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Vol.27 NPS向上のための必勝ルートとは?(LiNGAMモデルによる因果探索)

                             2021年2月


CS調査やNPS(※1)調査を行うなかで、「CS・NPS向上のために何をすべきか」の探索は調査を行う大きな目的でもあり、調査をご担当されている皆様が苦心されるところでもあるかと思います。

限られたリソースの中で効果的な取り組みを行うためには、何から改善していくべきか優先順位をつけて取り組む必要がありますが、この優先順位をつける方法として「相関分析」を用いることが多いです。
総合満足度やNPSとの相関が高い項目を優先的に改善すべき項目とするのは有効な手段ですが、「"相関関係"は"因果関係"ではない」という注意点があります。

例えば、「交番の数」と「犯罪発生数」の間に相関関係がありますが、「交番の数が増えると犯罪が発生しやすくなる」という因果関係ではなく、「犯罪が多い地域に交番が多く配置される」という逆向きの因果関係となります。
相関分析だけではこの因果関係の向きはわかりません。

また、相関係数は1対1の関係性を表す分析のため、「項目Aは満足度を上げる直接的な要因ではないが、満足度の要因Bを上げる要因である」というような間接的な関係性を捉えづらいという点があります。

どちらが要因でどちらが結果なのか、または関係がないのか、つまり、"因果関係"を探るための分析手法はいくつか存在しますが、今回はそれらの手法のひとつである「LiNGAM(注)」というモデルを用いて、弊社の金融機関顧客評価調査「金融METER(R) (※2)」のデータを分析をした結果をご紹介します。(注:線形非ガウス非巡回モデル)

今回は、都市銀行利用者6568人(注)を対象に、「営業/窓口担当者がコロナ禍で対応してくれていると思うこと」とNPSの因果探索を行いました。
(注:「都市銀行利用」&「資産総額回答あり」&「専任担当者あり」で絞った延べ人数)

分析の結果、以下のルートを辿り、NPS向上に繋がる構造となっていることが推測できました。


金融以外の情報・話題の豊富さ

状況への理解(ライフステージなど)

わかりやすい説明

気軽に相談しやすいこと

あなたに合った商品の提案

NPS向上

上記の構造でNPSに直接結びついているのは「商品提案」であることがわかりますが、商品提案をするにしても、"相談しやすい"ような一方的ではない関係性でなければ商品提案も単なる営業に感じてしまうのではないでしょうか。そして、良い相談相手になるためには、お客様のお悩みを整理したりアドバイスしたり、"わかりやすく"伝えることが必要になります。
また、ニーズに合ったアドバイスや提案をするためには、お客さまの"状況を理解する"ことが必要不可欠ですが、身の上の話を簡単に誰にでもお話ししてくれることはありませんので、"金融以外の世間話"で関係性を築く必要があります。
このように、直接的な関係だけでなく間接的な関係も含めて"構造"として整理することで、より実態や体感にフィットする解釈ができることがあります。調査結果の解釈にお悩みの場合はぜひ一度ご相談ください。

※1:Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
※2:金融METER(R) は、日経リサーチの登録商標です。

■今週の執筆者■
古河 萌(アカウント第1部)

【お気軽にご意見、ご要望などいただければ幸いです】
日経リサーチ 金融ソリューションチーム finsol@nikkei-r.co.jp
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また、執筆者個人の主観、意見が含まれております、ご了承ください。

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