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8/14 読了?『はだしのゲン』

 今日は図書館で借りた『はだしのゲン』を3巻までと4、5、飛んで7巻まで読了。あまりにも面白くて揃うのを待ちきれなかった。
 そんなこんなであっという間に23時30分に……。

『はだしのゲン』


 読了……ではないですが記録します。
 『はだしのゲン』について詳しいのはこちら。

 ゲンの物語を通して感じたのは、どうすれば自分自身をしっかりと保つことができるのかと言うことでした。

 非国民と罵られても、戦争反対の考えを表明し続けたゲンの父親。そのせいで肩身の狭い思いをし、子供たちまでいじめられることに揺れながらも、本当に自分達を苦しめているものは何かを見誤らない母親。
 自分というものをしっかりと持った二人のもとで育つ子供たちですが、長兄は非国民と呼ばれ弟妹に肩身の狭い思いをさせないために若くして軍に入るし、幼いゲンや弟は、非国民と罵られ理不尽な目に遭うと父を恨み、周囲の評価を鵜呑みにして訳もわからず中国人や韓国人を下にも見ます。

 価値観の画一した強力な同調圧力のあるなかで、判断を見誤らずにいることは簡単ではありません。長兄のように非難されたくないあまりに信条を曲げることも、ゲンたちのように幼さゆえに目の前の出来事しか見えなくなることも、よく知らないまま周囲の言うことを鵜呑みにして人を傷つけてしまうことも、よくあることだと私は思います。
 そんなごく当たり前の子供であったゲンたちが、厳しい経験をいくつもする中で、自分の考えを持ち、折れずにいつづけることができたのは、両親に支えられてきた記憶が体感として刻まれていたからなのではないでしょうか。

 ゲンたちは理不尽な目にあった時、父に辛い気持ちを受け止められ、共に戦ってもらってきました。圧倒的な心強さを感じられたと思います。心底自分が大切な存在であることを実感できたでしょう。存在の全肯定です。
 親に信頼された経験、信頼し、応えてもらった経験があったから、ゲンはどんなことがあっても自分を信じる、信条を曲げない強さを育てていくことができたのだと思うのです。

 作中でゲンは何度も、日本人の「強いものに迎合して価値観をくるりと変える態度」を嘆きます。
 自分自身の考えを持たず、正しいとされているものを取り込み、自分の考えであるかのように振る舞っているから、平気で主張を180度転換できる。そのことを不思議がるのです。

 だけれども私にはゲンのようではいられない、迎合する人間の弱さが感覚としてわかってしまいます。心の中に支えを持つことができなかった人間が心強さを感じるには、周囲の言う正しさに従うのが手っ取り早いからです。対立するのが怖くなり、簡単に自分を手放してしまう。考えることをやめてしまうのです。

 自分の考えを手放し、周囲に合わせることを覚え、そこから外れると攻撃を受ける同調圧力の強い社会に順応した大人は、子供に安心感を与えてやることができません。自分自身が脅かされていて、子供の考えを受け止め支えてあげる余裕がないのです。相手がどんなに震えていても、痛みを感じられない。
 心の支えを持たない人が自分自身のために、そして子供たちのためにできることは、まず最初に自分の考えを持つこと、そしてそれを表明することを支援する。心に支えを持たない人間にとって、それはとても勇気がいることだと思います。けれど、ひとつひとつ経験を積み重ねることしかないでしょう。


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