ってきては、薄暗い学部棟にあるソファや、共有ラウンジ(人はいるが、会話はほとんどない)で虚空を見つめている人を見てホッとしていたものである。
 大学時代! 野生猫保護サークルで猫を追いかけ回したり、ベネディクト・アンダーソンをひいひい言いながら読んだり、同人誌を作ったり、一九四〇年代の日記をみんなでひいひい言いながら読んだり、オンライン飲み会で教授秘蔵のウイスキーを自慢されたり、卒論をひいひい言いながら書いたり、「俺、性根が岩をめくったらいる虫だなあ」「みんな、そうだよ。ここに来ちゃった奴らは全員」と慰め合ったりしていた。社会不適合者大学社会不適合者学部にいただけなのか? たぶん、そう。
「みんな行っているから、インターンに行っています」と言ったら、「みんな、ね。まあそんなもんだよね」と鼻で笑われた思い出が燦然と輝いている。先生、元気ですか。

2021年11月2日(火)晴れ  東京・音

 当然、テンションは上がらないが、粛々と仕事。
 気を紛らわせるために漫画でも読むか、と思い、紀伊國屋書店の本店に行く。
 午後『眠れぬ夜はケーキを焼いて』の二巻と、はるこ『酒と恋には酔って然るべき』の七巻を読む。メンタルケア系の内容が主軸のエッセイにお菓子のレシピがついている漫画と、諸国の日本酒を紹介をしつつ進むライトなラブコメ漫画。こういう漫画は必要ですよね。心は凪。

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