【5分で学ぶブランディング】ブランド論(デービッド・アーカー著)の要約
企業のブランディングは今後ますます重要になってきました。ありとあらゆる情報がインターネット上に溢れており、消費者は自ら情報を集め商品をいつでもどこでも購入することが可能になりました。それは、BtoCでもBtoBでも同じです。そういった中でも、DECAX(デキャックス)*1 という消費者行動モデルがあるように、消費者に発見してもらい信頼関係を築いて関係性を構築して行くことが求められます。
*1 「Discovery(発見)」、「Engage(関係)」、「Check(確認)」、「Action(購買)」「eXperience(体験と共有)」の頭文字
信頼関係を構築して行く過程で、企業は自社やサービス自体をユーザーにどのように想ってもらうか、ユーザーとどのように接していくかを考え、実行をしていくことが、より必要なことになっていくでしょう。
=ブランディングの考え方ですね。
こうした中で、ブランディングを体系的に学べる書籍がないか探していたところ、名著として名高い本を見つけました。
それが、デービッド・アーカー著の「ブランド論〜無形の差別化を作る20の基本原則」です。
アーカー氏は、ブランド論の第一人者として知られ、数々の受賞や書籍の発行をおこなっている方です。アーカー氏のブランド論の集大成ともいえるべき本がこちらの本なのですが、20章にもおよび難解な用語も多少含まれているため、マーケティング初心者が読むには少々苦戦をするかもしれません。
そこで今回はこの「ブランド論」に書かれている内容を一部要約してnoteにまとめました。(自分の備忘録的も兼ねてですが・・・)
■資産としてのブランド
そもそもブランディングをすることは企業にとってどのような意味があるのでしょうか?こうした無形なものは効果がわかりにくいし、それよりも営業やシステム開発などに費用をかけたほうが企業としては成長できる気もしますよね。しかし、アーカー氏はブランドは企業の「資産」である、といっています。
ブランドを定量的に測定することが可能になり、また、ブランドは株価にも大きな影響を及ぼす(ブランド価値の上昇がROIと同じ程度の影響力がある)ことがわかってきたのです。価格競争から抜け出し、自社の優位性を築くためには、ブランディングを行うことが必須になってきています。こうした中、マーケティングの役割が高まり、事業の今後を指し示す戦略的ブランド・ビジョンは必要不可欠になってきたのです。
ブランド構築の目標は下記3つです。
1、ブランド認知
ブランド認知が高まれば、顧客の購買プロセスの場面でブランドを思い出してもらう可能性が高まり、購入検討の1つに入れてもらえます。
2、ブランド連想
顧客にブランドを連想してもらうことができれば、顧客関係、購入決定、使用経験、ブランド・ロイヤリティの基盤になり得ます。
例)品質の良い車=トヨタ、デザインが革新的=アップル
3、顧客基盤からのロイヤリティ
一度獲得できたロイヤリティはなかなか失われずらく、ブランド価値の中核を担います。セグメントごとのロイヤリティを見極め、大きさと密度を強化していくことが必要になります。
こうしたブランド資産を高めるマネジメントを行うためには、ブランド・ポートフォリオ*2 を適切に管理・運用しなければいけません。そうすれば、シナジー効果*3 が生まれ、レレバンス*4 を得ることができ、ブランドの拡張や新しいブランドを作ることも可能になります。
*2 企業や企業グループが所有するブランド、サブブランドの集合のこと
*3 複数の企業や企業内の異なる事業部門が協働して得られる相乗効果のこと
*4 商品やブランドに対して、消費者が自分との結びつきを感じる度合いのこと
こうしたブランド資産を活用して成功を収めたのが、アップルやハーレーダビッドソンです。アップルは言わずもがな、スティーブ・ジョブズが復帰する前は事業が停滞していましたが、ブランドを再構築してipotやiphoneにより業績を大幅に向上させました。
ちなみに、こちらの著書では、ブランド資産の定量的な算出方法も記載されています。
①対象ブランドが使用されている製品市場で、自社の事業部門がどれくらいの価値を持つか見積もる。
②無形資産の金額をブランドとそれ以外に分ける。ブランドがどのくらい金額になるか主観的に割り当てる。
③推定されたブランド価値を国ごと製品ごとに集計して全体のブランド価値をはかる。
ブランディングを進めて行く上で、こうした無形資産をどのように評価するか、という尺度を決めて事業モデルを策定して行かなければ、どんなに優れたブランド・ビジョンがあっても実行されることはありません(経営層を納得させることができない)。定量的に測る指標を暫定的にでも置いてみることが大事になります。
■ブランドビジョンを描く重要性〜自社のサービスとは誰の何ためのブランドなのか?
