【2年前の日記やさん】10月27日

2022年1月に頒布した『東京には大阪より16分はやく夜が来る日記』から、2年前の今日の日記を掲載します。


2021年10月27日(水)くもり  大阪・笹

 朝、上司に「今日はカラフル」と言われる。ピンクのパーカーを着て行ったからだろう。今の上司は技術職たたき上げの人なのだが、「女性が当直に入るときは、この人のチームにいれる」と言われるほど穏やかで、ハラスメント気質のない人なのだ。たしかに、「今日はカラフル」のバランス感覚、すごい。
 
 昼休み、村田沙耶香『地球星人』を読む。はい、よくわかりました、という気分で閉じる。所々、実に傷ついた。
 物語は、一貫して奈月の視点で進む。彼女は、この世界のシステムをぞっとするほど客観視していて(できてしまっていて)、自分は「地球星人」ではない、と感じている。ポハピピンポボヒア星という故郷を夢想し、夢想して、この世界を生き延びる。生殖か、労働か。「地球星人」として受け入れられるには、その「工場」に乗るしかない。彼女と、かつて彼女と「結婚(セックス)」したいとこ、彼女の契約上の夫が、山奥で「ポハピピンポボヒア星人」として暮らし、迎えた結末─。うむ、会社で読むものではなかったな。
 村田沙耶香を詳しく知っているわけではないが、『コンビニ人間』と同様、この世界に存在するシステムを「誰か」の目を通して描くのが上手。奈月の視点は、一貫して空想の中にある。何が起きたかは明確には語られず、しかし私たちはそれに気がつく(奈月は実際には自分のやっていることに気がついているから、私たちにもかろうじて事態がわかる、と言い換えることも可能)。村田沙耶香、ラストの段を書きたくてこの本を書いたのだろうか。
 ただ、システムに気がついた人間をどこまでもグロテスクに描くのは、リアリスティックといえば聞こえはいいが、少し露悪的がすぎるんじゃないか。システムという化け物へ対抗する術、このラスト(だけ)なのか……。うーむ。  

2021年10月27日(水)くもり  東京・音

 クリームシチューを大量に作る。
V6最後のベストアルバムが届いた。付属DVDの特典映像を観て、しんみりとする。こんな(解散前)タイミングなので、このところ「これまでを振り返って」的なテーマでトークさせられている彼らを見ることが非常に多いのだが、かなり古いエピソードが出てきてもそれなりに、昨日のことのように思い出せるので自分に驚く。

十年前のミュージックステーション出演で坂本くんが「Sexy, Honey,Bunny!」の歌詞を激しく間違えた(混迷を極め、日本語の文法が崩壊していた)の、めちゃくちゃ懐かしい。
テレビの前にいる自分まで死ぬほど焦ったあの感覚、まだ全然思い出せる。ファンとかいうすごい生き物。
たぶんファン歴16年。V6解散まであと5日。

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