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3月、学年が終わるときに、私は文字通り命を削ります。子どもたち一人一人に通知表を作るのです。といっても、普通の通知表ではありません。世界で一枚の通知表なのです。子どもの良さに合わせて、通知表の項目が作ります。だから当然、全ての項目が◎なのです。そして、所見もがっちり打ち込みます。もちろん、学校からの通知表もありますので、二枚作るわけです。

この前は特別支援学級から通級している子どもたちの分も含めて、43枚作りました。そもそも、本当の通信表とは、こちらではないかと思っています。学校のものさしで子どもを測ることも必要かもしれません。でも、本来は子どもがもつ良さを見つけ、伸ばし、生かせるように育てていくことではないでしょうか。私はずっとそう考えてきました。

先日、学校の行事で、とある保護者に出会いました。2年前の3月29日、額に入った私へのお礼状をもってきてくれた方です。私は残念ながら新しい職場へ引継ぎに出ていましたので、会えませんでした。学校に戻ってくると、机の上に紙袋があり、その中にお礼状が入っていました。うれしくてたまりませんでした。そして、お手紙でお礼を書いて郵便で送りました。私は本棚にこの礼状をかざっています。いつも読んでは勇気をもらっているのです。

お礼状をくださった保護者は言いました。
「先生、世界で一枚の通知表、今も大切に飾っています」
えっ!と思いました。
お互いに渡したものを飾りあっていたのです。距離は離れていますし、しばらくは会っていませんでしたけれど、気持ちは通い合っていたのかもしれません。
子どもの担任。
子どもの保護者。
そういった関係ですが、これからもこの縁が、末永く続いていけばと思いました。

                    三浦健太朗

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