ブランド・ビジョンとは、
そのブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと言葉で説明したものだ。
ブランド・ビジョンがあるからこそ、顧客に自社の考えや伝えたいメッセージが明確に伝わるようになります。ブランド・ビジョンを作るためには、内的・外的環境、顧客セグメント、市場トレンドなどを把握した上で、高い理想を掲げたブランド連想を複数考えます。
例えば、「世界平和を目指す」「顧客のために、社員のために」「最後まで諦めない」「志高く、10倍の成果を目指す」など・・
そのブランド連想をグルーピングして、その中でも最もインパクトをあたえるであろう中核のブランド連想をコア・ビジョンとして設定し、自社がどうありたいのかを決めます。
しかし、こうして設定をしたブランド・ビジョンも実行可能であるものでなければ顧客の信頼を落とし兼ねません。ブランド・ビジョンとは実行計画とセットで用意されるべきであり、顧客との約束なのだと、アーカー氏は説いています。
また、自社ブランドの他社との差別化のポイントとしては、下記を構築することが重要だといっています。
1、ブランド・パーソナリティで繋がる
ブランド・パーソナリティとは、そのブランドから連想される人間的な特徴の組み合わせであると定義することができる。
人は、ブランドを人間のように扱うようになると、認識と行動に影響を受けるようになる。
ブランドの機能的便益を擬人化させることで、ブランドが表したい世界観や価値といったものを、わかりやすく表現することができるようになります。例えば、JXTGエネルギー株式会社(主要ブランド、ENEOS)は、エネゴリ君をキャラクターとして起用し、親しみやすさと自然との共存(地球のエネルギー資源を考えている)しているメッセージを見事に伝えています。
こうしたブランド・パーソナリティは一度できてしまえば、他社から真似されづらい(ほぼできない)ブランド資産になります。
2、組織で差別化を図る
競合ブランドが真似できないものがある。それは組織だ。組織のメンバーや文化、伝統的活動、資産、能力などは、唯一無二であるがゆえに真似できない。
組織の価値観をマネジメントすることができれば、それは他社には真似できない唯一無二のものになるということです。
こうした組織の価値観が明確になれば、顧客との信頼関係の醸成に寄与し、より高い目標をもって顧客と接することができるようになります。
3、機能的便益以外にも複数の便益掛け合わせたブランド創出
機能的便益以外の複数の便益とは、下記3つが挙げられています。
・情緒的便益・・・ある商品・サービスを使用するときに、何かを感じることにより、便益を感じることを言います。例えば、高級スポーツカーに乗ることは、早く走れるという機能的便益と高級車に乗っている高揚感、優越感などといった情緒的便益があります。
・自己表現便益・・・消費者の理想やなりたい自分の姿を実現できる便益があることを言います。例えば、スターバックスに行くと、ちょっとおしゃれでクリエイティブな自分でいられる、といった自己表現を満たしてくれます。
・社会的便益・・・ある商品・サービスを使用すれば、ある社会的集団に所属することができる、といった便益です。オンラインサロンなどがいい例です。
こうした便益を複数掛け合わせることで、他社に負けないブランドを構築することができます。
4、マストハブ(必須要件)になる
マストハブとは、消費者があるブランドを使用するときに、その選択肢に入るために必須な要件のことをいいます。例えば、90年台のマイクロソフトのように、PCにはWindowsといったマストハブを作れることが競合との差別化ポイントになり、競合を市場から排除することができるようになります。
ただ、こうして獲得をしたブランドレレバンスも下記の要因が起きた場合は、失ってしまう可能性があります。
・ブランドが所属するサブカテゴリー(またはカテゴリー)が縮小、または変化している。
・何らかの「買わない理由」が急に広がった。
・ブランドの活気と存在感が失われつつある
こうした負けの要因を回避することも重要になってきます。
■ブランド構築の着想をどこから得るのか?
こちらについては、下記の方法を説明しています。
・外部のロールモデル
・ブランド・タッチポイント(顧客接点)
・顧客の動機と未対応のニーズ
・好機を素早く見極めること
・既存の資産の活用
・顧客のスイートスポット(真芯)
特に、最後の「顧客のスイートスポット(真芯)を見極めて、ブランド構築を行うことがブランドの優位性を築く上でとても重要になります。
ブランド構築とは、要するにブランドとそのビジョンを顧客に伝えることである。前記の手法とはまったく異なる一つのやり方は、顧客が興味を抱いている分野、または情熱さえ注いでいるような分野において、ブランドを顧客の積極的なパートナーにさせるのである。
例えば、パンパースはパンパースビレッジというWEBサイトを持っており、オムツを販売する会社という枠組みを超えて、多くのお母さんにとって必要不可欠な存在となりました。赤ちゃん発育に関する記事やオンライン・コミュニティを運営しており、ブランドとお母さんの関係を築くべく努力をしています。
企業のブランドというものは、無形資産であるために、どのように構築をして評価をするべきか、なぜ重要なのかが、いまいち把握できていませんでしたが、「ブランド論」にはその答えが網羅的に記載されており、非常に学びを深めることができました。
ブランディングを勉強されたい方は、ぜひ一度見てみてください。
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