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都市部⇒地方の移住で気をつけたいこと

2020年以降、わたしたちの暮らしは大きく変容しました。
2020年以前と比べると、わたし自身の生活態度が明らかに人ごみを避ける様になりましたし、従前では考えられないほどに感染症対策をすることを意識するようになりました。

それに伴いテレワークやリモートワークなどが本格的に導入される企業や試験的に導入を試みる企業が増えたこともあり、労働環境の点からみても大きな転換点となったようにも思えます。

それまで「地方都市から東京」といった人材の流通経路における鉄板だったものが、2022年01月28日に総務省から出された住民基本台帳によると東京23区からの転出超過が起こっている事実が確認されました。

住民基本台帳人口移動報告 2021年(令和3年)結果|総務省

中心となっているのは都市郊外への転出が増えていることから地方への回帰が大きな流行となっているのかというとそうではありませんが、少なくとも2020年以前と比較しても地方都市へ移住検討の素地自体が出来上がってきているようにも思えます。

実際、各種メディアでは「コロナ移住」と呼称し、都市部の密集した暮らしから人口の少ない地方都市へ移住することを取り扱う機会も増えており、お試し移住などで実際に訪問を繰り返す移住検討層の動きがより活発になってきています。

ただ、お試しであろうが長期的な移住であろうが、その地域に住む人たちがいることには変わりはありません。その土地ごとに文化や風習があり、それを県外や都市部から急に訪問してきたからといって我が物顔で振る舞う人たちに向けた冷たい指摘も増えているようです。

今回は、移住などを検討する人に向けて「こんな点を注意しましょう」と移住をスムースに進めるための方法について記載していきたいと思います。

法律は同じでも文化や風習は異なる

日本という国の中で住む地域を変えるのであれば、国が定める憲法や法律といった大枠は変わりませんから、基本的な人権や人格が脅かされるような根本的な認識の違いは生まれづらいといえます。

しかし、北は北海道、西は沖縄まで物理的な距離でみても(双方の県庁・道庁所在地を結んだ距離が)2,246kmだとされていますので、言葉も変われば名産と呼ばれるものが土地ごとに変わるほど、いろいろな方言や習慣があるものです。

つまり、地方から東京のような都市部に集まってきている人たちは、都市部としての生活を前提にするため、同一の価値観や文化のようなものを共通して持っている(もしくは持っていたとしても持ち寄らない)ため、軋轢が生じることはありませんが、地方都市では地方都市の数だけ文化や風習といったローカルルールが存在します。

ゴミ出しのルールといった公共マナー的な範疇から、隣近所の人たちとの付き合い方など、都市部では希薄だったように思えていて、その環境に慣れていたとしても地方都市では当然のように乗り越えて来ては干渉とまではいわずとも、物理的な距離が近いと感じられるような習慣があるかもしれません。

日本にある自治体1,718市町村のうち(東京23区を除く)半数以上となる885市町村が過疎地域として指定されていることから、地方都市では人口を増やす可能性があるものなら喜んで受け入れたいところですが、移住は観光とは異なります。

各地域ごとにある風習や文化などをきちんと理解した上で、その地域に馴染むように「努力すること」が求められます。それは移住を希望する人たちだけでなく受け入れる地域住民の方々でも同様ですが、移住するからといって何もかもが許されるなんてことはないのです。

“移住者”である以上、優遇されることはない

移住者とは、それまでに住んでいたわけでもない部外者だといえます。
もちろん、移住してきてもらえる自治体としては人口が増えることは嬉しいことですし、それによって街が活気づいていってくれることを期待しているでしょう。

ただ、上記した通り移住は観光ではありません。
街に住む一員となって生活をしていく当事者となるのですから、何もかもを優遇されることを期待したり、移住するかどうかを逆手取って上から目線で接するようなことがあってはならないのです。

観光であればお客さんとして一時的にお金を落とすだけの存在ですが、移住者となれば話が変わってきます。その土地に住み、暮らすわけですから共同体である町の一員となる以上、与えられることだけに満足していては相手にされなくなってしまうかもしれません。

都市部ではビジネスライクに契約などで物事を進めたり、唐突なビジネス的なやりとりが発生していたかもしれませんが、すべての都市でそうであるとは限りませんし、それまでのやり方では仲間として振る舞ってくれる人が少ない、もしくはまったくいないかもしれません。

ウェットな関係を築くことが何にも増してすばらしいことなのだと述べるつもりはありませんが、少なくともドライな関係だけを期待して移住してしまうと、文化の面からも人間気質的な面からも大きなギャップを感じてしまいかねませんので注意しましょう。

自分の経験や知識を振りかざすだけにならない

就労面でも気にすることは少なくありません。都市部の会社でかなりの成果を出し活躍してきた人だったとしても、地方では思ったよりも活躍ができないなんてことも耳にします。

都市部では分業的に自身のやるべきことが明確にされてきたかもしれませんが、地方では人材の確保が容易ではないことや、収益的に分業するほどに潤沢な資金を保有していないことから一人でこなす範囲が広くなるケースがあります。

たとえば、「営業職」という職種においても都市部ではどんなお客さんのもとへ出向くかまでを別のセクションが担当し、自身はお客さん先まで出向いて提案(内容がよければ受注)するだけ。
受注した後にも別の人にバトンを渡すだけでいい、なんてことを地方の中小企業ではすべてこなさなければならなかったりします。

"注力できる部分が異なる"といえばいいでしょうか。
都市部では果たすべき事柄にのみ注力すればよかったものが、それ以外の面にまで目を気を配りつつ、確実に進捗を管理することまで求められる、なんてことも十分にあり得るのです。

そこで「以前まではこうだった」や「こういうやり方をしてきたんだから、それに合わせて欲しい」などという自身に最適化することを希望するような姿勢や態度をとってしまうと、隣近所との交流トラブル同様で会社内での関係を築くことにもつまづいてしまいかねません。

せっかく期待された中で就労したにも関わらず、それほど期待されたような働きを見せることもできないままに転職をしなければならない...なんて失敗談も移住にはつきもののようです。


移住は決して容易なものではありません。

家族がいるのなら、自分以外の家族にとっても環境が変わる大きな機会となります。住もうと思った地域に貢献できることが仕事だけなのであれば、それこそテレワークやリモートワークで請け負えるものだけ請け負っていればいいのかもしれません。

地場に根付いた生活や習慣、文化、何よりも地域の人たちから認められたいのだとしたら、それまでに経験や知識を振りかざすでもなく、自分自身が生活や文化、習慣を受け入れることも同時に行っていかなければなりません。

決して簡単なことではないでしょうが、そこにこそ地方への移住の醍醐味があるのだと、わたしは思います。

これから移住を検討されているみなさんも、上記してきたようなことを踏まえて移住について考えていただき、実際に各地方へ訪問されてみてください。


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