見出し画像

87_GMなんてこわくない

GMが準備するシナリオは「レポート用紙1枚」でいい。『RPGなんてこわくない!』第7話「ダンジョンがいっぱい モンスターがいっぱい」で山本弘先生が語られた内容です。もちろん『ソード・ワールドRPG』シナリオ集など商業作品は別扱いと断っています。市販シナリオは、初めてシナリオを読んだGMが初心者プレイヤー相手にマスタリングすることを配慮して作られています。言い換えると、GM=シナリオ作者という身内卓セッションと、GMがシナリオ作者でない場合とを切り分けています。しかし、TRPG普及に多大な貢献をした山本弘先生も最初は違っていたと自身の経験を語っていました。

「その自己満足こそ初心者のGMがおちいりやすい罠なんだ」
「自分が美しいと信じるストーリーをプレイヤーに押しつけ自由な行動を許さない」
「プレイヤーはGMの定めた一本の道に沿って進むだけ」
「GMはそれで満足かもしれないが あやつり人形にされるプレイヤーたちはつまらないよ」
「ボク自身 昔はそうだったからねぇ」
「ストーリーがプレイヤー(=キャラクター)の行動によって左右されるのがテーブルトークのおもしろいところさ」

『RPGなんてこわくない!』P126より

GMが敷いたレールの上を走らされるだけ。プレイヤーはGMのコマであり、自由にロールプレイできない。初心者GMが勘違いしたシナリオに、私は何回も遭遇してきました。いや、もしかしたら今のTRPG界隈は、脚本通りに進める派閥が増えているのかもしれません。しかし私は、脚本通り演じたいのであればTRPG でなく演劇をやればいいのではないかと思っています。かつて私は、ファミコンやスーパーファミコンのRPGを何本も遊び込んで、決して枠の外にはみ出すことができないことを理解しました。だから、コンピュータゲームと異なるTRPGの最大の利点は、想定されたシナリオを超える自由度だと考えます。

シナリオ「レポート用紙1枚」を実感する機会が、たった一度だけありました。山本弘先生がコンベンション等でGMされたことが何回くらいあったか知りません。個人的感覚では、グループSNEコンベンションやJGC等でGMやっている姿を見かけたことはありません。私がゲームサークルあすたりすくに参加した頃は、山本弘先生とTRPGする機会はなく。数年後の2001年4月、「元気全開!!RPG」(『TRPGスーパーセッション大饗宴』に収録)のテストプレイがたった一度の機会でした。記憶が確かならば、山本弘先生はレポート用紙1枚どころか、シナリオを見ないでマスタリングしていました。プレイヤーの発想による行動アイデアに柔軟に対応してマスタリングされました。これがプロフェッショナルの仕事なんだと感動しました。

話は変わりますが、2022年に「GM力量マップ(α ver. 1.00)」を提示したときは大括りで「コミュニケーション」「ファシリテーション」をそれぞれひとつの力量としました。その後、プロのファシリテーターと交流する機会があったり、Webサイトや書籍を読んで知識を増やしました。主にビジネスパーソン向け解説ですが、TRPGなどコミュニケーション主体のアナログゲームを遊ぶ私たちにも参考になります。

コミュニケーション能力認定協会は「コミュニケーション能力とは」で基本4要素をあげています。

コミュニケーションの基本4要素
・聴く力
・説明する(伝える)力
・質問する力
・チームでの協調性

コミュニケーション能力認定協会より

「聴く力」が「説明する力」より先に説明されていることが興味深い点です。これらの「コミュニケーション能力」はプレイヤー、GMともに必要です。一方で、ファシリテーション能力はGMスキルです。一説には、ファシリテーションには様々な流派があるそうです。演劇人などは身体的表現を伴うファシリテーション、コミュニケーションを得意としています。いまのところ、TRPGユーザに参考にできる文献は『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』と考えています。

ファシリテーターのコアスキル
(1)説明力
(2)場の観察力
(3)即興力
(4)情報編集力
(5)リフレーミング力
(6)場のホールド力

『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』より

ファシリテーション能力をさらに考察することは別の機会にできればと考えます。この記事は山本弘先生追悼記事の一環として、ただ1回の経験と原作漫画からGM側面を振り返りました。

参考文献
山本弘. こいでたく. 2000『RPGなんてこわくない!』ゲーム・フィールドコミックス
安斎 勇樹. 塩瀬 隆之. 2020『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』 学芸出版社

コミュニケーション能力認定協会
https://www.ca-japan.org/

40_GM力量マップ(α ver. 1.00)
https://note.com/niji_kreuz7/n/n0632382007cf