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③カンヌの常連 若き天才グザヴィエ・ドラン

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大学生の頃だったかな、どうしても劇場でルネ・クレマン監督作「太陽がいっぱい」(1971年)が見たくて調べたら、京王線沿いの下高井戸シネマでやっていて、外国語の授業をサボって見に行った記憶がある。リメーク版の「リプリー」(99年)は既に見ていたんだと思う。そして原作(パトリシア・ハイスミスによる55年発表の長編小説。ハイスミスは女性同士の悲恋を描き映画化もされた「キャロル」の著者でもある)も読んでいたはず。劇場に行ったのは、アラン・ドロンをスクリーンいっぱいに見たかったからだ。


フランスの俳優アラン・ドロン(1935~)の美しさは、若者の美。清潔感があって、透き通るほど純な美しさ。誰が見ても認める正統派の美。そんなキラキラした美しさを振りまきながら、アラン・ドロン様は映画「太陽がいっぱい」において屈折した隠れゲイの青年トム・リプリー役を巧演。映画は大ヒット、世界的に彼の名が知れ渡ることになりました。

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映画「山猫」でアラン・ドロンは野心あふれる若き貴族を演じた

僕が仙台の新聞社で勤めていた頃、北四番丁のフォーラム仙台でアラン・ドロン特集だったか、ルキノ・ヴィスコンティ特集だったか、いずれにせよ小さな映画館でアラン・ドロン様の姿を見た。1963年のヴィスコンティ監督作「山猫」を見に行った。アラン・ドロン様もさることながら、舞台になったシチリア島の美しさにも息を飲むほど圧倒され、近々シチリア島へ足を運ぼうと決めた。運よくイタリアが新コロちゃんの震源地となる直前のタイミング、2020年1月に僕はパレルモとオルティージャ島を訪れることができた。ローマにも泊まるのだが「太陽がいっぱい」が撮影されたザ・ウェスティン・エクセルシオール・ローマで数泊した。

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2020年1月、豪華絢爛そのものの「エクセルシオール」で僕らが宿泊した客室は運よくスイートにアップグレード

映画は人生を豊かにする、これは本当の話。映画を見て人生が変わった、というのは大げさなようで実は多くの人に当てはまることじゃないですか。高校生の頃から僕は、ちょっとだけ座席がかび臭い、小さな劇場で映画を見ることが多かった。今やオンデマンド配信が当たり前のようになって、見たい映像がすぐ見れちゃう世の中。それはそれでよいことだけど、映画館やミニシアターに足を運ぶ若い子たちが少なくなっているのは残念だな。

アラン・ドロンがカンヌ映画祭で長年の功労を表彰された2019年、若き天才としてカンヌの常連衆に名を連ねていた彼の姿もまたその会場にあった。グザヴィエ・ドランである。

ゲイの巨匠ヴィスコンティを抜かし、レジェンドとして彼を取り上げるのは「順番ちゃうやろ!」って感じかもだけど、ゲイの世界は若いエネルギーなくして成り立たないので書いちゃいまーす!(笑)

センスの塊

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Xavier Dolan

1989年3月20日生まれ。カナダ・モントリオール出身。ケベック州のフランス語圏で生まれ、小さな頃から子役として芸能の世界で育ってきた。ウィキペディアによると身長は169㎝だという。か、かわええ。僕と同じ世代の人で、そんでこの人の作品はすべて見てきた。

僕がドラン作品を初めて見たのは渋谷のアップリンクで。たしか「胸騒ぎの恋人たち」だったような。あれ?でも日本公開は2014年?じゃあ「わたしはロランス」かな。いずれにせよ、んもう、サンダーストラックでした。

2010年にカナダで公開された「胸騒ぎの恋人」(原題:Les amours imaginaires)はドランの監督作第2弾。本人も出演している。ドラン演じるゲイの男性とストレートの女性(演:モニカ・ショクリ)が、ギリシャ彫刻のような美青年(演:ニールス・シュナイダー)をめぐってキャットファイトするっていうストーリー。どうってことないでしょ。でも、ドラン監督は独特のセンスがおありでござんして、彼の作品を特徴づけてるのは次のようなテクなんです。さーて、ちょっと長くなるわよ(笑)

グザヴィエ・ドランの「らしさ」とは

✓ スローモーション 動揺、高揚、焦燥、怒涛(ラップか)、さまざまな感情を効果的に表すためにスローモーションを多用。登場人物の自意識をアピールさせる手法でもある。

