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ずっと手元においておきたい本

本の整理をしているけれど、なかなかはかどらない。

処分する本が決められないのだ。
これは途中になっていた、あれはもう一回きちんと読んだ方がいいかも。なんてやっていたら、どれも処分するほうに仕分けできない。

本棚に入りきらなくなったから処分しようとしているのに、これではいつまで経っても本棚に余白ができない。

そんな中、これは絶対残しておく!と即決した本がある。
益田ミリ『心がほどける小さな旅』

益田ミリファン歴は10年は超えており、特に旅エッセイが好き。中でもこの『心がほどける小さな旅』が一番のお気に入り。

ひとり旅やってみたいけど、と躊躇していた私の背中を押してくれた本だ。
ミリさんは「特産品を食べなければならない」とか「地元の人と触れ合わなければならない」といった「旅に出たら~しなければならない」を自分に課さない。
それなら私にもできるかも、と行き始めたら楽しくなって、ひとり旅ばかりしていた時期もあるほどだ。
この本に載っている場所にももちろん行った。高知の牧野植物園や山形の山寺など。

そして青森の奥入瀬渓流。この本がなかったら、ひとりではまず行かないなという場所。でもひとりで行ってよかったなという場所だった。

奥入瀬渓流

生き生きとした鮮やかな緑、心地よい川の流れる音、澄んだ空気。その中を自分のペースで歩く。リラックスと同時に元気も湧いてくるような格別な時間だった。
行く前は結構遠いなとひるんだけど、思い切ってよかった。

面倒くさがりで心配性。そんな私が思い切れたのは、この文章に強く惹かれたことが大きい。

大きい石も、小さい石も
川に投げれば
必ずしぶきをあげる。
何もない人生などない

益田ミリ『心がほどける小さな旅』

同じ場所で同じ体験をしてみたい。ホテル周辺の河原に行き、石を川に投げ入れてみた。
やってみるとよくわかる。石を川に投げ入れるという行為と川の水がしぶきをあげるという現象から、人生を想うという発想の豊かさが。
同じことをやってみてミリさんの感性の鋭さを身をもって実感し、ますます感動した旅でもあった。

これらの記憶も相まって、何回読み返しても新鮮な気持ちで読める。まさに「心がほどける」一冊なのである。


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