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アートにもデザインにも興味がない美大生

うっかり現役で四年制美術大学に滑り込んでしまってから今日まで、ずっと思っていたことがある。

「あれっ、自分、そういえばアートもデザインも初見プレイじゃん?」

ってこと。


実はわたし、高校2年生で美大受験を決意するまで、学校の授業以外で絵を描いたことがほとんどなかった。
幼少期のうちはそれなりに、遊びの手段のひとつとして絵を描いたり工作をしたりしていたけれど、たぶん人並みだったと思う。美術部に入ったりもしなかったし、得意教科や好きな教科を訊かれて「美術です」と言ったためしがない。


どちらかと言うと、読書が好きな子供だった。
映画も好きだったけど、映画館は遠いし、DVDはテレビを占領してしまうから(という理由なのかは分からないけど)、滅多に観る機会がなかった。
その代わり、本は手に負えないほど与えられていたと思う。
今でも母は言うが、子供の頃わたしたち兄妹の遊び場所は図書館だった。土日になるとよく、あちらの図書館こちらの図書館と出向いた記憶がある。
両親は仕事の忙しいひとたちだったので、大学生になるまでテーマパークにも水族館にも動物園にもろくに行ったことがなかったけれど、図書館だけは誰よりも行ったのではないだろうか。

小学3年生の時、担任の方針で「毎日必ず本を読みましょう」という取り組みがあった。1ページでも、1行でも構わないのでとにかく本を読み、表に記録するというものだった。もともと本を読むのは好きだったので、表に書く分を…と読み出してしまえばもう止まらなかった。母も母で、職場近くの図書館で数日に一度山のように本を借りてきて一緒にそれを読みふけった。

読んでいた本は大抵が児童書。
たまにハリーポッターなんかの長編小説も読むんだけど、あれはなかなか時間と体力がいる。バムとケロとか、絵本も好きだった。
これ、一冊読むのにどれくらい時間がかかるんだろう?
いちにち平均一冊は読んでいたはずだから、この年の読書量は300冊を超えていた。

そんな生活を送っていた甲斐あってか、現代文だけは本当に得意だった。得意教科はと訊かれて迷わず答えていたのは美術の代わりに現代文。
これは自慢だけど、高校の時解いたセンター過去問の過去10年分くらい、ほとんど満点しか取ってないと思う。古典も漢文もまるでダメだから、結局のところぼちぼちの点数になってしまうんだけど。ていうか、センター国語の題材って、毎年すごく、クセが強いよね……。


嫌だ嫌だと思いながらも学生のうちは勉強するもんだと思っていたから、高校2年生で美術大学を目指すまで、国語力を土台に一般大の文系学科に入るつもりでいた。
というか単純にその発想しかなくて、大人になっていくというのがそういうことなんだと思っていた。

きっかけがなんだったのかはもう忘れたけど、高校生のある日、別に大学って美大でもいいんじゃーんという日が訪れた。

塾の先生に

「なんか自分、このまま勉強をやりたいわけじゃないかなって思ったので、やめま〜す☆」

と言いに行ったのが懐かしい。
確かにその時、大学に入って何か文系学科の研究や調査がしたかったわけではないからある意味正しいのだけど
勉強をすることも四年制大学を卒業することもある種の手段なのだから、その時のやりたいやりたくないでぽーんとやめたことに関しては、まぁまぁあんぽんたんかなとも思う。

そうして半分勢いで

「0から生み出したもので何かを表現したり発信したりするひとカッコいい〜〜なる〜〜」

って言って美大生になった。
高校2年生で急に目指したから、慌てて受験ノウハウを詰め込んだ。大学に入るまで、ゴリゴリの受験対策でしか美術に触れたことがなかったのだ。もはやあれは美術でも何でもないのだけど。


で、話を戻すと
読書に夢中でとりあえず学校の宿題をこなして、憧れで美大を受験しただけのわたしには、とことんアートもデザインも無縁の存在だった。
表現とか制作の土台としての、美術的なアプローチがすっからかんなのだ。
大学の授業で「まぁこれくらいは聞いたこと見たことあるだろうけど、」って前置きされることの8割くらいが、見栄を張って答えて「あ、まぁ、コトバの響きだけ、なんとなくぅ?」って感じで、興味があって知っているというよりは一般常識的に有名だから耳を通り過ぎたことくらいはあるかなぁ、なんてものだ。
無知もいいとこ!
未だにスーパーフラット?なんてなんて??って感じだし、著名なデザイナーの名前も代表作もなーんにも知らない。美術館とか展覧会も美大生のわりにあんまり行ったことがない。
美大生、モノを作る人間として、学んで土台を養うべきというのは重々承知しているのだけれど、「触れ方がピンとこない、おもんないから後回し」というのが正直なところで、逃げ回ってちゃんと学ばぬまま、わりととんでもないところまで来てしまったなぁうふふ、と思っている。


でも、フェルメールは好き。

そんなわたしだけど、フェルメールだけは高校生の時から大好きだ。
中学の時はマグリットが好きだった。

青色が好きなのだ。
ちなみに青色好きを公言しだしたのもその頃読んだ小説の影響で、めちゃくちゃ美形の登場人物(絵を描く)が青色にこだわりがある設定で

「えっなにそれエモーい、ずるーい、おしゃん〜〜真似する〜〜」

ってところから入っている。
実際に青が好き、というよりは、青色が好きという自分の設定カッコよくね?というなんとも頭の悪そうな不純な入りである。


でもまぁ確かに、相当魅力的な色ではある。
入りはともかく今では本当に好きな色だ。

キリストの宗教画をはじめとして、青は、歴史的にも様々な意味を込めて使われてきた。
地球上には「青く見える」ものは多くても「実際に青い」ものはとても少ない。それ故に顔料も高価だし、存在そのものが稀有なものとして扱われてきたのだろう。そういうものには、ストーリーが乗りやすい。

フェルメール作品に使われる「フェルメールブルー」も有名なストーリー性を孕む‘青’のひとつだ。

ラピスラズリという鉱物を砕いて、不純物を取り除いて、ごくごく僅かに採取される青い天然顔料。
地球上には「実際に青い」ものは本当に少ないから、この青い天然顔料というのはとてもとても貴重なものだ。
当時金よりも貴重と言われ、通常の青の100倍の値が付いていたそうだ。原産国も限られていたこの青は、海を越えてヨーロッパに辿り着き「ウルトラマリンブルー」と呼ばれた。

……エモすぎん?

いや、控えめに言ってエモすぎ。
もう全部のくだりがエモい。ストーリーだけで愛せる。
フェルメールが好きな理由は他にもあるけど、総じて帰着するのはたぶん「めっちゃエモいそれ」ってところだと思う。


アートもデザインもよく知らないから興味がない美大生。
適当に勉強していこ、と思ってはいるけど
とりあえず、わたしは、とにもかくにもエモい仕事がしたいです。

機能性がとか、様式美がとか、時代の流れがとか、知らん知らん知らん!

「なにそれめっちゃエモいやん最高……」って膝から崩れ落ちちゃうくらいの
その感覚の詰め込みたいなモノづくりがしたい。
制作を通して社会と関わろうとする真面目な美大生になんかなってやんねーからな!社会も他人も変えられなくたって全然いいもんね!わたしと作品がエモけりゃなんでも良き良き!


あ〜〜〜〜〜
誰かデザイン史でも教えてくんないかなぁ

#美大生 #アート #デザイン #エモい

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