見出し画像

「思いやり」、それとも「保身」?

2023年そ
3月13日からマスク着用は「個人の判断」となった。COVID19感染(伝染)病対策におけるマスク着用は当初から「任意」だったはずだ。ただ、「任意」の意味が国民に十分理解されていないことが幸いしてか、一億総マスク着用社会になったことは前回ふれた通りである。そのため、各自治体では今度は「個人の判断」社会作りに様々な工夫を凝らすことになった。別に、主権在民の立場からすると、「個人の判断」だよって通知するだけでいいような気がするのだが・・・。そんなわけにはいかないらしい。
長崎県でも3月10日前後から『「つける」「つけない」あなたが決めます』と子細なマニュアル付きで商業施設の大きなディスプレーやら各新聞紙面に一大キャンペーン。大盤振る舞い!!だね。当方のブログにも協力を兼ねて掲示させていただこう。

西日本新聞(2023年3月10日)

ただ、長崎県の行政当局が何時からこんなに県民への「思いやり」があるのかと驚くばかりだ。いや単に「要らぬお節介」、ひょっとすると「保身」ではと勘繰りたくなる。
そうなると、2019(令和元)年度精神科病院実地指導結果が県の福祉保健部長名で送られてきた文書指摘事項にも再びふれておかねばなるまい。『一部の任意入院時の診察録ついて「入院(任意入院)に際してのお知らせ」により告知しているが、誰に説明、誰が受領してか確認できない事例が見受けられた。』とあるが、これには少しだけ続きがある。『事後のトラブルを招くことがないよう適切に記載すること(「精神保健及び精神者福祉に関する法律」第21条第1項)』と。これは「思いやり」と言うより「任意入院」の意味がお分かりでないお役人さんの「保身」のメッセージに他ならないと受け止めてもいいかと思う。
そうそう、前回のブログ「任意について」をアップした後、直ぐに一人のフォロワーさんから次のようなメッセージをいただいた。『そもそも、「入院(任意入院)に際してのお知らせ」が完全に論理破綻しているめちゃめちゃな文面だから不当入院も恣意的にできてしまう』と。この方のご指摘、的を射ている。そうなんだよね、1988年精神保健法改正時、この「入院(任意入院)に際してのお知らせ」とは、すでに長期(社会的)入院となり、受け皿がない患者に対して継続入院を患者本人から同意、了解を取り付けることを目的としたものであった。よって、(今日の疾病構造の変化に伴う)手間ひまがかかる厄介な患者本人との入院契約に係る手続きは想定されていなかったはずだ。次に「不当入院も恣意的に・・・」のご指摘、まさしくおっしゃる通りである。「任意」と「恣意的」とは類語だよね。何れも「お気に召すままに・・・」だが、一般的に「恣意的」は批判的な場合に使用されている。だが、お役人さんは恣意的な不当入院であろうが、なかろうが精神保健指定医による「お気の召すままに」で作成された書類と、その書類に精神医療審査会がお墨付きを与えれば、「錦の御旗」なんだよ。とにかくお役人さんは書類が整い、マニュアル通りにことが進んでいればOKのハンコを押す、それが安心。だから患者側の気まぐれな治療契約、「お気に召すままに」ではキッと不安で、怖くて仕方がないんだよ。患者の人権とやらはどうでもいいのだ。どこかでクレーム等に巻き込まれないかと、つまり「錦の御旗」が安心・安全だと思い込んで「保身」に走っているわけだ。ところが、その「恣意的」な書類至上の入院のやり方が訴訟沙汰になっている。それも所轄の児童相談所も巻き込まれて訴えられている(・・・「氷山の一角」)。そんな訴訟案件は他にも起きている、と聞く。被告側は精神科救急に対応し行政との密な連携を自負する精神科医療機関だそうだ。
これまで精神科救急病棟の認可を取り、依存症、児童思春期治療との組み合わせで精神医療を行ってきた医療機関に懸念と違和感を持ってきた。やはりかといった感が否めない。

一度決めたことを続けること、「信念を貫く」のはいいことだけどね。でも特性の変化を常に見極める姿勢は大切だと思う。この3年あまりのCOVID19感染(伝染)病対策然り、そして精神医療対策(失われた20年)然りだ。日々のCOVID19感染者数を報じるメディア、また時に精神科領域における拘束ゼロ・医療保護入院ゼロキャンペーンの報道を見聞するたびに、何故か私はミッドウエー海戦後の大本営発表(生報道には接していないが・・・)と重なってしまうのである。この先、「・・・日本に・・・した~♪」なんてことを口遊む日がこないことを願うばかりだ。

余談だが、大盤振る舞いについてもう一つふれておこう。2020年12月15日のブログ『依存症対策は予防、早期治療より、 まずは「習うより慣れろ」から』を憶えておられるだろうか?
そこで1200万円の予算を要し長崎県下のギャンブル依存症等の実態調査が行われたことをお知らせした。どうも、その調査結果が報告されたようだ。だが、それがわかってどうなんだよ。来年度は依存症対策として、長崎県は1億5千万円を計上しているようだ。一地方自治体としては異例、これはとてもとても大盤振る舞いだよね。これまで何をしてきたのかな?そしてこれからどうするのかな?是非実効あるものにしていただきたいし、情報公開ももちろんよろしく!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?