幸運だねえ。「ブレット・トレイン」

 月初めになるといろいろなことがある。先ずFGOの呼符が5枚交換できる。原神のガチャ石が交換できる。第二水曜日にやっていたスーパーのセールが品を変えまた未来に現れる。そして私は月初めになると、また一年の終わりに近づいてしまったと考えるのである。まだなんにも達成していないのに。

 なにはともあれ、月初めになるといろいろなことがある。UNEXTで無料のポイントが配布されるのも月初めだし、確認していないがブレットトレインを観るために必要なポイントが半分以下になるのも月初めだ。というわけで、今日はブレットトレインの話をしたいなあと思います。

 原作は伊坂幸太郎の「マリアビートル」。主演はブラッド・ピット。監督はデヴィッド・リーチ。共演はいろんな人たち。あとで一人一人振り返っていきたい。

 先ず、私は原作を読んでいた。文庫本で結構長かったが読んでいる。なので簡単な比較をすると、映画は全然違うと言えば全然違うし、意外とそのままといえば意外とそのままだ。

 出てくるキャラクターの名前はほぼ共通。原作にまったくいないのはホワイト・デスぐらいで、後は大体いる。映画しか見ていない人は驚くかもしれないがチャニング・テイタムがやっていた役にあたる人もいる。(デヴィッド・リーチがやっていた役に値する人はいない)

 そのほかレモンが水を飲む場面や、みかんに関するある場面などは、原作の文章と完全に一致している。細かいところを拾うだけ拾っているという感じだ。

 一方で大きな違いは三つ。原作の黒幕である峰岸がマイケル・シャノン演じるホワイト・デスに変わっていること。プリンスの性別と背景。そして鈴木が出てこない。他にもあるけども、見ていて全然違うと思ったのはその三つだった。(終盤の展開がまるまるないというのは、これらの違いと関係していると思う)。

 伊坂幸太郎ファンからすると、恐らくプリンスの設定の変更はショックだっただろう。彼は印象的な悪役であり、物語を裏でリードする役割を担っていた。映画でも裏で糸を引いているのは同じだが、原作のような悪意の権化ではない。もっと浅いところで描写を終わらせている。運がいいという要素も説得力を感じさせるほどでもない。

 トンデモ日本描写と合わせて、映画の賛否両論点の一つだが、個人的にはこの変更はあまり気にしていなくて、読んでいたときからこれはハリウッド映画では無理だろうなと思っていた。木村と王子のプロットを物語に組み込もうとすれば、もう30分は時間が要っただろうし、終盤のCG全開のアクションもトーンにあっていないだろう。やるなら当初の予定通り、もっとシリアスなトーンでやらなくてはならないし、予算は今の半分以下になっていたかもしれない。ブラッド・ピットの演技も「バベル」みたいな感じになっていて、そもそも主人公を演じるのはアジア系だっただろう。

 それはそれで面白いと思うので、日本でも作って欲しいなあと思わないでもない。韓国でもいい。王子を演じたい役者がいっぱいいるはずだ。

 映画全体の感想としては、華麗に雑然という感じ。ドラマはあるが、非常に断片的かつ、ドラマを描いているというよりは小道具を配置しているというイメージ。これは想像通りだった。そもそもデヴィッド・リーチという人はスタント出身で、これまでの映画もドラマ部分は小道具をいくつか配置して、それを利用して簡単に描くというイメージ。デッドプール2でもコインや首輪などのギミックを、ドラマ的な”そういうシーン”を描くために挿入する。そういうのが上手い人である。どちらかといえばアクションを描いたりギャグをいれたりしたい人なのだ。

 この映画にはギャグがいっぱいだ。豊富なカメオやおかしなキャラクターたち。ポップコーンムービーとしてはとても面白いが、ドラマを求めている人にはむいていない。

 キャラクターはとても魅力的である。本当にそう思う。原作でも魅力的だったレモン、タンジェリンのコンビはみんな好きになるだろうし、ちょっとしか出ないホーネットもいい。プリンスは賛否両論あるかもしれないが、まあ劇中の扱いを考えるとあれぐらいがちょうどいいかもしれない。(ジェンダー的なことも一応扱っているような気もしたが、いずれにせよ深く描こうとはしていない。悪役にしきれないならそこを掘り下げてもよかった気もする)。

 一方でレディバグは、他のキャラクターに比べるとやや薄味である。とはいえ彼は実のところ事件のどのカルマにも関わっていないし、彼がいることで周りのキャラクターが活きてくるというのはあると思う。

 あとは個人的には、木村親子がよかった。特に息子を演じたアンドリュー・小路は存在感があって、大した活躍をしていないのに印象に残っている。彼は原作のキャラクターの精神性を一番再現している。トンデモ日本描写と悪ふざけが続く中、父親役の真田広之と合わせて二人だけ感じがまったく違っていた。

 真田広之の役は原作の感じだと柄本父みたいな人がやっていそうな役だけど、映画の設定から考えるとこのシュッとしたおじいさんでよかったかもしれない。

 映画は映画で面白いけども、特に王子は原作そのまま映像でもっと見てみたい部分もあった。バカかる映画のこれと対比して、日本で激渋なマリアビートルを撮ってくれたら嬉しいな。

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