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珈琲物語

久しぶりに大丸のオープンカフェ カフェラに行ってきました。ここのエスプレッソは本場のそれと遜色ない、うま味が凝縮された一杯です。
気持ちが前向きだったり、うまくいったことがあった時このテラスで一息。
寒い冬は大型のストーブやブランケットのサービスがあり、温かいコーヒーカップを両手で抱くと珈琲のいい香りが湯気と一緒に立ち込めて、それはそれで素敵な時間を運んでくれます。
粉雪が降る日も、コートにショール 手袋。分厚めのソックスと完全防備でわざわざテラスに座ります。

読書を楽しむ人、ゆっくりとコーヒーを味わうおひとり様。ケーキをほうばりながら、カプチーノのカフェアートにスマホが向けられています。

ミラノに旅した時のバールにはいろんな言葉が飛び交って賑やかなひと時でした。ソムリエエプロンの黒い瞳の店員の狭いテーブルの間を縫うように動くさまはしなやかな熱帯魚のようで、その場での勘定は大きめの電車の車掌のようなかばんでした。

フランスではユトリロが描いたモンマルトルのカフェを実現したみたいなその風景に自分も溶け込んだことがなんだか嬉しくてちょっと大人になったような気分でした。画家の卵になった気分?

最近は若い人向けの店が大半を占めますが、こんなおとなが満足する店がある神戸はまだまだ健在です。ここは静か。話し声も小さくて邪魔になりません。

いろんな顔をした喫茶店やカフェ。その時の気分で選ぶのも楽しみの一つです。

1杯のコーヒーからいろんな物語が生まれます。主人と始めたカフェはサイホン仕立ての軽めのコーヒーでした。ビジネス街では軽めのコーヒーが人気でたばこの煙をくゆらしながら、心地よい話し声が聞こえました。イージーリスニングのBGMと時に聞こえる笑い声。ザワついているのにそれさえ心地よい。
今や禁煙がほぼ当たり前ですが、当時はほとんどの男性はコーヒーとたばこが一時の休憩に欠かせませんでした。私はずいぶんたばこの煙を吸い込んでいたでしょうが今も肺は元気です。

昭和の喫茶店は今でもあちこちに残っていて、スタイリッシュなカフェにないレトロな親しみやすさで根強い人気があります。若い人は今や昭和ブーム。

古臭いことがエモいとなってなかなか不思議な年代です。


以前は紅茶を飲むのがお嬢様ぽくってみんなこぞってアールグレイやダージリンを注文しました。「そんな私が好き!」と言うフレーズも流行りましたっけ。コーヒーはどちらかと言うと男性的でかわいらしさはないかもしれません。

私はコーヒー派で濃い目のマンデリンが好きです。アーシーの香りは土のとか泥臭い、と野性的な要素があります。特にインドネシア産のコーヒー豆に表現されます。以前マンデリンを奨めた友達が「泥水みたいで苦手」と言ってましたがその表現!大正解かもしれません。

 父は無類のコーヒー好きでお砂糖を入れてゆっくりかきまぜた後、生クリームを注ぎます。その時は混ぜてはいけません。静かに渦巻きがほぐれてマーブルになるのが飲み頃。もちろん傍らにはたばこの煙が揺らいでいました。

朝の一杯のコーヒーは元気をくれて午後のそれはくつろぎをもたらしてくれます。コーヒーはゆっくり一人で飲むのがいいのかもしれません。

今日もいい日にしましょう!

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