✓ 色彩感覚 意識の流れ、登場人物の心境のうつろいを、画面の色調の変化で表現。ピックアップする色のセンスがこれまた素晴らしくスタイリッシュ。

✓ 背中のショット 歩いている人の背中や後頭部をよく映します。この技法は「結局人間って本心は誰にも見せないでしょー」といって作品世界からキャラクターをいったん突き離す感じかな。

✓ 空想 登場人物のデイドリームをよくカットに盛り込むんですが、これがより心情を劇的に表すことに成功している。

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イケメンの頭上にマシュマロが降り注いでいる わかるっしょ!この陶酔!「甘ーい!」ですわ
(「胸騒ぎの恋人」より)
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100リットルの涙って感じ こちらも頭上から降り注ぐ 「とてつもなく悲しい、どうしよーもなく悲しい」って感情
(「わたしはロランス」より)

✓ センタリングとシンメトリー構成 キャラクターをフレームの中央に配置、かつ構図が左右対称になるようなカメラワークを好みます

✓ ロングショット 廊下やホールのシーンを遠景で撮って、ズームイン・アウトさせることが多い。大画面と対比的に登場人物は小さく映って、彼らの孤独感や存在のあやうさを表現してます。

※上記はトロント国際映画祭のVideo Essayを参考。

あと、音楽とかも効果的に使ってて、クラシックからポップスまで幅広く、シーンに合わせて使ってる。セリーヌ・ディオンのフランス語の楽曲とか、彼の作品を通して知ったようなもんだわ。

アデル「ハロー」のミュージックビデオ

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撮影現場でのアデル(右)とドラン

そう、音楽といえば2015年にアデルが発表したアルバム『25』収録の大ヒット曲"Hello"のミュージックビデオだよね。これ、ドラン監督が手掛けてます。曲めっちゃ売れたし、良いよね泣けるよね。今でも時々聞く。グラミー取ってるしね。

26億回再生とか、えげつねー!コロちゃん渦で流行ったこのパロディも面白い

ここでもドラン節はもちろん炸裂してますわ。大サビ入る前(5:00~頃)の斜め正面上部からアデルの顔を撮るアングルとか、超ドランって感じ。

あー早くアデル、新しいアルバム出さないかなぁー。頼むわ。

描かれるテーマたち

グザヴィエ・ドランの作品には「母親との関係」に葛藤しているキャラクター、ホモセクシュアルのキャラクターが頻出する。これは2009年の処女作「マイ・マザー」(原題:J'ai tué ma mère)から一貫してます。あと「マイ・マザー」は半自伝的作品とされています。

第3作目「わたしはロランス」(原題:Laurence Anyways)ではトランスジェンダーの男性と長く連れ添ってきたパートナー女性の複雑な関係が描かれる。これね、上演時間168分。

でーん!2時間48分よ、お父さん。じっとしてられますか?でも、もうね、好きな人、グザヴィエ・ファンの人ならたまらない168分なわけ。映像美どーん!音楽のセンス、ドバーン!そんでテクニックが!これでもかーって!どやー!見せたるわー!心臓ぎゅっとしてやるでー!ってな感じでね、もう観客の感情をグラグラさせるわけなんすね。それが気持ちいいのよ!最後もね、もー涙。エンディングで流れるのがブルー・ナイル(ポール・ブキャナン率いるスコットランドのバンド)の"Let's Go Out Tonight"(1989年発表のアルバム『ハッツ』に収録)をクレイグ・アームストロング先生がオーケストラアレンジしたバージョンなんだけど、どえらい最高なんすわ。もー見て!!!!

