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始まりの朝  ニケと歩けば

いつもと同じ時刻。まだ暗く月明かりの坂道はしっとり濡れています。
一段と黒い帯の海はどこまでも闇の中のようですが、きっと一番に輝き始めるでしょう。

けたたましく鳴く黒い鳥がいつもより甲高い声で泣いたのは、周りの静けさからそう感じたに違いありません。

細長いイタチが道を横切っていきました。草の匂いを嗅ぐことに一生懸命のニケは全く気が付いていないようです。

寒い寒いと思っていても今朝はなんだか穏やかで、10分もするとホカホカ温まってきます。

特に朝から元旦を祝うこともなく、昼から息子とささやかなお祝いをするのみですが、通りすがりの人は、いつもと違って「おめでとうございます。」と小さく声掛けします。

近くの神社に初詣でしょうか?親子ずれ。その子は3歳ぐらいの男の子。嫌がらずに母親に手を引かれて黙々と坂を上がって行きます。

子どもたちの小さな時、家族6人で初詣が恒例でした。
みんなが盛装とまでいかなくてもきちんとした服装でと言うのは義父が物言わずとも教えた我が家のルールでした。

毎年背丈が延びる子供たちのおみくじを持った写真は小学校を卒業するまで続きました。

お参りを終えて家に着くと、手作りのお節料理、三段重ねは30日から準備した義母との共同作業。野菜の切り方から始まって味付け。何一つ実家と同じものはありませんでしたが、それが結婚するということ、家族になるということと結婚前に母に言われました。

大晦日から3日まで有馬温泉で過ごすのに元旦は家に帰って仏壇へのお参りするのは崩されることはありませんでした。

それなら1日から行けばいいのにと何度か思いましたが、それが婚家先のお正月。

今では私なりのお正月料理となり、孫たちや娘夫婦が好きな料理を作るのが習わしとなりました。

二人目の息子は私のグラタンを気に入ってくれているようで娘から里帰り前のLINEでリクエストしてくれます。「今年もお母さんのグラタンが食べたいらしいよ!」今年も同じようにできるかちょっと心配です。

孫たちは会うごとに好きなものが違っているのであらかじめ娘に聞いておきます。なんらお正月らしくない料理が並びますが、それはそれで今の我が家の習わしとなりました。

そんな始まりの日の様子を浮かべながらの散歩は日の出を見る前に帰宅となりました。ニケは満足げであともう一か所!というおねだりもなくすんなり帰宅となりました。

きっとお腹が空いたのが勝ったのでしょう。こんな日がニケにも一日も長く続きますように!
そんなことはお構いなしに白い冬毛のお尻はリズミカルに階段を上っていきました。


今年もよろしくお願いします。良い一年にしましょう!






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