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家族のために働いてるんじゃない

あれはいつのことだろう。父は高校教師だけど、時折り大学で教職を目指す学生さん達に授業をしていた。「英輔も来たら?」と言われるがままについて行って滅多に乗ることのない山手線某駅で降りる。
父は世界史が専門?で、ボクは教室の1番後ろの席で父の授業を受けた。「小道具の川口」と呼ばれる(らしい)父は、授業の最初から、GODIVAのチョコを学生に見せて、パッケージに描かれたこの人は誰なのか?問いかけては解説していく。
廊下に出たと思えば教室に戻ってきたらイスラーム風のターバンを頭に巻いて現れる。
その間の学生さん達のワクワクを、ボクも同じように感じていた。
教科書に書いてあることをただ覚えるのではない面白さがそこにはあった。
同じ日だったかどうか最早記憶が定かではないけれど、大学近くの中華料理屋で、大人達と共に夕飯を食べた時、父が「家族のために仕事してるわけじゃない」と言った。
その一瞬、ボクの世界は止まった。だって、お父さんは家族のために働いてるって思ってたし。
なのにお父さんは家族のために仕事してるわけじゃないの?…
多分、父は、教育の大切さとか、未来を担う人たちの育成の重要さとか、を話してたんだと今になると想像する。でも当時は何だかショックが大きくてその後の会話は覚えていない。
あの時そんな話してたよね?アレってどーゆーこと?って聞きたい。今さらだけど。
ボクも就職して、出向で被災者支援の仕事をしてた3年目。妻から「ホントにやりたい仕事なら選べばいいと思う。病気とかなって死ぬ間際になって、家族のためにやりたい仕事をしなかったとか言われても困るし…自分の人生なんだからやりたいよーにやった方がいいよ。出向した分を送り出してくれた組織に恩返ししてから。」と言われた時に、父が言ってた家族のために仕事してるんじゃないってコトを思い出した。
同じ感じなのだろうか。今度会ったら聞いてみたい。

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