「Mommy/マミー」

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ドランを囲むアンヌ・ドルヴァル(左)とスザンヌ・クレマン

ドラン作品の常連は、ともにフランス系カナダ人の女優アンヌ・ドルヴァル(1960~)とスザンヌ・クレマン(1969~)だ。ドルヴァルは母親役を演じることがほとんど。ナタリー・バイ(1948~)もドラン監督作品で二度ほど「おかん」キャラとして使われている。贅沢やな。

「わたしはロランス」の翌年には第4作「トム・アット・ザ・ファーム」を発表、年一ペースで作品を生み出す天才ドラちゃんですが、2014年に満を持して公開した「Mommy/マミー」がカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞します。

ストーリーはこう。アンヌ・ドルヴァル演じるダイアンが、更生施設を強制退去させられたADHDの息子スティーヴ(演:アントワーヌ・オリヴィエ・パイロン)の世話に四苦八苦。そんなところでスザンヌ・クレマン演じる近所の住人カイラと出会い、スティーヴと三人、再び希望を抱いて生きていこうとしていた・・・そんな時、、、あやややーってな感じ。けっこうツラい話よ。

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個人的に恋人に見せたい映画ランキング第5位くらいかしら

この作品は1:1の画面アスペクト比、つまりインスタグラムのような正方形の画面で上映されます。こんなのドランがはじめてでしょ。一般的な横長の映像ではないからこそ、画面の端っこまでめいいっぱいに映し出される登場人物の姿が、より窮屈で、閉塞した雰囲気を観る者に与えるなあと僕は感じたけど、ドランは「よりキャラクターの感情に没入できるスタイルだ」と言ってます(The Hollywood Reporterより、リンクは上掲)。ただ、よく見ていると、画面が広くなっていったり、また正方形に戻っていく瞬間がある。これは登場人物の心がすっきりと晴れたときに広くなっていて。つまり心境と共に画面アスペクト比が変わるっていう。すごくない?これを映画館で見たとき、鳥肌ものでした。見てほしい・・・

夢は叶えるもの

そんでドラちゃんのキャリアと名声はどんどん上がっていって、2015年にカンヌ映画祭のコンペティション部門の審査員を務めます。16年には第5作「たかが世界の終わり」(原題:Juste la fin du monde)を発表。主役はギャスパー・ユリエル。そう、知る人ぞ知る2006年のオムニバス映画「パリ、ジュテーム」でガス・ヴァン・サント監督(あ、ここにもゲイ・レジェンドいたじゃん!)が撮った短編に出演していた彼。僕はアレでイチコロでしたね。理由?もう、顔、顔!

「たかが世界の終わり」は16年のカンヌ映画祭で最高賞パルムドールの次点であるグラン・プリを受賞。僕はこの映画、どうしても眠くなっちゃったけど・・・

そして20代最後の2018年に公開された初の英語作品(これまではすべてフランス語作品でした)「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」(原題:The Death & Life of John F. Donovan)では錚々たる俳優陣がドランのオファーに応えます。ジェイコブ・トレンブレイ(「ワンダー 君は太陽」)、キット・ハリントン(「ゲーム・オブ・スローンズ」)、ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、キャシー・ベイツ。ハリウッド映画でもないのに豪華すぎよ。スーサラ姐さんキャシー姐さん共演するってスゴ過ぎ。

この作品は、幼き日のグザヴィエ少年が映画「タイタニック」を見て感動、デカ・プリ男くんにファンレターを送ったというエピソードに着想を得て制作。クレイジーな芸能界のサマとそんな中でも「夢を追いかけること」の大切さが描かれる。このメッセージは彼が2014年にカンヌ映画祭・審査員特別賞を受賞した時、涙ながらに訴えたスピーチに通じるものがある。

僕と同世代のみんなへ。
誰もが自由に表現する権利があるにもかかわらず、
それを邪魔する人がいる。
でも決して諦めないでください。世界は変わるのです。

この言葉に続いてフランス語でドランは言う。「夢を追う者、果敢な者、あきらめずに一生懸命やれば、何もかもが叶う」と。

最新作「マティアス&マキシム」

みなさーん、今年の9月に最新作「マティアス&マキシム」が日本でも公開されまーす!同じタイミングで「窮鼠はチーズの夢を見る」も公開でっすよー!もう今年の9月は僕の中ではプライド月間です。前売り券も買ったし、あとは「コロナをぶっ壊す!」だけだ。

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最新作より。たった一度のキスから始まった、的なやつです

もうしばらく映画館に行けていない。ソーシャル・ディスタンスだからです。映画館という場所で見るワクワクや興奮をもう味わえないカモなんてのはイヤで、また心からあの体験を楽しめる日が一刻も早く来てほしいと思います。

グザヴィエ・ドランの映画は「オシャレ映画」のカテゴリにおさめられて終わるものでは決してない。「ゲイ映画」で片づけられてももったいない。これからもたくさんの作品を生み出していってほしい。そして見る人に夢を与えてほしい。

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