vol.2 愛犬との別れから3ヵ月…悲しみと家族の将来に向き合って
天国の少し手前には「虹の橋」があると言われています。そこは、亡くなったペットたちが自分の飼い主と待ち合わせるための場所。
飼い主が自分のところに来るまで、ペットたちは楽しく遊びながら待っているそうです。
ここ「虹の橋こうさてん」は、そんな虹の橋をイメージし、お別れを経験した人、これからその時を迎える人のための情報交換の場です。
大切な家族とのお別れを経験した方へのインタビューをとおして、お別れまでの過ごし方や、お別れの仕方についてのさまざまな選択を発信していきます。
vol.2は、お家で過ごすことが大好きだった、チャピちゃんのお話をお届けします。
犬種:キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル/女の子
享年:8歳
語り手:Y.Mさん
人懐っこくて、可愛らしさを振りまいていた
チャピちゃんとの出会いについて教えてください
チャピを飼う前に、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルという犬種の写真を見て、「可愛い! いつか飼ってみたい」と思っていました。
女の子がいいと思ったので、いくつかペットショップを回ってみて、2015年の9月ごろ、生後4ヶ月のチャピに出会いました。
はじめから人懐っこくて、「あなたのお家に行きたい! 連れていって!」とアピールしてたんですよ。ペロペロと舐めてきて、かわいらしさを振りまいていました。両親も飼うことに賛成してくれたので、家族になりました。
どんな性格でしたか?
人が好きで、お菓子などを欲しがるときは、伏せをしておねだりしていました。その姿がとってもかわいらしかったです!
カメラを構えると、ポーズをとっていました。まるで写真慣れしているモデルみたいに、自分のチャームポイントをわかっているような感じ。あざとさを感じるほどでした(笑)
体は弱かったけど、食欲満点!
普段はどんな風に過ごしていましたか
家の中や、家のまわりで過ごすことが好きで、父や私が一日に何度か、短い散歩に連れて行ってました。
散歩は、父のボケ防止と運動不足の解消という面もありました。でも、チャピは小さいころから体が弱く、1歳のとき、避妊手術のためにおこなった検査で、「門脈シャント(門脈体循環シャント)」という難病を患っていることがわかったんです。
4ヶ月ほど大きな病院に入院し、2度の手術を行いました。家に来たころは、走ったり、散歩に行くことを楽しんでいたのですが、もともと心臓が弱い犬種ということも関係したのか、それすらもだんだんとしなくなってしまって…
日に日に疲れやすくなっていったようで、心配していました。亡くなる前は、カートに乗ったり、ときどき近所をドライブしたりして、外の景色を見るのが好きでした。
手術の後は心配だったでしょう
術後、お医者さんからは、あまり長生きできないかもしれないと言われていたので、あと10年生きれば十分かな、と思っていました。
体の心配はしていましたが、食欲は旺盛でした。ドッグフードよりも鶏肉、さつまいも、かぼちゃが大好きでした。通信販売で箱買いするほど、よく食べていました。
皮膚のアレルギーがあり、無添加のフードを食べさせても痒がっていたのですが、鶏肉を食べさせると、特に首の所にできていたカサブタみたいなものがきれいに取れたんです。
2023年12月頃に腹水炎が発覚すると、お医者さんから「そう長くはないので、好きなように生活させてあげて」と言われました。そのときは鶏肉を中心に、好きなものだけをたくさん食べさせました。
チャピが亡くなった後、たくさん買い込んだ食料が食べきれないくらい余ってしまい、それを食べきるのが大変でした。
できるだけ一緒に過ごそうと決めた
今年の3月に亡くなったばかりとお聞きしました
病気が発覚したのが去年の年末でした。「年を越せないかもしれない」と言われていたのですが、お医者さんの処置のおかげもあり、チャピも頑張ったんだなと思います。
ちょっとポチャッとした体型だったのですが、最後の数ヶ月は、お腹がすごく痩せてしまいました。
チャピは出かけられないので、なるべく私が家にいて、できるだけ思い出を作ろうと思いました。年末年始は家族みんなでゆっくり過ごして、一緒に近くの神社まで初詣にも行きました。
チャピはしんどいはずなのに、自分でカートに乗って「外に連れてって!」と誘ってきたことがありました。歩けないけど、外の空気を感じたり、気分転換をしたかったんだと思います。人間の子どものように、あれがしたい、これがしたい、という意思を私たちに伝えてくれました。
普段からよくペロペロしてくれていたのですが、最後はしなくなり、ピタッと私に体をくっつけていました。
亡くなる瞬間を見届けられたのでしょうか?
