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どこを手術の成功とするのか

遠方に住む学生時代の友人が上京するというので数年ぶりに会って来ました。

私がくも膜下出血を起こしたことは知らせてありましたが、後遺症のことは詳しく話しておらずわかってもらえるだろうか?と不安を抱きつつの再会でした。

けれども、彼女は偶然にも高次脳機能について研究している教室で仕事をしていたことがあったとかで、詳しいことは知らないけれどと言いつつ理解を示してくれてほっとしました。

今回は数日滞在とのことだったので、ホテルの同じ部屋に泊まり夜遅くまで語り合いました。

何年も会っていなかったことなど感じることもなく、学生時代に戻ったかのように時を忘れておしゃべりをして楽しい時間を過ごしました。

ところがその一方で私の心には何とも言えない、重苦しいものがありました。

実は、私がくも膜下出血を起こした半年後に彼女は偶然見つかった未破裂脳動脈瘤の手術をしていました。

話には聞いてはいましたが、破裂してしまった自分と手術で未破裂で終わった彼女との現在の生活に大きな差があることに何とも言えない気持ちになりました。

もちろん彼女が偶然にも未破裂の状態で見つかり、自分のようにくも膜下出血を起こさず後遺症もなく済んでいることは本当に良かったと思っています。

けれども、未破裂で見つかった彼女と自分の違いは一体何だったのだろうか?単なる"運"だけなのだろうか?

ただ素直に喜んであげられない自分の心の狭さがつくづく嫌になりました。

そんな思いを抱えながら聞いた彼女の手術の話ですがとても心に残ったことがありました。

それは執刀医が彼女に言ったという
「患者さんが元の生活に戻れなければ手術が成功したとは言えないんだよ」
という言葉です。

手術の前なのか後なのか、どういう場面で彼女に言ったのかは分かりませんが、後遺症について訴えたとき
「死ぬ人が3割、後遺症が残る人が3割の病気ですから」
と私に言った先生とは随分違うのだなと思いました。

当たり前ですが同じ脳外科医と言っても本当に人それぞれなのだと思いました。
死ぬ人が3割‥と言われて"急性期を診る脳外科医だから仕方がない"そう思っていましたが、みんながそうとは限らないことに驚きました。

もちろん脳外科の手術ですから、後遺症を負う人が多いと思います。
けれども、医師が命が救えれば手術は成功とするのか、元の生活に戻れる状態にできてこそ成功とするのか。そこは大きく違うのではないでしょうか。

何だかとても大きな一言を聞いた気がしました。