読書それ自体の醍醐味が味わえる!『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んでみた。

はじめに

だいぶ話題になっていました。中田敦彦の動画でも紹介されていたきがします。中田敦彦の動画を見たところ、この本は人種についてエッセイのように書かれた本だとわかりました。「つまりこの本は知識本やハウトゥ本ではないので、文章そのものに価値があるのだな」と思いました。そこで図書館で借りることにしました。人気の本だったので2-3年かけて、やっと予約の順番が回ってきました。

どんな本?


ブレイディさんはイギリス在住の女性で、12歳(連載)の息子がいます。中学生になった息子は日本人と英国人のハーフ&ハーフです。しかし、生まれてからずっとイギリスで育っているので英語しかしゃべりません。時には人種差別を受けたり、友達と喧嘩したりしながら成長していきます。
タイトルは、息子さんがノートの端っこに走り書きしていたものをブレイディさんが借用したものです。
黄色人種と白人のハーフ&ハーフで、少し悲しいことを経験したりしながら成長していきます。それを母親の視点で追うことができます。
この本を通じてイギリスの中流階級の社会やブレグジット運動の中のイギリス、政府の緊縮政策の影響、イギリスの学校生活や授業などを垣間見ることができます。
中でもイギリスの学校生活について驚かされました。

  • 演劇の授業がある

  • シティズンシップ教育がある

  • 性教育でどのようにして子供が生まれるかを習う

  • 私立高校と公立高校の扱いの差

  • 子供たちの中になる人種意識

  • 子供の所作に顕在化する階級社会

私は日本でしか学校生活を送ったことがないので、これらの内容はとても勉強になりました。衝撃を受けつつも、ブレイディさんの息子さんやその友達が、淡々と現実を受け入れ、その現実の中で生活を続けます。その淡々とした筆致から、日本とは別の環境があるということをまざまざと知ることができます。感情的な部分をできるだけ排除した筆者の書き方は、どんな政治的な考え方を持っている人でも何かしら考えるきっかけを与えてくれるのではないかと思います。

この本はなぜ凄いのか

私の周りの学生や、SNSで留学の様子を発信している人は、できるだけ煌びやかな生活を見せようとしていると感じています。一方で、ブレイディさんは、着飾っていない現実をしっかりと反映した学校生活を文章で知ることができました。

これは、ブレイディさんが、文章そのものを商品にしているからだと思います。もし、この本を通じて留学代理店などの宣伝をするのであればこんなにもイギリスの現実を言語化し、考えさせるような文章にならなかったと思います。ブレイディさんは、現実が反映された文章を私たちに届けてくれます。イギリスで子育てをする一人の母親の視点で書き、キラキラフィルターがかかっていません。イギリスにずっと暮らしていて、かつ日本語の文章力もあるブレイディさんだからこそできることだと思います。

読書の醍醐味を味わえる

私は、読書というものは、視野を広げるのに最適な媒体だと思っています。最近は、SNSのレコメンドシステムが発達しています。だから、SNSで自分の価値観に合うコンテンツばかりをますます摂取してしまいがちだと思います。SNSばかり見ている人や、読書で視野を広げる体験に乏しい人にぜひお勧めできます。

この本は、「イギリスの学校生活なんてきっとキラキラしているんだろうな!」「イギリスの学生はきっと、ハリーポッターの世界のような美しい校舎に通うんだろうな」という幻想を打ち砕いてくれます。どの国にもいい面もあれば悪い面もあるということをしっかり認識させてくれます。

さいごに

日本の学校生活しか知らなくて、読書もあまりしていないという学生(おそらく結構多くの日本人学生が当てはまる可能性がある)や、最近読書できていないなと思う方へ。この本は本当に読みやすくて、日本の日常生活では得られない視野を得られると思います。ぜひこの本を手に取ってみていただきたいです。


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