モラルの話～生徒にどこまで注意するか

ギムナジウムのにほんごクラブは、明日が最終日。
最後はまたアニメを見ようねと約束していたので、先週から見るのをスタートするつもりだった。
１コマ９０分で、映画は大体それ以上かかるし、場面ごとに止めて、聞き取れた言葉を発表したり、理解できなかったところを補いあったりするので、どうしても２回に渡ってしまう。

私の家にあるアニメのDVDはジブリばかりで（あとTV版のNaruto）、ちょっと子どもっぽいかなと思うけど、できたら日本語音声で聞かせたい。
意味も分かるようにというと、ドイツ語字幕もほしいので、選択できるDVDがいいなと思っていた。

するとメンバーの一人が家に「君の名は」があるという。
そっちの方が世代的には合うだろうから、いいなと思ったけど、字幕が英語と中国しか選べないというので、当日みんなに相談して、一応持参するジブリと合わせて決めてもらおうということになった。

急な欠席になると困るので、前日に娘に渡してもらうと、おおよそ日本語で書いてあるのに、一部英語で声優名とかが書いてある。
英語版なら全部英語なのになあ。
不信感をいただきながら、よく見ると、DVDマークがあるのに、「このブルーレイディスクは・・・」という表記があって、え？！ブルーレイなの？？　ＰＣで再生できない！
さらに、「恋」が旧漢字になっている部分を発見！
それから、老眼にはつらい文字の大きさの変なとこを長女が見つけた。
「ここに『デイスプし』」って書いてある。
なんだ、それ！　ディスプレーって書きたかったのか？！

つまり、まあちょっと質の悪い海賊版だった。
英語と中国語字幕ってのも変だもんね？！

この仕事をしているとアニメやマンガなどの日本のサブカルが好きです！という人に多く出会う。
うれいしことだと思うけど、実際にはアニメ・マンガ業界はブラックの代名詞。
世界的に評価される作品に携わっているような人が、しっかり正当な賃金を受け取れるよういなるといいと思っている。

ところが、ただでさえ少ない賃金を脅かすのが、この手の海賊版だ。
人の作品を横取りして、それで儲けようなんて、本当にひどい話だと思う。
だから、普段から娘が何か欲しがっても、正規品じゃないと買っちゃダメと言っている。

さて、私は迷った。
クラブの取り組みに違法ＤＶＤを流していいものか・・・
それは私の主義にも反する。
でも、生徒たちは楽しみにしている。
しかも、所有者の生徒にそれを伝えるべきか。
周りは知るべきではないだろう。

生徒は父親が日本関連の仕事をしていて、家に日本のものが色々あると言っていた。
それらは本当にすべて正規品なのか。
かと言って、その生徒は責められるところにいないし、その父親だって正規品だと思って（もらって？　買って？？）いたのではないか。

見なかったことにするという方法もあるのかもしれない。
でも、目の前の犯罪を無視するのか。
しかし、その生徒（と父親）も被害者かもしれない。
それなら、なおのこと、次の被害が起きないように防ぐべきなのか。

悩みに悩んだ結果、他の生徒には何も言わずに、選択肢の１つとして挙げ、みるかどうかの結論は委ねた。
その結果、英語字幕で問題ないとみんないうので（すげー。ドイツの中学生、さすが！）、そのDVDを見ることになった。

しかし、その生徒には「これ、日本語がおかしいところあるから、正規品じゃないと思う」という私の意見は伝えた。
その上で、その生徒が父親に伝えるかどうかは、その子に任せることにした。

教員はどこまで責任を負うべきなんだろうか。
授業中に犯罪行為が行われていたら止める？
まあ、それは止めるとして、犯罪というほどのことではなかったら？
（今回のは犯罪なのか）
モラルという話になると、地域や民族、宗教、世代によって、かなり幅がある話になる。

授業外の時間に犯罪行為をしていると知ったら、どうするのか。
犯罪ほどでないけど、いい行いでなかったら、どうするのか。
所属機関（学校）に言いつけるべきなのか、自分とは関係ないと思うのか。
（ちなみにドイツでは「言いつける」のは、すごく卑劣な行為とされている！
もし、「先生～、〇〇くんが××してます」とか言おうもんなら、怒られるのは、〇〇くんじゃなくて、それを言った子だ！）

大人として、過ちをおかしている子がいれば注意すべきだろうとは思う。
（学生はみんな成人だけど・・・）
でも、食事禁止の教室で、「お弁当を食べられなかったので、今ちょっと食べていいですか」と聞かれたら？とか、汚さなければいいかなあと自分で判断できることだったら？

人と人が付き合っていく以上、必ずルールというものが生まれる。
互いに遵守すべきだと思うけど、どこまで人に守らせるべきかは、警察の仕事なのか・・・

正しかったのかどうか、自分でも今でも確信の持てない出来事だ。