Chromebookの哲学

当方はChromebookをよく使う。だいたいのことはChromebookで済んでしまうからだ。GoogleにはChromeブラウザで使える自前のオフィススイートがあるし、Chromebookはフルブラウザ版のChromeが使える(というよりそれしか使えない)ので、noteの執筆も快適にできる。YouTubeで動画を観る、Netflixで映画鑑賞する、Kindleで読書もできる、キーボードがあるからテクストの作業もちょちょいのちょい、身軽な機種が多いのでネットワークさえあれば出先にも苦労なく持っていって作業ができる。

自分が愛用してるのはASUSのChromebook Detachable CM3。本体とキーボードが分離する2 in 1タイプのChromebookで、横置きと縦置きができるフレックスアングルスタンド付きの背面カバーと15秒の充電で45分間も使える内蔵スタイラスが特徴だ。キーボードをつけてタイピング作業をするのもよし、縦置きスタンドでゆったりブラウジングするもよし、内蔵スタイラスでアイデアをさっとメモしても良いし、身軽なタブレットスタイルでエンターテイメントを楽しんでも良い、ここまで縦横無尽に動けるChromebookはこれだけだ。欠点はプロセッサもRAMも貧弱なところ。ブラウジング程度なら問題ないが、重たい動画を見たりタスクがかさんだりするとすぐにもたつく。けっこう前に出た機種だから仕方がないが、いまだに現行モデルだったりする。ASUSは早急に後継機を出してください(懇願)

話を戻しまして、私はChromebookがとても気に入っていてよく使う。なんというかこの「これでいい(ドンッ)」感が好き。今でこそ、Androidのアプリが使えるようになったが、それより前は本当にChromeブラウザしか使えないという潔さだった。UIの作りもシンプルで、Windows PCのタスクバーには色んなアプリケーションのアイコンやその他の情報が詰まっているが、ChromebookにはGoogle Chromeのアイコンがポツンと一つあるだけ。しかもデスクトップにはアイコンを置けない仕様なので、開いたときにお気に入りの背景写真がドーンとすっきり見える。この「あえて情報を減らす、機能を削る」というChromebookの思想は、WindowsやMacとは逆を行っている。いわゆる「レス・イズ・モア」の精神だ。これはヘミングウェイやチェーホフのような「レス・イズ・モア」の書き方をする作家と共通する部分がある。より少なく書くのは、思ったよりも難しいものだ。

Chromebookのデスクトップ画面、余計なものがないシンプルなデザインが好き。充電しろ

Chromebookの思想の核はデータをクラウドで管理するという点にある。Windowsはファイルが主体のOSなので、いろんなアプリを動かすためのファイルがパソコンの中に入っている必要がある。一方で、Chromebookはクラウドが主体なので、ファイルはすべてクラウド上で管理され、パソコンの中に保存しておく必要がない。必要なのは自分のクラウドにアクセスするためのGoogleアカウントだけだ。極端な話、「Chromebookで仕事がしたいな」と思ったとき、私は他の人のChromebookを借りて仕事をすることができる。自分のGoogleアカウントでログインすれば、自分のパソコンと同じ環境を用意することができるからだ。いわば、Chromebookは端末から個人性を排除したのである。まるでインド哲学の大我と小我のような関係だ。Chromebookはまさに「端末」という言葉を字義通りのものとして体現している。Chromebookはこれからのパソコンの進化の先駆けになるパソコンなのだ。

しかし、Chromebookの置かれている立場は良いものとはいえない。文部科学省が推進するGIGA スクール構想では、コスト面と端末の管理の容易さで一定の採用をおさめたChromebookだが、このごろChrome OSの更新が切れてしまったり、安価であるがゆえの故障が多発したりと悪いニュースが目立つ。Chromebookには「安かろう悪かろう」のイメージがついてしまった。

Chromebookは一般的に「パソコン」と聞いてイメージされるWindowsとは違うものなので、Windowsと同じように使うとうまくいかない、かといってAndroidタブレットのように使っても、Android OSとの互換性も完璧ではないので、これまた使いにくく感じられる。その辺を理解していないとChromebookはまともに使えない中途半端なパソコンという印象を持ってしまうかもしれない。なんだかChromebookの立ち位置の現状を表しているようで切ない……

Chrome OSには明確な使用期限が設けられているのも一般的にはマイナスポイントになると思う。Chromebookを使ったことのない方に説明すると、Chrome OSは「この端末はこの日以降OSのアップデートができなくなる」という期日が機種ごとに決まっている。私のChromebookは2028年の4月まではアップデートしてくれるが、それ以降はサポートがなくなる。WindowsやMacと違い、明確な消費期限があるのは消費者にとって悪い印象になる。

だがハイエンドの機種ならともかく、ローエンドのパソコンを5年以上使うことはめったにない。自分は今のChromebookを二年くらい使っているが、更新期限はあと5年も残っている。もちろんだがそんなに使うつもりはない。Chrome OSはアップデートが割りと頻繁にあるので、あと一年もすればRAMもプロセッサも追いつけなくなるだろう。そう考えるとChromebookの使用期限は実際あってないようなものである。

Chromeブラウザでnoteを開いてるときのメモリ仕様状況

RAMが8ギガのモデルが欲しいが、そうすると途端にコスパが悪くなってしまう印象があるChromebook。メインとして使いたい人は問題ないだろうが、自分はサブPCとして使いたいので、そこまで予算を割けない。悩ましい、実に悩ましい。Acerが出しているtab 510というモデルを狙っていたりするが、残念なことに日本では未発売だ(ドウシテ…ドウシテ……)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?