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最近読んだ本の感想

というわけで最近読んだ本について色々。

「150年前の科学誌『NATURE』には何が書かれていたのか」瀧澤美奈子

5年くらい前の本だっけ。気になって買えなかったんだけど某書店さんで確保したノンフィクション本。これは期待通りの面白さだった。私はさして「NATURE」好きじゃないんですけどね。
内容は表題の通りで、日本だと文明開花より前の時代の科学誌の中身を紹介するもの。雑誌であると同時に投書欄を使ったコミュニティでもあった同誌のやり取りがめちゃくちゃ楽しい。アマチュア研究家から教科書に出てくる有名人まで色んな人が出てきて議論する様子だけでも読んでいて面白い。それだけじゃなくて、同誌から当時の科学に対する英国というか欧米社会のスタンスを紹介しているのも興味深かったです。何より作者の誠実な科学ひいてはアカデミズムに対するスタンスに好感が持てました。一方で、日本ネタは個人的には蛇足に感じました。なんかテーマと乖離してるし、せっかくの主題がぼやけてしまうような…。まあ、セールス的に必要なのかもしれないですけど。幅広い層に読んでもらうにはいるんでしょうねえ。
そういうのもあって、中学生や高校生にも読んで欲しいです。ニュートンもパスツールも教科書に載ってない側面が色々紹介されている。議論のプロセスを読んでるだけでも楽しい。自分がその頃に読めたら、もっと科学に興味を持てたんじゃないかと思いました。

「燃える氷華」斎堂琴湖

KDPで交流のあったミステリー書きの斎堂さんの商業デビュー作。第27回日本ミステリー文学大賞新人賞の受賞作品とのこと。斎堂さんにこうして脚光が当たるのは当然というか、元々、アマチュアとしては抜群に上手い人だったし、むしろ「今更か」と思うくらい。本作もいつもの斎堂作品、と思いきやまた微妙に違うんですよね。いつもの軽くてハンサムだけどちょっと独特の苦味がある文章は健在だし、キャラクターの造形がものすごく斎堂さんらしいと思う一方、物語の構成が以前より直球勝負になった気がする。ゆらゆら絶妙な変化球を内外に出し入れするような感じが薄れて、アウトローギリギリに150キロを3球続けて放ってくる感じ。3球目をやっとこさファールで凌いだら、最後にど真ん中のスローカーブで見逃し三振みたいな。良い意味でシステマティックで洗練された感じがしますね。テンポが良くて一気にやられる。
ミステリなんでストーリーには触れませんが、カットバックのヒントが大きいこともあって割と早い段階で大筋が掴めて、最後はどういう筋立てで結末に持っていくんだろうか、と思っちゃいました。
あと受賞時のタイトル「警察官の君へ」の方が作品的にも合ってるし、斎堂さんっぽいなあ、と思ったんですが、率直に今のタイトルの方が売れそうですよね。編集者の仕事でしょうか?ミステリ好きの嗜好をよく掴んでいるなあ、と。それにキャラクターの設定や年齢的にむっちゃドラマ化とかありそう。なんか絵が浮かぶ。
大きい賞でデビューしたのでチャンスもいっぱいあるでしょうし、本作も含めてどんどんヒットを連発していって欲しいです。私は下界から活躍を見守る感じでひっそり頑張って生きていく所存であります。

他にも色々読んだんですけど、印象に残ってるのはこの2冊かなあ。

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