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懐古のにおい

結婚当初、富山出身の主人から、関西風の白味噌と言われましたが、当方、毒親育ち…というより、ほぼ平成バブル(が弾けるあたり)産まれ・都会育ちなので、特に故郷の味というモノはございません。

けれど、一般的な知識として、関西の雑煮は白味噌だということを知っています。
スーパーにもこの時期、白味噌が目立つところに置いてありますし。

美味しい食べ物とか「残そう」という力が誰ともナシに働くことならともかく、とかく共感されにくい文化。
「虫」だったり、「におい」、であったり、西洋音楽以外の譜面に残しにくい「音」であったり、または…歴史のどこかに「著しく悪いイメージ」が付いてしまったモノ、悪いイメージでなくても、時代の流れに沿わないモノは、減っていき、完全に淘汰されないよう長い半睡の時期を強いられることになります。


私的で細かなことで、はがきで鍋敷きを作る、というのが、けっこう有能で長持ちなので、淘汰されてほしくはないお正月習慣のひとつです。
うちで使っているのはなんと先祖代々(祖母→母→私)が使用しているので、もう三十年以上。

ただ、最近ハガキはおろか年賀状文化が斜陽な事、わざわざ折る家庭は少ないかもしれません。
また、個人情報保護の観点から、幼稚園や小学校で「いらないハガキで鍋敷き作り」なんて、教え辛いことだと思います。(作ったところで他の子と交換してはいけないし)

というわけで今年、人にあげる用にハガキ大のスケッチブックで作りました。縁が花のようになるので、ピアス等小物整理している折り紙の箱とともに写真を撮りました。

うーん、カワイイ。


ちょっとしたクラフトアートは、音もなく減ってゆく小さな習慣のひとつです。こうした文化は技術が無くても楽しんだり、SNSでシェアするのも楽しいと思いますが、使用材料が「要らないハガキ」ではダメですね。
装丁の凝ったそれだけでインテリアになるような本ならともかく、新聞で卓上ゴミ箱作りなども、減っているでしょう。紙の新聞を取っていなければそもそも古新聞が出ません。

紙の使用量を減らすことも環境保全に繋がるのだから、これもまた仕方ない時代の流れですが、どのみち、車・運送業界だけでなくラベルを含めた「包装材料」の業界のエコ化を進めないと、グローバリゼーションを維持しつつゼロエミッションを実現するのは不可能だと思います。

けれど、モノを売る上での表示は厳しくなっているんですね。モノ作り企業はいつでも大変です。それはそれで楽しいことでもありますが。

私が好きなものの中に、三味線と着物があり、これは養蚕業と深く関わりがあります。中国からいつ日本に文化渡来したかよくわかりませんが、池澤夏樹の「ワカタケル」に、雄略天皇(西暦418年〜479年)が養蚕を学ぶシーンがありました。

蚕の成長には桑が欠かせません。

思うに、木から成るモノ、紙や糸というのは、ひとつ「環境に悪いから、じゃあコレをやめよう…」といってやめるのは、無理です。
いや、可能は可能かも知れませんけど、心ならずもやめなければいけないもの、が、多くある。紙と文字が、電気を使わず空間と時をつなげる媒体であることを考えると、それも然りです。一本の線を繋げたまま、一箇所を消すことは不可能。


いつの間にか無くなっていて、なんだか寂しいのが、紙芝居文化です。

わりと若いアラサーの都会育ちながら、私が子どもの頃は、土曜日の公園に紙芝居屋さんが来ていました。正直、紙芝居の内容は全く覚えていません。京極夏彦の小説によると、子どもに読むのは憚られるような、勧善懲悪通り越して、そりゃあやりすぎやっちゅー感じのエグい内容のモノもあったんでしょうか?覚えていません。惜しいことをしました。
紙芝居の後に10円か20円か払って、型抜きしていたのは覚えています。輪郭にギザギザがいっぱいの魚とか、人形の腕部分とか、「難易度高ゾーン」があるんですね。

今は、公園にも、地域によって年齢別に遊んで良い時間帯とか、マスク着用義務とか定められていたりして、知り合いじゃない子に話しかけるのが憚られる。
そういうのはすべて、子どもの安全と衛生管理を考えた上でのルールですから、一概に文句も言えないし従うのがマナーですが、紙芝居興行はもちろんやりにくいと思うし、寂しくはあります。

マンションから、カーンカーンという拍子木の音が聞こえて、それに誘われるように階下へ行って、それでも土曜日に用事があることもあり、そもそも紙芝居の内容は全く覚えていないのだから習慣と言うほど何度も行っていなかったとはずです。

それでも型抜きの事を覚えているのは、印象深かったか、または、集中していたからでしょう笑
キレイに割れたら、もう一個もらえます。

高校生になってから、「紙芝居のおじさん」が、NHKの番組に出ていたことも覚えています。何年も紙芝居を作って興行に出ていたから。

廃れつつある文化でなければ特集を組まれることは無かったのでしょうけど…こうした「好きなものを残そうとする力」の一部になれたなイイナと思います。2022年のお正月。


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