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バイデン大統領を喜ぶ日本の「意味不明」…

 米国の大統領選では、接戦の末、バイデンがトランプを破って勝利した。
まだトランプ自身は敗北を認めていないが、共和党主流派もトランプから逃げ出したようだし、法廷闘争に持ち込んでも、この結果が覆ることはないだろう。

 当然、大統領選をそれこそ日本の選挙以上に熱心に延々と報じて来た日本のメディアも、米国に「分断」をもたらしたとトランプをずっと叩き続け、バイデンを持ち上げてきただけに我が事のように大喜びで報じている。

 確かに気に入らないメディアや政敵に平気でデマをぶつけて罵倒し、差別的発言を乱発して、人種差別を煽るようなトランプは人として、政治家としてとんでもない輩かも知れない。
ただ、BLMの活動家が“オバマが大統領になっても何も変わらなかった。米国の人種差別は構造的だ”と言う通りで、トランプが米国に人種差別をもたらしたり、米国を分断した訳でもなく、彼は米国が抱えるそういう闇の部分を露呈させただけではないのだろうか。

 勿論、トランプはそんな米国の闇を放置した訳だし、私も米国民がそんなトランプではなくバイデンを選んだことを愚かだと思っている訳でも、批判している訳でもない。
もし私が米国民だったり、もし日本のリーダーを選ぶ選挙だとすれば、私自身もトランプよりも知的で言動がまともなバイデンを選んだかも知れない。

 だが、実際は日本ではなく他国、米国民のリーダーを選ぶ選挙である以上、トランプがどんなに軽蔑する嫌いな人間であろうが、結果として米国がどうなろうが、私たちには無関係。
トランプがいいのか、バイデンがいいのかは日本、そして日本国民としての損得だけで判断すべきだろう。

 で、私はこのようなツイートを未明にして、今日は1日中、寄せられる賛否両論のリプライに返信をすることになった訳だが、なぜトランプではなくバイデンが大統領になったことを日本の多くの人々、とくに野党支持者やリベラル周辺が喜ぶのか、私には本当に理解しがたいので、このことについて改めてまとめてみたい。

この「TPP」。事実、バイデンは復帰と再交渉を目指しているようだし、それこそ彼がオバマの副大統領時代に日本に加盟を迫り、野党支持者やリベラル周辺が反対したような内容に変更される恐れは十二分にあるのだ。

何よりもこの新型コロナの時代になって新自由主義的なグローバリズムの弊害がよりクローズアップされている中、昔の日米構造協議の時代に戻るのはあまりにも弊害が大きい。
ましてや日本側も新自由主義者の菅が総理なのだから、トランプと安倍の時のように“米国の言いなりでトウモロコシを買わされる”というような話だけでは到底済まないのは火を見るよりも明らかだろう。

 問題は「TPP」だけではない。野党支持者やリベラル周辺は同じように辺野古の基地建設にも反対していたのではないだろうか。

辺野古も当然、沖縄そして日本の米軍基地や在日米軍全体の問題として考えていかないとならない訳だが、トランプは“在日米軍は日本を守る為のものでカネの無駄。日本がカネを出さないのならば撤退させてもいい”と本気で思っている人間。
つまり逆にいえば、日本政府が“駐留経費は出せません”と言えば、それこそ辺野古どころかほとんどの米軍基地を無くすことさえも不可能ではないのだ。

 勿論、このトランプの考えは間違い。日本の在日米軍は日本を守る為ではなく、米国を守る為、米国の軍事戦略上の都合でいる訳で、“まとも”なバイデンでは、万が一、日本政府が望んだとしても日本米軍基地や在日米軍を減らすことさえ不可能。

 また在日米軍がいるということは、あの不平等条約ともいえる「日米地位協定」も存続するということ。
確かにバイデンは米国民の人権は尊重するかも知れないが、「日米地位協定」で理不尽さを強いられ、人権を抑圧された日本人は救われないともいえるのだ。
余談だが、フィリピンはその米軍との地位協定を破棄する構えでいる。それもトランプ政権下だから出来たことなのは間違いないし、バイデン大統領誕生で一転、不可能にもなりかねない状況。

 こういうことも実は当然で、トランプにクビにされたボルトンが象徴的かもだが、米国の「ネオコン」、戦争屋は共和党か民主党かを問わずにほぼ全員がトランプではなく、バイデン支持を打ち出しているのだ。
勿論、その「ネオコン」のシンクタンクとも言える、“ジャパンハンドラー”でおなじみの「CSIS」が支持しているのもバイデン。

 つまり、バイデンが大統領になるということは、その「ネオコン」が勢いを増すことだし、トランプ政権下で日米関係の表舞台から消えていた「CSIS」の“ジャパンハンドラー”どもも息を吹き返すということを忘れてはならないだろう。

 トランプはそもそも共和党や民主党の主流派ではないことで、こういった「ネオコン」とはずっと距離を置いて来たし、彼の暴力的な言動で多くの人が勘違いしているが、『トランプほど徹頭徹尾「戦争を嫌う米大統領」は過去にいなかった』のだ。
これは私の表現ではなく下のトランプを批判する記事の筆者の表現なのだが、確かにトランプはこの4年間、他国を恫喝することはあったが、シリアやイラン、ウクライナ、北朝鮮などとも戦争をしなかったのは事実。

トランプ大統領ほど、徹頭徹尾「戦争を嫌う米大統領」は過去いなかったのではないかと思う。アメリカファーストの考え方からすれば、外国と戦争することほどカネの無駄遣いはない。「ディールの達人」である大統領は、武力など使わなくても、「経済制裁」をチラつかせて交渉すれば、他国を抑えられると心から信じているのだ。                   【米イラン衝突で見えた「世界の警察官」がいない世界の不安】上久保誠人:立命館大学政策科学部教授

因みに、この筆者はその理由をこんな風に述べているが、理由は何であれ、「戦争を嫌う米大統領」が世界にとって貴重な存在なのは間違いないだろう。
逆にバイデンはそれこそ副大統領として仕えたオバマと同じく、人権や民主主義を錦の御旗にして「戦争をする普通の米大統領」
そのバイデン大統領の誕生を日本の野党支持者やリベラル周辺が、それも朝鮮半島や尖閣、そして自衛隊が艦船を派遣している南シナ海の問題などを抱えた中で歓迎するのは、やはり「意味不明」というしかない筈だ。

 結局、日本の野党支持者やリベラル周辺がバイデン大統領の誕生を大喜びするのは、“(ポリコレ的に)トランプの言動が許容出来ないから”という理由に尽きるのだろうが、日本のリーダーならばまだしも米国のリーダーなのだから本来は無関係な筈。
それが上にあげてきたような日本や日本国民としてバイデン大統領がもたらす弊害以上の理由になってしまうのは、やはりどこかで日本人の多くが米国を単なる他国としてではなく自らの宗主国として崇めてしまっているような気が私にはしてならないのだが…。

※Photo by https://www.tokyo-np.co.jp/n/world/

追記:トランプの「パリ協定」離脱、バイデンの復帰の問題で、バイデン大統領の誕生を喜んでいる、というリプライも頂いているが、この「地球温暖化」の問題も真偽も含めてそう簡単に判断出来ることではない筈。自然エネルギーや排出権取引などは今や世界中の莫大な利権になっているし、その中での日本の不利や有利…例えば電気自動車で日本は大きく遅れを取っていることや、CO2削減を理由に推し進められる原発再稼働の問題なども含めてよく考えるべきだろう。

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