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読書の授業をカリキュラムに組み込む

国語の授業では「読むこと」を扱う教材がありますが、それが読書につながるようになっているかというと必ずしもそうとは言えません。教科書における「読むこと」の教材は、その学年の子どもに合ったものをバランスよく選んだものであり、それらを読むことには一定の価値があります。

ただ、国語の一斉指導の限界もあります。子どもたちには、それぞれに好みがあり、読みの能力も違います。「読むこと」の授業と「読書」をもう少し近付けたいといつも思っています。

そのために、私は国語の授業をカリキュラムマネジメントし、「読書」に重点を置いたを学習を学期に1回ずつ取り入れています。(ちなみに、書くことについても同様に、年間を通してカリキュラムに組み込んでいますが、今回は読書のことを中心に書きます。)教科書の教材を網羅しながら、どうやって読書の授業を行っているのかについて、以下にまとめてみたいと思います。小学校3・4年生での取り組み事例として皆さんの参考になればと思います。

年間を通した読書の授業

1学期:読書旬間で1冊チャレンジ

読書旬間(6月ごろ)に「1冊自分にとって少しチャレンジングな本を選んで読破してみよう」という取り組みを行います。1学期は、子どもたちの実態がまだよく分からないので、6月ごろまでに読書の様子を見て、どんな本が好きなのか、読書が嫌いなのかなどを把握します。

そして、2週間ほどある読書旬間では、どのくらいの本が読めそうか自分で考えて選ばせるようにします。読書についての自己理解がどの程度できているかを知るきっかけにもなるし、普段は図鑑や図解の多い本を手に取りがちな子がどんな本なら読めそうか一緒に考える機会にもなります。1冊読破できたらクリアですが、もし難しければ本を取り換えてもOKです。「読み終えられた」という体験で終わるようにします。

2学期:ブッククラブ(7時間扱い)

2学期はブッククラブを行います。
まず、本のリスト(10種類くらい)の中から希望の本を選びます。10種類の本は、プロローグを読んで紹介したり、実際にペラペラめくって分厚さや文字の量を確認できるようにしたりしておきます。選んだ本が同じ子たちで3~4人のグループを作り、1冊の本を4~5回に分けて読みます。(どこまで読むかは予めこちらで決めておきます。)

その期間は読書を宿題にしますが、学校の空き時間に読んでしまう子がほとんどです。授業では、その日読んできた部分のあらすじを確認した後、内容について感想を話し合ったり、続きを予想したりします。友達がどんな感想をもったのか楽しみにしている子が多かったです。

読み終えたら、グループの友達と一緒にブックボードづくりをします。本の内容を紹介したり、みんなで話し合ったことを書いたりして1枚のポスターのように仕上げます。この活動で、もう一度読み直し、本全体について総括することになります。できたブックボードは掲示しておきます。そうすると、違うグループだった子もその本を読むため、読みたい本が増えたり読書が広がったりします。

3学期:ペア読書(週1時間×4回)

3学期はペア読書を行います。同じ本を2冊ずつ50種類ほど用意し、読書力の同じくらいの友達と一緒に読みます。自分たちで「いつまでに何章読むか」などを計画し、1週間ごとに読んできたところまでについて話し合います。友達と一緒に本を選ぶと、自分では手に取らない本も「読んでみようかな」という気持ちになるし、読み終えられたという喜びを分かち合うこともできます。本が苦手だった子も、少しずつ自分で読める本が増えてきたという実感をもつことができたようです。

不定期:ミニビブリオバトル

ミニビブリオバトルは、年度の初めにやりかたをレクチャーし、手本を見せます。その後、出てみたい子が4~5人集まったら開催するというルールで行ってきました。クラスのイベントみたいな扱いです。
今年度は5~6回ほど行いました。本が好きな子やイベントが好きな子は出場して楽しむことができますし、それ以外の子も友達が発表するのを楽しそうに聞いています。勝ち負けに関係なく、ミニビブリオバトルに出された本は人気が出るので、読書を推進する活動としてとても有効だったと思います。

年間の授業の予定に組み込む

上記の読書の授業を組み込むために、年間予定を見てカリキュラムマネジメントを行い、教科書を少し圧縮して学習できるようにします。そして、残りの時間で読書の授業や「書くこと」に関する授業を行っています。具体的には以下のようなことをしています。

①漢字の学習の見通しを立てる

漢字の学習は、地味に授業を圧迫します。でも、漢字も大切なのでそれなりに時間を使う必要があります。漢字は1学期に配当されているものがとても多いです。そのため、読書の授業も1学期は軽めに設定しています。逆に、1学期のペースで漢字を行っていくと、2学期・3学期は早めに終わります。そこで時間に余裕ができたところで読書の授業をします。

②「書くこと」「話すこと・聞くこと」は他教科とコラボする

発表する学習や文章に書いてまとめる学習は、他教科や総合的な学習の時間と関連させて行うと時数の融通が利くようになります。現行の学習指導要領では、教科横断的な学びが推進されており、教科書も他教科との関連を図りやすいように作られています。新年度は、教科書が新しくなる年なので、スタートしたらまず教科書全体を見渡し、他教科と関連するものをピックアップしておくことで時数をうまく調整したいと思っています。

③小単元はプリントやICTを活用

教科書の合間に出てくるトピック教材は、プリントを活用して内容を整理することでコンパクトに授業することができます。学習内容は、その時間だけで身に付くようなものではないので、ポイントとして押さえておき、実際に文章を書く場面や活動の場面で、繰り返し触れていくようにします。

④「読むこと」では、その教材に合った学習の仕方を選ぶ

教科書に出てくる読み物は、選び抜かれたものであり、その教材の価値を十分に生かすことができる授業をしたいものです。そのためには、まず教員自身がその教材の魅力をじっくり味わうことが大切だと感じます。その上で、子どもたちに合った授業方法を選ぶのが良いと思っています。
どんなに良い作品でも、だらだらと授業をされては子どもたちはしんどいと思うので、テンポよく見通しをもって授業できるようにしたいと常々思っています。「読むこと」の指導には様々な実践事例があると思いますのでここには書きませんが、子どもたちの紡ぎ出す「読み」を共に楽しみながら授業ができたらいいですよね。

学期の終わりにゆとりをもって

2学期・3学期の取り組みは、学期の終わりに行っています。他のクラスは行っていない取り組みなので、学期末に余裕を作って組み込むようにしています。教科書準拠のカリキュラムを先に終えるので成績処理も早く済ませることになるし、子どもたちも学期の最後に自分で選んだ本を読む時間を取れるので一石二鳥です。
ただ、本を複数冊そろえるのには学校司書さんの協力が必要になるので、早めに計画しておくことは大切です。「時間があったらやってみよう」という軽い気持ちだとなかなか実現しないので、「このために時間を捻出するぞ!」という強い気持ちを持っておくことは大切かもしれません。

終わりに

「長い本を読めるようになりたい」という気持ちと「長い本を読むのはしんどい」という気持ち、どちらも感じている子がとても多いと思います。自分だけでは、そこを打破することはなかなか難しいものですが、教員のサポートや子ども同士のつながりを生かすことで、それが克服できる可能性は十分にあります。楽しく読書の世界を広げていくために、期間限定で行う読書の授業。みなさんも取り組んでみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。