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子どものための実用書

「学校では教えてくれない大切なこと」シリーズ、我が子も大好きだし、教室でも大人気です。以前、交流会で学校司書さんたちと話していた時に、「このシリーズがとても人気」と話題になったことがありました。今日は、子どものための実用書について書いてみたいと思います。

学校では教えてくれない大切なことシリーズ

このシリーズでは、生きていく上で大切なことを1冊につき1つトピックとして掲げ、まとめています。子どもが自分で考えて、自分の人生に役立てられるようにするという目的で作られています。すべてのページがカラーで構成されており、おもしろいキャラクターが出てくるマンガでトピックについて易しく学んでいけるようになっています。私は、数年前、ミニビブリオバトルでクラスの子が紹介したのをきっかけに何冊か購入しました。教室に置くと、たちまち大人気になりました。

困りごとを自分で解決したい

例えば、あなたが友人関係に悩んでいたとしたら、どうしますか?

きっと、日常生活の中で、うまくいかない友人関係について思いを巡らすことでしょう。誰かに相談してアドバイスをもらうかもしれません。もしかすると、ネットで友人トラブルに関する記事が目について、自分を重ねるかもしれません。また、自分から積極的に「うまく友人と距離を取るには」のようなトピックの記事を探すかもしれません。また、物語を読んで登場人物に思いを馳せたり、音楽を聴いて気分転換しようとしたりするかもしれません。

子どもたちは、「こうなりたい」と思うことの答えを探して、この本を手に取るのではないでしょうか。文章で書かれた物語にもそういう作用があると私は思っています。登場人物の文脈に当てはめて、「あ、自分もこういうことあるな」「この人と自分、ここは違うけどこういうところは似ているな」などと思いながら、ストーリーに思いを馳せます。でも、その場合、たくさん文章を読まなければなりません。また、そのお話が自分の問題意識とぴったり合致することも少なく、言ってしまえばコストのかかる学びなのでしょう。

それに比べて、この「学校では教えてくれないことシリーズ」は、自分の中で生まれた問いについて明確なヒントを示してくれます。もちろん、本の著者も言っているように最終的には自分で考えること、決めること、行動することになるのですが、子供の「こうなりたい」を中心として構成しているので、共感しやすく前向きに課題に向かう気持ちが高まります。

読書が苦手な子も本から学べる

教室にこの本を置いておくと、読書が好きな子も読みますが、読書が苦手な子も進んで手に取っています。「時間の使い方」と言うトピックの本を読んだ子の中には、「先生、紙をください」と言ってくる子がたくさんいます。この本の中で「計画表を作ろう」という提案が為されているので、それに取り組むためです。

もちろん、ここでしっかりとした計画表を完成させて、それに沿って時間管理がしっかりできるようになる…とはいきません。そんなに単純なものではないですよね。でも、「時間をうまく使えたらいいな」という問題意識を自分でもち、それに対して「この本で紹介されているみたいに自分も計画表を作ってみようかな」と思って行動することにとても大きな価値があると私は思います。また、計画表を作ったけど、それ通りに行動するのって難しいなと思うことも大きな学びです。大人が、子どものスケジュールを管理し、「これが終わったら次はこうしなさい」と決めるより何倍も学びが大きいのではないでしょうか。本をヒントに自分の人生を豊かにしていく。その入口として、「学校では教えてくれないことシリーズ」は、子どもに寄り添ってくれるのだと思います。

図鑑シリーズ

ちなみに、我が家の子どもたちの中で最近流行した実用書(?)が、こちらの○○図鑑シリーズです。「学校では教えてくれないことシリーズ」のように細かなトピックで構成されてはないし、図鑑なので、ここまで述べてきた実用書の括りで紹介するのにはふさわしくないようにも思いますが、自分の暮らしの中で生まれた問題意識や知りたいことを出発点に、よりよく生きようとすることをサポートする本という点では共通するものがあると思ったので紹介しました。

このシリーズは、何だか昔懐かしいイラストが中心になっていたり、昔ながらの知恵がたくさん書かれていたりするので、すぐに役立つ知識を得るという目的だけでなく、その分野に関する歴史的な知恵や工夫が学べるというのが大きな魅力です。図鑑は、自分の知りたいことを調べられるというだけでなく、その周辺の情報が自然と目に入ってきて知的好奇心をくすぐってくれるというのがいいなと思います。

自分の興味関心に合わせて本を選ぶ

どんな本を選ぼうかと子どもたちは迷います。物語を読む場合、ある程度読書力がある子は、好きな作家さんがいたり、裏表紙のあらすじの部分を読んだりして読む本をサクサク決めていけます。でも、読書が苦手な子は、何を手掛かりに本を選べばいいか分かりません。しかも、読むのが苦手なので、面白くない本を読んで時間を無駄にしたくないのです。それで、本選びに時間がかかってしまうということはよくあります。

そんな子どもたちにとって、タイトルで内容がはっきりとわかる実用書(しかも絵やマンガがたっぷりで読みやすいと分かっているシリーズ)は救世主のような存在なのだと思います。司書教諭として、文章を読めるようにしていくということにも取り組んでいきたいですが、本に親しむことや本の様々な楽しみ方を知るという姿勢も子どもたちの中に育んでいければと思います。

子どもたちが自分で本を選ぶことで、自分の人生をよりよくしようとする。その営みを応援してきたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。