見出し画像

航空DXとVRの利用事例

こんにちは。日本XRセンター代表の小林大河です。今回は航空DXとVRの活用事例をまとめました。

航空業界は旅客機の需要増加と人材不足の解決策としてDXを進めています。国土交通省は航空機運航のDX推進に向けた検討会を設置し、国を挙げてこれらの問題に取り組んでいます。

背景をまとめると、

  • 羽田、成田の発着数増加、成田拡張工事

https://www.aero.jaxa.jp/news/event/pdf/event231129/chainx2023_01.pdf
  • 働き方改革、残業削減

  • グラハンの統一化、外部企業の参入

  • 事故の対応/安全基準の強化

  • 貨物便、LCCなど業務の変化

旅客機の需要は増え続けている
  • 地方空港の管理維持

  • コロナを契機とするの熟練者の引退

そのため、DXの範囲は、

  • 運航クルーのスケジューリングから荷物管理、機材メンテナンスのオペレーション

  • データ記入などの業務プロセス

  • 決済や予約システム、チェックイン、手荷物の追跡など、顧客サイドの改善

など、多岐にわたります。それらが進む中で、VRが活用されている事例をリストアップしました。

パイロットトレーニング

ルフトハンザ航空
緊急事態やイレギュラーな飛行操作を体験し、プレッシャーを感じながら技術を磨けるよう設計されています。

ルフトハンザのフライトシミュレーション

VRMスイス
初のEASA(欧州航空安全機関)認定VRフライトシミュレーターを開発。このシミュレーターは、パイロットがVRで実際の飛行訓練と同様の経験ができるように設計され高い評価を受けています。

VRMスイスのフライトシミュレーター

当社でもヘリコプター操縦用のプロダクトをハードウェアメーカーと共同で開発しました。

グランドハンドリングトレーニング

KLM、DHL、ルフトハンザ航空、Swissport、アシアナ航空、ユナイテッド航空

  • ボーディングブリッジ接着

  • プッシュバック

  • マーシャリング

  • FODの除去

  • 貨物ドアの開閉作業

空港内の運転トレーニング

チャンギ空港(シンガポール)

滑走路を安全に運転する方法を学ぶ 
https://www.viziofly.com/id/showcase/changi-airport-group-airside-simulation-training-vr/

空港という特殊な状況において、未経験者が運転をすることは非常に危険です。訓練生が覚えた知識を実際の道路で使えることを確認するため、テストではすべての危険と障害物が存在する滑走路での運転を再現しています。

整備士トレーニング

FL Technics社(米国)

FL Technicsは、航空機の保守、修理、MROサービスを提供するグローバル企業です。彼らはトレーニングを強化し、時間を短縮したいと考えていました。規則では各訓練生が一定の月数を訓練に費やすことが義務付けられていますが、訓練生は空きがないために特定の航空機で練習できないことがありました。また、イレギュラーなケースは経験できず十分な実務経験を積むことができていませんでした
また、整備士のスキルを常に新鮮に保つという課題もあります。

「ある飛行機が入ってきて、エンジンに非常に特殊な欠陥があったとする。整備士が2年前にその訓練を受けたとしたら、この飛行機の欠陥の修理方法を覚えている可能性はあるのだろうか?VRを追求する理由は、VRが新人に追加の練習を与えることで、義務化されたトレーニングをより早く終わらせることができ、また、すでに勤務している整備士にとっては復習の役割を果たす」

https://www.unrealengine.com/ja/spotlights/beyond-the-manual-vr-training-on-aircraft-maintenance

と担当者は言います。VRにより、整備士に義務付けられている3ヶ月の訓練期間が3週間に短縮されることを目標にしています。

Baltic Ground Services社(リトアニア)

VRだからこそ未経験が失敗する環境を作れる

空港の地上サービスを提供するBaltic Ground Services社は、除氷訓練をVRで実現しました。除氷作業では、片腕でホイストを持ち上げながら、もう片腕で航空機に薬品を噴霧します。この手順は離陸間近の航空機で行われることが多く、正確さとスピードの両方が重要な要素となります。経験が浅いと、噴霧装置の取り扱い、液体の噴霧量、安全手順など間違えます。実際の飛行機で間違えた場合の損失は大きく、液体は1回約2,500米ドル(約40万円)、さらに航空機を破壊する可能性もあります。
このVRトレーニングでは、悪天候、散布機の位置の間違い、トラックが散布ゾーンに誤って進入してくるなどのイレギュラーな状況を追加しています。乗組員が実際に散布機を使用する頃には、さまざまなシナリオで問題を解決し、自信を持った状態で望めます。

