見出し画像

79_TRPGのアレ 〜 阪神タイガース優勝とTRPG歴史の奇妙な関係 ~

2023年の流行語大賞が阪神タイガース・岡田監督の「アレ(A.R.E)」に決定したニュースは凄いことです。数々の流行語の中から今年のNo.1に選ばれるとは。やはり野球だけではなく、様々な分野で大事なことが凝縮された言葉だと思います。(2023年12月1日追記)

阪神タイガース日本一おめでとうございます。1985年以来の38年ぶり日本一に感無量。セ・リーグ優勝も2005年以来でした。1985年といえば、ゲームブックFFシリーズ特別番『ソーサリー』4部作が発売された年です。日本シリーズ後の正月明けに友人から借りて遊んだので覚えています。そして、2023年12月にも『ソーサリー』4部作が新訳で発売されるとのこと。時代はまわる、と言うか、時はめぐると言うか。

2023年の流行語大賞候補ノミネートされた岡田彰布監督の「アレ」はスポーツファンだけに限らず、今年の日本で話題になった言葉でしょう。日本一が決まった後に私は「A.R.E.」が単なる指示代名詞ではなく、スローガン的意味があったことに気づきました。以下、阪神タイガース公式サイトから引用します。

チームの最終目標にある『アレ』を目指していく強い想いをビジュアライズに表現いたしました。
このスローガンには “個人・チームとして明確な目標(Aim!)に向かって、野球というスポーツや諸先輩方に対して敬いの気持ち(Respect)を持って取り組み、個々がさらにパワーアップ(Empower!)することで最高の結果を残していく”という想いが込められています。

阪神タイガース公式サイトより

この「目標(Aim)」「敬いの気持ち(Respect)」「パワーアップ(Empower)」3つの言葉を見て、仲間同士で楽しむTRPGでも大事なことだと思いました。

◆目標(Aim)

TRPGの目的は「楽しむこと」です。GMが自分だけ楽しいとか、1人のプレイヤーだけが楽しいと言うのではダメです。参加者全員が楽しむこと。仮にセッション後に楽しさを5段階評価するならば、1人や2人だけが星5つ付けて他の参加者が0点というよりも、参加者全員が星3つ以上と言えるセッションのほうがベターです。『ドラえもん』のジャイアンリサイタルの場面を想像してみてください。歌っている本人だけが楽しんでいる。そういうセッションは許容できません。ただ、楽しみ方をABC分類したように、人によって楽しみ方がそれぞれあるというのも事実です。
厳密には「目的」と「目標」は別です。ゲームの目標は、シナリオに書かれています。怪奇事件を解決する、ボス敵を倒し平和を取り戻す、PCが金持ちになる、個人の使命を達成する等いろいろあります。画期的だと思ったのはTRPGシステムに「経験点(功績点)を多く獲得する」という目標を組み込んだルールです。『天下繚乱』『ダブルクロス3rd』『シノビガミ 』他のTRPGシステムで明確化しています。
余談になりますが、『失敗の本質』によると曖昧な目的が第二次世界大戦の日本軍の失敗要因の一つだったと研究されています。

◆敬いの気持ち(Respect)

TRPGは仲間と共に遊びます。だから、GMとプレイヤー、プレイヤー同士のリスペクトが必要です。一緒に遊ぶ仲間だけでなく、ゲームデザイナーへのリスペクト精神も忘れないでいたいです。ある意味、3つのAREのうちで最もTRPGに重要なのがリスペクトです。

◆パワーアップ(Empower)

TRPGに技術向上が必要かどうかは1990年代の普及初期から意見が分かれるところ。私は同級生のTRPGサークル会長の信念ともいえる、みんなが上手くなればセッションはより面白くなる、楽しくなるという説を支持しています。2022年には「ゲームマスターの力量マップ: プロフェッショナルの要件」という論文を『RPG学研究』で発表しました。
「Empower」は「力を与える」「権限を与える」が主な意味とも言えます。GMが神様のような圧倒的権限を握っているだけではなく、プレイヤーに意思決定顕現を与えて、物語を共創していくという解釈もできます。

◆阪神タイガースとTRPG歴史の奇妙な関係

阪神タイガースが最初に日本一になったは1985年でした。『ローズ・トゥ・ロード』が1984年発売。『D&D』が日本語翻訳されて発売されたのも1985年。いわゆる日本でのTRPG黎明期と言えるでしょう。
次に阪神タイガースがセ・リーグ優勝したのは2003年、2005年。TRPG冬の時代が明けたと言われた頃でした。個人的には、2005年の日本シリーズ敗北が悔しくて『ガープス・ユエル』キャンペーンで野球シナリオを遊び、封神タイガースが海戦士トライスターズに勝利するという物語を演出した思い出もあります。
そして、2023年はTRPG歴史のうえでも意味のある年です。2020年、新型コロナウィルスの影響で都市は半封鎖状態になり、対人コミュニケーションが著しく制限され、あらゆるアナログゲームは絶滅するかに見えました。だが、TRPGユーザーは生き延びました。対面セッションを遊んでいた者もオンラインセッションに主要な遊び場を移して。それから、我々は3年待ちました。対面がほぼ解禁された後も、時代の変化を感じます。かつて対面セッションだけを遊んでいた者の中には、オンラインと二刀流で遊ぶ者もいます。これはTRPG歴史の1ページなのでしょう。

こういうネタは鮮度が大事やねん。阪神タイガース日本一の感動で、急遽投稿した記事です。今後、追記修正する可能性があります。

参考文献
阪神タイガース公式サイト
2023年シーズンのチームスローガン『A.R.E.(えーあーるいー)』
https://m.hanshintigers.jp/data/info/
(2023年11月6日確認)

『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(中公文庫、1991)

関連記事
01_TRPGの楽しさABC
37_ゲームの定義
33_プレイヤー評価と経験値
40_GM力量マップ(α ver. 1.00)
54_上手いTRPGプレイヤーの秘伝