【2年前の日記やさん】11月4日

2022年1月に頒布した『東京には大阪より１６分はやく夜が来る日記』から、2年前の今日の日記を掲載します。

2021年11月4日（木）晴れ　　大阪・笹

　昼、先輩に連れられてランチへ。天丼を食らう。その帰り道、先輩のうちのふたりが熱に浮かされたようにスパイスカレーの話を始めた。ふたりしてハマって数年になるらしい。「ナンとか？」と軽い気持ちで言うと「違うねんなあ～！」と揃って盛大な否定。みなさん、スパイスカレーとナンは、関係ないそうですよ。スパイスカレーは主に南インド、ナンは北インドだそうです。そして、南インドの主食は米。
　最後、「大阪の南は、スパイスカレーの聖地。自分が恵まれた立場にいることを自覚したほうがいい」と諭された。スパイスカレーの聖地は南インドだろうが。そんな様子なのに、「米は白米の方がおいしいんだよなあ」と言っていた。さっきまで血走った目でスパイスカレーについて説いていたくせに、急に意識を取り戻すなよ。なんにせよ、自分がまったく意識しない場所で「お前は恵まれている」と指を差されるのは、尻の据わりが悪い。難しい問題である。
　
帰り道で、羽生結弦の怪我を知る。電車内でどっと落ち込み、ぼうっと地下鉄に揺られた。こういうときの適切な心持ちについて、一生答えが出る気がしない。
　私たちのことなんて忘れていい。忘れて、好きなだけ悲しんで、「何でだよ」って怒ってほしい。ただ一歩踏み出そうとしたとき、何かがほしいなら、好きなように私たちの言葉を、存在を、使っていい。酷く自分勝手な意見だ。我々は期待であり、プレッシャーである。彼にとって良いものだけではいられない。ファンはいつだって自分勝手。結構つらい。
　それでもやっぱり、祈らずにはいられない。羽生さんの足、治って。羽生さんに好きなようにフィギュアスケートをやらせてあげて。
　あなたの夢を知っている。私たちが信じているのは、その夢の可能性以上に、その夢に向かうあなた自身で、それはこれからも変わらない。忘れてもいいから、忘れないで。

2021年11月4日（木）晴れ　　東京・音

　明日から京都旅行なのだが、荷造りスキルが著しく低下しているのを感じる。二泊分の荷物をまとめるのに、一時間以上かかった。
 
　いつもの眉刈りサロンで、いつもの施術担当の方（非常に淡々としていて素敵）に「眉毛ってほしいところには絶対生えてくれないんですよ。要らないところにだけ生えてくるものなんです」と言われる。プロが言うんだから、本当にそうなんだろうな。