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人生でいちばん美しいピアスがあった

子供の頃、月曜日が好きだった。
朝が苦手なので、学校に行くためにきちんと早起きするのはしんどかったのだけれど
月曜日は休みの間に洗濯が全部済んでいるから、
いちばん綺麗な体操着で、新しめで綺麗なタオルをカバンに詰めて、靴下もぱんつも、とにかくありとあらゆるすべてのものが手持ちの中のいちばん気に入っているもの、一軍Sクラスだけで構成される日。
それが月曜日だった。


物心ついた時には、「新しい物好き」と親によく呆れられたものだ。
わたしと対照的な兄が、ボロボロになってもいつまでも同じ物を身に付けているのに対して
わたしはちょっと傷がついたからとか、新学期になるからとか、何かにつけては新しい物をねだっていた。
新品の物の、あの完全体がたまらなく魅力的なのだ。
どこにも傷も汚れも使用跡もない、いま自分がいちばんいいと思うデザイン。これ以上ないくらい整ったその状態こそ至高。
そういえば同じ理由で、持ち物に自分で名前を書くのが苦手だった。自分の字では癖や歪みが気になるのだ。せっかく新品で美しいのに、と思って、学年が上がってからも何度か字の丁寧な母に記名を頼んだ覚えがある。


そんなわたしが、19の時に出会ったピアスがある。
shihara、3Dピアス。
一般的なピアスの様に構造上必要で装飾には無関係のキャッチが、このピアスにはない。正方形の一辺が開く構造で、それをホールに通して辺を戻せば、必要な構成物のみで完結する。

そりゃあもう、ばか美しい。


買うかどうかも散々悩んで、トライアングルと立方体のデザインで散々悩んで、結局立方体のいちばん小さいものを買った。
それがつけたくてホールを開けて、開けたその日その足でピアスを買いに行った。
その月、人生ではじめて手にしたバイト代で買った物だった。(今にして思えば、はじめて手にしたお金をそんなに急にどかんと使うべきではないような気もする。無知と勢いの強さを感じる。)


あれから5年。
まいにち一緒にいて、まいにちまいにち好きだったそのピアスを、旅先で失くしました。
気が付いたらホールから抜け落ちていて、どうしても見つけられなかった。
正直いくらでもどこにでもある有名どころのピアスなのだけれど
はじめてのバイト代で買って、はじめてあけたホールに通して、5年の間 常に愛でていたあれは
まいにちまいにち、それ以上ないくらい完璧に美しかったあのピアスは、もう2度と手に入らない。

shiharaがついてるピアスホールだけは、いつでも月曜日の朝、完璧に整ったそれと同等だった。5年もそうであってくれたのは、もはや奇跡だなと思う。
ありがとう大好きでした、
間違いなく、人生でいちばん美しいピアスです。


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