亡くなる前、チャピは眠ることも苦しがり、眠れていない状態でした。家の中さえ動き回ることができなかったのですが、夜に何かあったら危ないからと、母が一晩中、起きて看病していたんです。その日、私は仕事に行っていました。終業後に母からの着信に気づき、かけ直すと「チャピが亡くなった」と知らされたので、急いで家に帰りました。
両親から、昼間、カートに乗って少し散歩に出たあと、チャピが変な鳴き声を出したと聞きました。チャピは散歩して疲れたのか、寝てしまい、そのまま虹の橋を渡っていったということでした。
家に帰るなり、亡くなったチャピを見て、涙が止まりませんでした。急いでかかりつけの病院に行き、死亡確認をしてもらいました。最後に診てもらった先生にも、翌日に連絡しました。
葬儀をして「お別れできた」という気持ちになれた
亡くなった後、どういう行動を取りましたか?
葬儀をどこに頼んでよいか、わからなかったのでネットで調べました。でも結局は、かかりつけの病院で紹介してもらったペット専用の葬儀場に自分で電話をかけました。
そこは、葬儀と火葬をしてくれるところでした。火葬の前にチャピとお別れする時間をとってくれ、棺ではなかったのですが、花を入れる時間もありました。待合室もあって、ちゃんとペットとお別れできる場所だったんです。
うちは車がないのですが、家から火葬場まで送迎してくれました。葬儀の担当の方は、親身に私たちに寄り添ってくれました。チャピにも本当によくしてくれて、ありがたかったです。そのときのことは、今、うまく言葉にできませんが、本当に感謝しています。
葬儀はどんな雰囲気でしたか?
葬儀のプランには、お坊さんにお経を唱えてもらうとか、お寺でお経を上げるといったオプションもありました。でも、うちは大々的なやり方ではなくて、静かに淡々とした感じでやろうと決めました。
葬儀場に持って行った物は、あまり多くありません。花、チャピが生前に使っていた洋服、それから私の趣味で集めている御朱印帳を1冊持っていきました。それらを火葬の時にいっしょに焼いてもらいました。
ただ焼いて終わりだったのではなく、火葬後にはお骨の説明、骨壺への入れ方を説明してくれました。葬儀場の人が丁寧にしてくれたので、何度も言いますが、本当にいいところを紹介してもらって良かったです。紹介してくれた病院の先生には、感謝してもしきれません。
最後のお別れは小さい形ではありましたが、きちんとお別れができたような感じがしています。
これからも家族だから、チャピと同じお墓に入りたい
お別れから3か月経った今の心境は?
一緒にいることが当たり前だったので、チャピがまだここにいるんじゃないか、帰ってきたら玄関で出迎えてくれるんじゃないか、朝起きたら「おはよう」と言ってくれるのでは…など考えてしまいます。亡くなったことがまだ信じられません。
まだ心の整理がつかず、正直なところ、私もチャピの所に行きたいと思うことがあります。
ご家族とはどんな話をしていますか?
家族とも、まだここにいるんじゃないかな、と話しています。チャピの骨は家に置いています。市のペット霊園も見学したのですが、気持ちの整理がつかなくて、その時はお墓に入れたいと思えませんでした。
私は共同墓地でもよいので、チャピを安心できる場所に移してあげたいという気持ちもあるのですが、両親はまだ踏ん切りがついていません。両親は「チャピを自分たちと同じお墓に入れたい」と言うんです。両親の気持ちはわかるのですが、いつかはペットのお墓に入れないといけないんですよね。
たとえば宗教の考えでは、人間と動物は分け隔てられているし、実際、ペットと人間は一緒のお墓に入れない霊園が多いです。私たちはこれまで家族としてずっと一緒に過ごしてきたのに……。チャピと私たちは、これからも家族なんです。
私はいつか嫁いでいくかもしれないけど、チャピと両親は、一緒のお墓に入れてあげたいというのが本音です。でも、今は、お墓も必要ないんじゃないかという意見もありますよね……。お墓のメンテナンスや維持費のことも考え、家族みんなが一緒に入れる場所が見つかることを望んでいます。
家族でいてくれてありがとう
今、ペットと一緒に過ごしている人にかけたい言葉があれば教えてください。
うちみたいにペットを亡くした人にかける言葉は、今、出てこないです。チャピがいきなり亡くなって、まだ心の整理がついていないので。
私は葬儀をきちんとして、お別れができたという想いがあるので、そこにあまり後悔がありません。でも、ペットが亡くなって、お墓や遺骨の行き先について気持ちの整理がつかない人は、たくさんいると思います。
今、チャピちゃんに伝えたいことは?
チャピは年が明けるまで生きられるかどうかという状況で、春まで頑張ってくれました。最期、もっとできることがあったんじゃないかとも思いますけど、チャピには「家族でいてくれて本当にありがとう」と伝えたいです。
〈おわりに〉
チャピちゃんが亡くなった後、きちんとした葬儀でお別れはできたものの、突然の別れに気持ちが追いつかず、今も遺骨をご自宅で供養しているとのことでした。
チャピちゃんとのお別れから3ヵ月経ち、ご自身も悲しみに沈んでいる中、Y.Mさんはお墓の問題や、ご両親の意見との違いにどうやって折り合いをつければよいのか、今のお気持ちを涙ながらに語ってくれました。ご家族にとっての最適な答えが見つかることを願います。お話しくださり、ありがとうございました。
(聞き手:イチノセイモコ/ライター)
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