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初等教育は日本、中・高等教育はドイツが優れている

子どもたちが幼稚園に入ったころ、なんでドイツの幼稚園はこんな適当なんだろう!!とびっくりすることの連続だった。
まずお知らせが不明確。
遠足のお知らせも、日時が書いてあるくらいで、持ち物は「適した服装、十分な食べ物」というくらい。
その食べ物はおやつなの? 食事なの? 雨は延期なの??と思っていた。

今もそう思うような知らせがないわけじゃないけど、これは私が慣れた。
日本の方が細かくてうるさいと思うようになった。
上着だろうが、運動靴だろうが、個人個人が判断すればいいことで、別に本人さえよければ遠足にサンダルで行ったって、雨でも何も持たなくったって構わない。
(ちなみにドイツ人に「雨天中止」とか「雨天決行」という概念はない)

そして幼稚園で「今日は何したの?」というと、「お絵かき」とか「工作」とかという返事が多くて、他には?と聞くと、特に何もしていない。
日本のように参観日があるわけじゃなく、希望すれば見学できる期間があったので、行ってみたときに、理由が分かった。
(普段の子どもたちたちが見たいなら、また邪魔したくないなら、こちらの方が優れた方法だと思う。)

まず登園時間はバラバラ。
親の都合で、7~9時に三々五々とやってくる。
3~6才の縦割りグループで、「朝の会」は9時ごろ、なんとなく円になって(でも、円から外れてる子も、寝転がってる子もいる)始まる。
歌を1、2曲歌うこともあるし、先生が「今日はアトリエで〇〇があります」とか「クリスマスクッキーを作りたい人は、このあとダイニング集合」などお知らせをすることもある。

そしたら、解散で、子どもたちは自分たちの好きなことをする。
外遊びが好きな子は1日外にいる(監督の先生の都合で、遅くなることもある)。
工作が好きな子は1日工作。
先生が好きな子は、先生の後ろをずっとくっついて歩く。
先生はそれぞれ、アトリエ、ホール、園庭などにいる。

小学校もさすがにドイツ語算数生活科は普通にやっていたけど、音楽は歌をちょろちょろ歌うだけ、体育はほとんど鬼ごっこだけ。

幼稚園、小学校は根っこを育てる時期なので、好きなことだけじゃなくて、他のことも体験した方がいいと思う。
意外と普段ならやらなかったことを好きになるかもしれない!
その点日本の教育はバランスがいい。

幼稚園では、工作、歌、外遊びとみんなそれぞれ取り組むし、小学校の音楽も歌も楽器も鑑賞もする。
音符も読めるようになる。
体育も球技も陸上も体操も、全てのジャンルに取り組む。

しかし、残念ながら日本の教育がいいのは、その初等教育までだと思う。
なぜならそのあとは詰め込み教育になってしまっているから。
これは受験スタイルの弊害だと思う。
詰め込んだ知識を問う問題の方が採点が楽だから。

受験がダメなんじゃない。
受験でも論述とか、口頭試問(英語とか数学とか何でも!)とかでするなら、知識だけでなく、プレゼンテーション能力や思考力をも問うことができる。
但し、一人1分というわけにはいかないので、膨大な時間が必要になってしまうだろう。

それに日本の教育のゴールは大体大学入学になってしまっている。
卒業じゃなく入学。
どこの大学に入ったかが大事。
だから、「〇〇大学中退」とかって書く人が出てくる。

でも、そもそも日本の大学の授業は浅いと思う。
先生たちも、大学生に分かるわけないって思っているのか、簡単なことしかしない。
だから4年間勉強しました、といっても大したレベルじゃない。
少なくとも私は学士を名乗れるほどの見識はないまま卒業した。

一方でドイツはゴールは卒業にある。(普通そうなんだけどね)
だから、9年生(義務教育(基幹学校)終了)で大きなテストがあり、評定平均のような数値が結果として出る。
10年生(実業学校終了)でも大きなテストがまたある。
もし、10年生の途中で学校を辞めれば、その人の学校教育の成績は、9年生で受けたときのものになる。

進学校に相当するギムナジウムでは、13年生(一部の学校で12年生)でアビトゥア(略称アビ)という大きな試験を受ける。
同じような仕組みは欧州各国にあって、フランスだとバカロレアというらしい。

このアビも評定平均のような数値(1.0~5.0)が出て、9、10年生の試験同様、その数値が大学進学や就職のときに使われる。
一生ついてまわる結果だ。
例えば、医学部に行きたいなら、数値は「1」じゃないと進学できない。
ちなみにアビは普通は1度しか受けないけど、希望して留年し、もう1度だけ受けられるらしい。
だから、日本みたいに二浪とかってことはありえない。

ちなみにこのアビは日本の大学の一般教養課程と同等レベルということになっているので、大学ではいきなり専門課程が始まる。
でも、本当に同じかというと、私は日本の大学生よりギムナジウムの高等課程の子の方が力があると思う。

アビは、口頭試験と記述試験があるが、日本の大学生が当日知らされるテーマで5時間かけて論文が書けるだろうか。
知識の上に考察力と文章力が必要とされる。

そこまでに5年生から9年間かけて積んでいくのだから、中等教育も優れていると言えるのではないか。
但し、アビでもある程度好きな科目を選んでいい。
体育も音楽もある!
確かドイツ語と数学は必須だけど。

大学には、そのアビの成績で入学の可否が決まる。
(学部によっては、それまでのボランティア活動などが加味されるところもあるらしい)
だから、受験はない。
すぐに大学に入らないでも、10年後にその成績で好きな学部に入ることができる。
「1」が必要なのは、医学部と法学部だけで、他はそこそこで入れる。

しかし、大学には簡単に入れるけど、卒業できる人は本当にがんばった人だ。
狭き門なのは、入学じゃなく卒業。
あまりに大変で9割が辞めたり、専攻を変えたりする学部もあるという。
そもそも大学だけが優れているわけじゃない。
10年生のあとに職業訓練を受けて、専門職になる人の仕事が貶められることはない。

私が指導しているにほんごクラブがあるギムナジウムでも、アビの論述試験があった。
体育館に机と椅子を並べて。
5時間もあるので、みんな食べ物飲み物を持ち込むらしい。
ハリーポッターで、こういう会場(食堂)でハリーたちが試験をしていると、双子のウィーズリーがほうきで乗り込んでいくシーンがあった。

アビシーズンは、家族が応援ポスターを作って学校に貼る。
最近は業者加工っぽいのが増えた!
以前はもっと手作りだったのに。
うちの子は、今から「自分の写真は絶対に使わないで!!」と言っている。

結局幼稚園のときから、ドイツはスペシャリストを、日本をゼネラリストを育てようとしている違いが出ているのじゃないかと思う。
日本は会社に入ってからも、色々な部署たらいまわしだ。

どちらにもメリット、デメリットはあるだろうけど、国際社会で勝者になるのは、スペシャリストの多い国ではないだろうか。
器用貧乏を10人集めるより、10人のスペシャリストの方がいい。




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