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第1回シンポジウム(3)

                             鶴田知佳子

本編では、引き続き<なぜ誤訳や「おかしな英語」が氾濫するのか>についてと、<どう改善したらよいのか>に関する議論の内容をご紹介致します。

<なぜ誤訳や「おかしな英語」が氾濫するのか>

異文化とマイノリティーへの理解

河野: かっこいいと思って、漢字のタトゥーを彫ったが、その字が間違っているのに気づいていない外国人は日本以外でも見受けられる。言語間の問題は、強い言語と弱い言語の関係にも表れる。(例えば、英語という強い言語に対する日本語という弱い言語) 強い言語に対する「憧れ」(憧憬)の念が表れる場合、この例のように知識が追いついていない場合がある。

阿多:有名な女性歌手、アリアナ・グランデのケースが良い例。日本びいきで知られる彼女だが、Seven Rings という歌を日本語で表記するつもりで、そのまま「七輪」としてしまった。日本人にも同様の無知と憧憬が見られる。

司会者:なんとなく、都合良くカタカナ語を使うという和製語の問題についてはどうか。

丸岡:おそらく日本では、マイノリティの立場に於かれている人への意識が低い。
ナイキジャパンの広告 (鶴田より注:アメリカではナイキジャパンのコマーシャルが話題に)についても批判の声のほうが賛同の声よりも多い。日本国内での情報発信について、目的が達成されていない。「上から目線」という批判がされている。

オーストラリアは移民が多く、多文化社会である。公共の掲示等に関しては10数カ国語(日本語は含まれていない)対応、プロよる翻訳が行われている。マイノリティを不利な立場に置いてはならない、という意識がある。日本語を使う環境に置き換えれば、日本語を母語としない人への配慮がある。

ルドルフ晴美:外国人向けのホームページに、Foreignerと書いてあるのは悲しい。異文化との接し方での習熟度では、日本はまだ追いついていない。

司会者:入出国のところでAlien Control と書かれていたのを覚えている。

阿多:そのような表記に配慮が必要。普通に日本で生活している日本人で(そのような視点で)考える人は殆どいない。自転車をなんとか乗りこなす、というのと同じレベルでそれが普通にならないといけないのでは。

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<どう改善したらよいのか>

司会者:自治体や公共機関による英語表記の精度を高めるためにはどうしたらよいと思いますか?

カップ:国際交流員を活用してはどうか。

鶴田:国際交流員という制度はあるが、実はあまり意見を言える立場にはない。制度を設けており、ニーズがあるという意識はあるようだが。

花村:翻訳ソフトを最新のものにしたらどうか。ロゼッタストーンからよく広告が来る。制度が高い翻訳ソフトはある。

阿多:性能はバラバラであるが、最近のエンジンは昔のものとだいぶ違う。自分はこの業界に入ってから日が浅いが、この業界の歴史が30年くらいある中で見ているとDeepLはかなり良いとは言え、完璧ではない。 予算の問題もある。

司会者:正しい表記の一覧を作成してはどうかという提案もある。

ルドルフElisa:そのとおり。共通の一覧表を共有するのは有効ではないか。ガイドラインを作って幅広く共有する。現状では、十分な予算が各機関にないので、共有できればリソースの有効活用である。


以上、たいへんに有意義な機会でした。ご参加頂いた皆様ありがとうございました。是非次につなげたいと「日本の英語を考える会」のメンバーは早くも次の企画を考えております。

                        (2020年12月12日)

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