生徒からの反応は圧倒的にポジティブです。

「初回のVRでは、ホイストのコントロールと翼への液体噴霧を同時に行うのが難しかったですが、最終的には慣れました。」
「実際のリフトカートに乗ったとき、私はすでに何をすべきかを知っていました。」

https://www.unrealengine.com/en-US/spotlights/beyond-the-manual-vr-training-on-aircraft-maintenance

インストラクターたちは、いつでも使える点が気に入っています。

「除氷トレーニングはシーズン開始のかなり前に行われるため、生徒たちは理論的な知識を忘れてしまい、練習に来たときに学び直す必要がありました」
「VRを使えば、理論を学んだ日のうちに実践的に知識を応用することができる。」
「VRトレーニングによって経験豊富なベテランの間での知識格差も明らかになった

https://www.unrealengine.com/en-US/spotlights/beyond-the-manual-vr-training-on-aircraft-maintenance


熟練者の技能継承

ボーイング(米国)
属人的なナレッジにおいてもVRの活用が進んでいます。例えば、貨物ドアの開閉です。これは50の工程があり、これを行える人間は社内で一握りしかいません。その人たちが病気だったり、休暇だったりすると、遅れが生じています。

米国空軍
2023年9月に、米国空軍がVRトレーニングの導入について$90m(150億円)の契約を締結したことが公表されました。
- 空軍ネットワーク上で動作するセキュリティ上の認可を与えることを決定
- 時代遅れの訓練を近代化するためのもの

- 2026年9月末までに開発が完了予定
これまで5年以上もVRの研究を続けてきており、その成果に確信を持って本契約に取り組んでいます。

英国空軍
ARグラスと連携した訓練用戦闘機を制作しました。訓練用戦闘機は実際のミサイルを搭載していませんが、ミサイルのトリガーを押すと、ARグラス上で発射される映像が流れたり、敵のミサイルが迫ってくる様子が映し出されます。

客室乗務員向けの海上緊急着陸

DHL、ルフトハンザ航空、Swissport、アシアナ航空、ユナイテッド航空

  1. 現実のトレーニングを超える: リアルな海上緊急着陸のシナリオをVRで再現することで、客室乗務員が実際の状況に迅速に適応できるようになる。

  2. ストレステスト: 緊急事態における客室乗務員のストレス耐性を向上させるため、リアルなシミュレーション環境でのトレーニングが有効。

  3. 訓練効率化: VRヘッドセットのみでシミュレーションを再現できるため、訓練効率が向上する。

日本の事例: ①JAL

マルチプレイVRを活用した客室乗務員訓練の実証実験

  • 最大で4名の訓練生が同時に訓練

  • 訓練全体の様子は、録画やライブで、インストラクターがモニター画面でチェック

  • 安全確保のため、お客さまへお声掛けをすると、テーブルを元に戻していただけるといったコミュニケーションが可能

  • 座席の上の手荷物収納棚や、ギャレーに設置された扉やカートを固定するラッチの確認など、忠実に再現された航空機内で、安全確認業務を繰り返し実施

https://press.jal.co.jp/ja/release/202009/005789.html

VRを活用した整備訓練トライアル
実際の飛行機が身近にない環境でも、VR空間で実際の整備作業に近い訓練機会を創出することで、整備作業の習熟度向上を目指しています。

https://press.jal.co.jp/ja/release/201907/005220.html

日本の事例:②ANA

約800人の新入客室乗務員を対象に、機内の安全性確保に向けた保安訓練にVRを開発しました。

  • 現実で再現困難な機内での緊急事態(火災、急減圧)や機内設備の安全確認作業

  • 万が一の緊急事態の発生時においても、これまで以上に迅速かつ適切に対処できる客室乗務員の養成が可能

https://players.brightcove.net/4598493582001/VkljVUbZtx_default/index.html?videoId=6015164651001

