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オレンジジュースと「規制改革」、そして菅首相。

 菅首相がやっと国会を開き、「所信表明」を行った。
首相に就任してから40日以上も国会、そして国民に政府を率いる首相としての抱負や決意を語らないこと自体が議員内閣制の総理大臣としてあるまじき行為なのだが、その「所信表明」の中味も案の定、問題ばかりと言うしかない。

 具体的な政策についての批判はひとまず置くとしても、上の記事の分析にもあるように『進める』『改革』という言葉を多用し、『規制改革を全力で進めます。』で演説を閉めるような菅首相の姿勢は明らかに間違っているのだ。

 で、話は今日のタイトルになっている「オレンジジュース」の話にいきなり移るのだが、『オレンジを切った絵や写真は100%オレンジジュースでないと使えない』という話はご存じだろうか。

これは「景品表示法」という法律に基づいて公正取引委員会が告示している「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」というガイドラインで定められていること。

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」第4条(1)絵表示の基準             果汁入り飲料及びその他の飲料にあっては、 果実から果汁のしずくが落ちている等の表示 及び果実のスライス等の表示は不当表示に該 当する。果汁の使用割合が5%未満のもの及び果 汁を含まないものにあっては、果実の絵を表示 することは不当表示に該当する。ただし、図案 化した絵は差し支えないものとする。

この結果、具体的にはこういうことになる。

 右のオレンジ果汁100%のジュースはオレンジをスライスした断面の絵を使っているが、左の果汁10%の飲料( そもそも果汁100%でないと「ジュース」という呼称そのものも使えない訳だが )は断面ではなく、丸ごとの絵しか使っていないし、もしこれが果汁5%未満となればオレンジの絵さえ使えなくなるという次第。

“バカバカしい”

…恐らくこう思った方がほとんどだとだろうが、本当にそうなのだろうか?
上の絵を見て貰えば明らかなのだが、オレンジ果汁10%の飲料よりも果汁のしずくや断面が描かれた100%オレンジジュースの方がやはり魅力的で美味しそうに見える筈。

 そもそもこういう「規制」が出来たのは、オレンジの果汁が全く入っていない、それこそ砂糖水に着色料と香料を混ぜただけの代物がオレンジジュースを名乗り、魅力的な商品パッケージで堂々と売られていたから。
これは謂わば消費者、私たち国民を騙して偽物を売りつける詐欺商法に過ぎないし、それを止めさせる為、私たち国民を詐欺から守る為にこの「規制」はつくられたのだ。

 結果として出来上がったこの「規制」だけを見れば確かにバカバカしい、どうでも良くて、それこそ無くしても構わない「規制」に見えるのは確か。だが逆に、このバカバカしい「規制」を無くすメリットは何なのだろう?

 それは中味や品質がどんなものかをパッケージや表示で誤魔化し、安かろう悪かろうの商品であっても消費者を騙して売りつけることが出来る時代に戻ること、そういう非良心的な詐欺的商法を行う企業が儲けるチャンスが増えるだけ。私たち消費者、国民にはとっては何のメリットもないのだ。

 ここまで述べれば、もう私が言いたいことは判ると思うが、菅首相が『規制改革を全力で進めます』と言い張るように、確かにこの国にはこのオレンジジュースのような瑣末でバカバカしい「規制」が山ほどある。
ただそれは全てが今まで問題になった事への対策として考えられ、私たち国民を詐欺的商法や不当行為から、そして弊害の方が大きい行き過ぎた競争から守る為につくられたものなのだ。

 勿論、中には技術の進歩や時代の変化で全く無用になった「規制」もあるし、そういうものを廃止するは当然だが、何でもかんでも「規制」を廃止して自由にする「規制改革」「規制緩和」が正しい訳では決してない。

 オレンジジュースの例でも明らかなように「規制」があることで迷惑をするのは私たち国民ではなく企業、それも私たち消費者を騙すことで儲けようという企業。
「規制」を無くすことで得をするのも私たち消費者、国民ではなく詐欺的商法も含めてもっと自由に金儲けをしたいという企業だけなのだ。

 昨日、こういうツイートもしたが、これも同じこと。企業、そして起業をしようする人にとっては「規制」は確かに邪魔者だろうが、よく考えてほしい。私たち国民のほとんどは企業経営者でも起業家でもなく、全員が消費者であり、生活者なのだ。

 “金儲けをするのに邪魔な法令や規制があれば、それを全て「規制改革・規制緩和」で撤廃して、企業などに自由な金儲けをさせろ”

 これが「新自由主義」、菅などネオリベの考えなのだが、ここにはほとんどの国民が企業経営者でも、株主でも、起業家でもなく、被雇用者であり、消費者であり、生活者である、という視点が全く欠落しているのだ。

 その「規制改革・規制緩和」といった新自由主義政策が何をもらしたかは小泉竹中構造改革以降の日本の凋落ぶりを見れば改めて言うまでもない訳だが、今回、取り上げたオレンジジュースの「規制」のような表面的なバカバカしさに騙されることなく、「規制」について私たちはもっとよく考えるべきだろう。

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