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(2)ダボス会議の参加者も世界を勘違いしている

 人はなぜ世界を悲観的にとらえ続けてしまうのか? メディアのせいだろうか? もちろんその可能性も考えた。だが、問題の元凶ではなさそうだった。後に詳しく説明するが、メディアにも責任はある。だが、メディアを悪役に仕立ててヤジを飛ばすだけでは何も変わらない。

 転機が訪れたのは2015年の1月。おしゃれでこじんまりとしたスイスの街、ダボスにて、世界経済フォーラムに参加したときのことだ。

 わたしは、ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツとともに、持続可能な社会・経済発展についての基調講演を行った。聴衆は、世界で最も権力や影響力がある政治家や経営者、起業家、研究者、活動家、ジャーナリスト、国連の上層部を含む約1000人。ステージの上からは、国の首脳や国連の元事務総長、国連専門機関の代表、多国籍企業の幹部、テレビで見たことのあるジャーナリストの姿も見えた。

 用意した質問は、貧困・人口増・ワクチン接種率についての3問。正直、かなり不安だった。全員が、すでに質問の答えを知っていたらどうしよう。「ごらんなさい、みなさんはこれほど間違っています。正解はこちらです」と書いた、残りのスライドが使えなくなってしまう。

 だが、それは余計な心配だった。

 1問目の貧困についての問題の正解率は、一般人よりはるかに高い61%だった。さすが、世界について語り合うためにやってきた選りすぐりたちだ。しかし、人口増やワクチン接種率についての問題になると、またもや正解率はチンパンジー以下だった。いつでも最新のデータにアクセスでき、アドバイザーから逐次情報を得ている人たちでさえ、世界についての基本的な問題に答えられない。ということは、知識のアップデート不足が原因ではない。

 ダボスでそう確信したわたしは、ひとつの結論にたどり着いた。

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