整備士の安全体感教育

  • 危険予知能力向上を目的とした訓練

  • 航空機整備の環境や過去の労働災害事例を踏まえたコンテンツ

  • 整備士が実作業において、転倒や転落などから自身の身を守る助けとなる

VRが優れている理由まとめ

  1. 訓練の標準化と効率化
    VRトレーニングは、実際の航空機やシミュレーターを使用することなく、パイロットや整備士の訓練を可能にします。これにより、高価なリソースや機材の使用にかかるコストを大幅に削減できます。また、VRは再現性が高く、一貫した訓練が可能であるため、訓練プロセスの標準化も実現します。

  2. 安全性の向上
    リスクを伴わずに、緊急時の対応や困難な条件下での操作など、イレギュラーな訓練が可能です。これにより、実戦における様々なシナリオを経験し、対応能力を向上させることができます。

  3. アクセスと柔軟性
    地理的な制約を受けることなくどこからでもアクセス可能です。これにより、訓練が必要なスタッフが世界中のどこにいても、必要な訓練を受けることができ、スケジュールの柔軟性も向上します。

  4. 迅速な対応能力
    新しい航空機の型や新技術に対応するための訓練をVRで迅速に開発・提供することができ、業務への統合をスムーズに行うことが可能です。

  5. データ収集と分析 
    ユーザーのパフォーマンスデータを詳細に記録します。さらに、個々の訓練ニーズに合わせたカスタマイズや、より効果的な訓練方法への改善が可能となります。

これらの利点により、VRトレーニングは航空業界のDXに不可欠な要素となっています。

日本XRセンターのグラハンVR、フライトVR

私たちはベルトローダー、貨物ドアの開閉、プッシュバック(作業、運転)、ヘリコプターの操縦などのVRトレーニングを提供しています。

貨物ドア

  • コントロールパネルの操作、開閉時の指差し確認、各部の損傷確認等、複雑なステップを練習

  • トラッキング機能で、指差しと目視確認をテスト

  • 航空機の貨物ドアやハシゴのサイズ、位置、操作方法を現実に忠実に再現

  • ハプティックデバイス(Sense Glove)対応。コントローラーではなく、グローブ型デバイスを活用し、実際に物を掴んでいるような感覚を向上させます。

Sense Glove

プッシュバック

  • 周囲の航空機、地上の車両など詳細に再現

  • 気象条件、異なる空港、緊急時のシナリオなど、実際の飛行場の状況に対応可能

  • 操作が正確か即座にフィードバック

  • 運転側、ウォッチャー側など様々な視点からトレーニング可能

夜のシーンも再現

ベルトローダー運転

  • ベルトローダーの操作盤、操縦感覚、そして動きをリアルに再現

  • 機械の故障や突然の気象変化など、非常時のシナリオを再現して訓練を提供

  • 荷物の搬送、配列、時間管理などのスキル

  • 安全規程の徹底と事故防止のためのプロトコル

パイロット用操縦トレーニング(ハードウェア込み)

  • 独自制作した機体と連動

  • 天候、機体など複数の環境でトレーニングが可能

体験やデモにご興味のある方はぜひお問い合わせください。

航空業界向け資料ダウンロードはこちらから
https://shorturl.at/MNAot

2024年6月19日から21日まで東京ビッグサイトで開催される「ものづくりワールド - 航空・宇宙機器展」に出展します。

ぜひ会場で実際のトレーニング体験をお試しください。
詳細情報はこちらからご覧ください: 航空・宇宙機器展
デモ事前予約はこちらから https://shorturl.at/4BFvD

日本XRセンターについて

  • サンフランシスコ、インド、日本を拠点にVRコンテンツを開発(高いクオリティと圧倒的なコストパフォーマンス)

  • 日本を代表するVC、エンジェル投資家、金融機関より1.4億円の資金調達済み

  • 清水建設、大手スーパー、ホテルチェーン、大手医療機器メーカー、大手自動車教習所、著名テーマパークなど実績多数

  • CEO:小林大河

  • 本社: 150-0031 東京都渋谷区桜丘町16-13 桜丘フロントII 3F

  • Youtube: https://www.youtube.com/@vrarri

  • Website: https://www.vrarri.com/

  • お問い合わせ:thomas@vrarri.com


参考資料:
Boeing
Innovation_Quarterly_2022_Q3_081922a ja.pdf
Innovation_Quarterly_2022_Q3_081922a.pdf
Varjo Flight simulation https://varjo.com/company-news/varjo-and-vrm-switzerland-make-history-with-the-first-virtual-reality-simulator-officially-qualified-by-european-union-aviation-safety-agency-easa/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?