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コースターとファイト!スクショとクレカ

                            鶴田 知佳子

同時通訳者を悩ますカタカナ語
英語と日本語の通訳をするなかで、訳すのに迷うものの一つがカタカナ語である。特に同時通訳ではたちどまって考える時間的余裕がない。迷う単語、訳出が困難なのは難しい単語とは限らない。通訳者は音声を聞いて理解し内容を音声で表現して伝えるが、まずは音で聞いて単語が捉えられるか?形(文字)が頭に思い浮かぶか?そこが第一の関門だ。背景知識があれば単語をとらえる助けとなり訳出できる。例えば金融の専門用語arbitrage pricing theory(略称APT)は裁定価格理論、capital asset pricing model(略称CAPM読み方はキャップM)は資本資産評価モデルと定訳が使える。このように専門用語は自動的に訳出できて、訳に迷うことはない。しかし、カタカナ語には英語から日本語への訳出でも、日本語から英語への場合でも訳出を自動化できないことがある。

英語から日本語への訳出では例えばgas stationの訳出はガソリンスタンド、roller coasterとはジェットコースターのことだ。カタカナは実に便利で音をカタカナでとらえて書ければ日本語になる。もっとも、音のとり違えや正確に覚えない間違いはあり得る。ちなみに幼い頃の私の話だが、「トースターでやけどした」と言うところを「コースターでやけどした」と言い間違えていた。日本で育つ子はときに間違えながらもカタカナ語を自分の語彙として蓄積する。外国語として日本語を学ぶ場合カタカナ語はハードルが高いかもしれない。

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大学を出てすぐは銀行の調査部で働いた私にとって、銀行が舞台のドラマ「半沢直樹」は面白いが、その中で話題のセリフ「ファイトまんまんよ!」これは応援のかけ声としてはGo! Fight! と言えるが、目的に向かって闘志を燃やす人のことをいうならShe has a lot of driveだろうか。古い話だがアニメ「キン肉マン」の主題歌の最後は、♪キン肉マンGo! Fight! ♪まだ幼かった長男が口ずさんでいたのを思い出す。だがカタカナ語として使われるファイトはそのままfightに置き換え可能ではない。

カタカナ語と英語は別物
カタカナ語がわからないこともある。最近の例では「スクショ」と「クレカ」で「スクショ」はスクリーンショット、クレカはクレジットカードであると気づくまで少々時間を要した。そう、音とかたちと意味、この三つがそろわないと訳出は出来ない。すでにカタカナ語や略語は日本語の一部になり日々進化している。ことばの間の架け橋となるべく、通訳者は絶えずことばを追いかけている。つくづく思う。カタカナ語としてすでに定着したことばは、これは日本語だ。英語とは別物ときっちりと意識をわけてくれぐれも置き換え可能と思わないようにするべきだ。外国人の日本語学習者、日本人の英語学習者の両方にあてはまる。

                                                                          (2020年10月5日)

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