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日建グループ オープン社内報|わたしのこだわりの住まい⑤

衣替えをする家

村松 宏
日建設計 エンジニアリング部門(設備設計グループ)

※これは、2012年6月に社内報(日建グループ報)に掲載した記事を元に再編集したものです。

■夢の実現

南側の大開口部にダブルスキンの考え方を取り入れた「衣替えをする家」です。冬の昼間は外側スキンを開放して太陽熱を取り込み、RC躯体(外断熱)に蓄熱します。さらに、ソーラーチムニーに溜った熱を太陽光発電駆動のファンで床下に導きます。冬の夜間はスライディングウォールとした断熱雨戸(外側スキン)を閉めて保温します。中間期は外側スキンをオーニングとサンシェードに衣替えします。夏には朝顔のグリーンカーテンとパーゴラの藤が育ち、さらに暑さが和らぎます。庭に埋設したクールチューブからの涼風によって、エアコンなしで過ごしています。

■冬モード

■夏モード

「グリーンカーテン」
「グリーンカーテンで育てた野菜たち」
「クールチューブ」

■自宅での実験が仕事に活きる

2007年に竣工した「夢の我が家」で数年過ごした後、その体験を設計の仕事に活かしました。それは建築躯体の熱容量を能動的に活用する「TABS(Thermo Active Building System)」という手法です。自宅での体験では、冬に好天が続けばRC躯体に昼間に蓄熱されて夜間でも暖かいのですが、曇天が続くとRC躯体が冷え切ってしまい、数日間暖かくなりません。これはRC躯体の熱容量が大きいからです。2011年に設計を開始し、2016年に竣工した「コープ共済プラザ」というプロジェクトでは、RCの床に冷温水配管を埋設して、RC躯体の温度をコントロールするようにしました。これがTABSです。このプロジェクトでは、天井をRC躯体現しとしているため、そのRC躯体を冷やしたり温めたりすることで快適な放射空調ができます。春秋の夜間に自然換気を行うことでRC躯体に外の冷気を蓄冷したり、冬は太陽熱を蓄熱、夏は夜間に効率の高い冷凍機で蓄冷したりと、RC躯体の熱容量を存分に活用する環境建築となっています。その後の余談ですが、このプロジェクトの様々な実測を通じてTABSの特性を研究し、博士論文に纏めて学位を取得しました。そして今度は、その成果をフィードバックして自宅をTABS化する予定です。

「コープ共済プラザ」

村松 宏
日建設計 エンジニアリング部門(設備設計グループ)
1990年の入社以来、北は北海道、南は沖縄まで全国の 環境設備設計に携わる。常に新しいアイディアにチャレンジすることを設計の旨としている。趣味のトライアスロンで精神力を養い、座右の銘は
「Anything is possible」。

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