#59 - 日記/中塚(Ba.) Vol.3
最終回。過去のものはこちらから。
2022年 8月14日(日) 中塚の日記
久しぶりに家でゆっくりして夕方から西田君の家でパーティー。
みんなではしゃいで楽しかった。ほんとあっという間の一週間。けれど濃厚な時間を過ごせている。一日一日大切に出来てる。もうそれを続けるしかない。後悔のない毎日を続ける。
2022年 8月14日の日記へ
中塚さん
前の記事から、随分と時間が経ってしまいました。毎度のことながら、申し訳ありません。 武蔵くんが他の記事で書いてくれていますが、携わっていた映画撮影が終わり、それで仕事に追われていたら、もう夏になってしまいました。本当に遅くなってしまいました。
梅雨に入ったと思っていたら、ずいぶんとフライング気味に暑さが来て…、今年一番暑い時期に入ったと、今朝、ニュースキャスターが言っていました。
騙されたみたいな気持ちです。
この8月14日の夏の夕方のパーティの日記は、僕がいちばん、好きだと思った日記です。
だから、この企画を始めた時、僕はこれをゴールに見据えていました。
夕方のパーティの疾走感と、窓から流れてくるぬるい空気が半袖をかすめていく感じが待ち遠しかった。
あの頃は寒かったけれど、もうその夏のただ中にいることが信じられない気持ちです。
この、日記で僕が感じる、一つの気持ちは「僕はまだ若いんだ!」という気持ちです。それは夏の気持ちです。
夕暮れあとの明るい夜、というか。
長いまま、まだ落ちない太陽があって、昼が夜に大幅にはみ出しているみたいな、そういう不思議な時間が夏にはあると思うのですが、
僕は毎年そういう時間、時刻に、路地とか駅のホームとか、商店街のパチンコ屋の前なんかで、ひとりでふと「俺はまだ若いぞ!」「まだまだ、長く続くぞ!」と、ゾゾゾっと、ガッツポーズめいた気持ちになりました、昔から。
来るはずの夜が来ていない。明るいのに、だけど夜。そういう矛盾めいた昼夜の重なりに、たぶん、自分の体の中の、時間とか老いとか、そういうものに対する歯車が狂って、身ひとつそこに浮き出るみたいな。見えない魔物みたいな時間のことを、この日記を読むと思い出します。
僕は今年、27歳なので、まだ老いてもいないけど、そこまで気合を入れて、若いぞ!って胸を張れる歳かも微妙なところですが、その感じは今年も来るだろうか。いつまで感じるのだろうか、そういうことを考えます。それが、僕にとっての、この季節の感じです。
喋り過ぎてしまいましたが、中塚くんの夏のことを教えてください。
原風景でも、忘れられないモーメントでも、夏のお気に入りの過ごし方でも。好きなアイスでも。
最後になりますが、今回は、こちらでお願いします。
暑いので、お体には気をつけてください。
エアコンで声が出なくなる病が、じわじわと流行っているらしいです。
新居
新居さん
お久しぶりです、もう言っている間に夏も終わっていくのでしょうね。
実は今年の梅雨の時期は二週間ベトナムに行っていたので、帰国した時にはもう夏になっていました。ベトナムはその時期雨季で、晴天とスコールが繰り返されていました。観光客向けのサイトでは、雨季は過ごしにくいので避けるべきだと書かれていましたが、僕にとってはとても心地よいものでした。
そこでは、ホーチミン→カントー→チャウドック→プノンペンというベトナムの南の街を辿り、カンボジアへ行くバスの旅をしました。沢木耕太郎の『深夜特急』の中で、主人公は頑なにバスでユーラシア大陸を横断しますが、確かにバスで移動することによってその土地の距離感というものを体で感じることができ、こうやって世界中どこでもいけるのだとささやかな自信になりました。
夏のこと。そうですね、なんだかんだ大学に入ってからも夏に一度帰省するというのは定番の過ごし方になっていますね。今年も地元のキャンプ場に中学生からの同級生と行きました。そのキャンプ場へ高校生の頃から何度か行っているのですが、初めて行った時は駅から30分以上かかる道のりをダラダラ歩いていっていました。けれども、今は車でいくようになり時の流れを感じました。
そんなふうに友達と過ごしたり、一人でよく通ったマクドナルドに行ったり、家でテレビを見ていたりするといつも、もうそろそろ東京に戻るタイミングだなという時がいつもやってきます。
地元では時間の流れがゆっくりしていますが、東京に戻ってくると何もかもがあっという間に過ぎ去っていきます。そんな東京の忙しなさは僕は好きではありません。けれども東京に来たことを後悔していません。むしろ感謝しているくらいです。それはきっと、そんなあっという間の中に忘れられない時間がいくつも存在するからだと思います。この日もそんな日だったような。
今、Strip Jointは次のアルバムの制作を行っています。皆忙しない日々を送っているようで、日々試行錯誤の連続です。けれど、この新しい取り組みが新たなきっかけになれば嬉しいです。また色々なお話をしましょう。
中塚啓
終わり。
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