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「たかが〇〇で」と言っていると一生手に入らないものがある


たかがバイトで。たかがパートで。たかが派遣で。正社員だけどたかが年収200万ぽっちで、〇円ぽっちの時給で本気出す必要ない、ばかばかしい。そんな声を身近で、SNSで聞いてきた。

大きなビジョンで考えれば、先日著名人がTVで、「今の日本を変えるには、過剰サービスをやめること」これは確実に一理あるとは思っているのだ。

時給1000円程度の最低賃金アルバイトに、一流ホテル、せめても老舗デパート並みの接遇を求める消費者、実行させようとする経営者。
日雇いバイトをこなしてきたので知っているが、タイミーはじめ、忙しい時間だけ2,3時間都合よく安い時給で働かせ、不慣れで役に立たないと罵倒する、フルタイムでもう1人雇いその人の生活を守る気概も余裕もない店の経営者。
今後、単純労働や接客は若い層の総高学歴化と単純に労働現役世代の急減少で、外国人と年金では暮らせない高齢者メインになっていく。

外国では、レジ係はスツールに腰掛け、かごに宝物を扱うような手つきできれいに入れなおす、なんてことはない。おなかが痛そうなポーズで手を合わせ、バックヤードに出入りするたびに最敬礼をするスーパーのパートもいない。安い仕事は賃金で妥当と思われる範囲内で。
また、「売る」「金銭の正確な授受」が仕事であり、「訪れた人を気分よくさせる」ほうがメインになっている日本とは違う。

日本の「おもてなし」の心が私は実は非常に嫌いだ。
多様な接客業をしてきて思う。いわゆるおもてなしは喜ばれるため、ではない。実質「クレーム除け」でしかない。

本来は、おもてなしというのは金銭的な上下関係がない、わざわざ遠方より自分に会うために訪問してくださった客を心からの感謝でもてなす、ものである。

支払い10に対して、赤字覚悟、従業員疲弊必至の14のサービスをするための「オモテナシ」に現状なってしまっている。

幾つか働いた会社で朝、全員で大声で「お給料はお客様から頂いております!」「常に全力で限界を超えます!」「できる!できる!やるぞ!やるぞ!」と叫ぶとこがありました(笑)

クリエイターや商品取引であれば、この仕事、報酬〇万で、と交渉がきたら、〇万でしたらこの量、この質での提供になりますよ、は当たり前のことでしょう。

ところがこれが、人間となるといきなり
時給1000円です。月給15万です。営業などでインセンティブがつく仕事を除き、接客、事務、他の人よりいくら笑顔で美しい言葉で丁寧な接客をしようが、他の人が1時間かかる事務処理を30分でしようが、
数十円の昇給は可能性がなきにしもあらずでも、やる気のない、できない人と同じ報酬。
かつ、客も経営者も、時給分の仕事ではなく、その人のポテンシャルのMAXを要求し、むしろ100%の努力でないとその人を「低く評価」します。

「報酬に応じた労働提供」「幾らもらっているか」ではなく日本の場合
「1円でも報酬が発生したら、お金をいただく以上は全力であたれ」
精神が根強い気がします。

これを、個々人が自分のポリシー、モットーとして持つことは素晴らしいと思いますよ。でも、こういうのは、昭和のように「雇った以上、きみの人生はきみの家族まで含めて守るよ」という気概で終身雇用をしていた時代だからこそ、「雇っていただいている以上、自分の能力はMAX差し出そう」という恩義でできていたことのような気がするのですよ。

と、ここまでは安い賃金ならそれなりの働きでいい、を支持する考えを述べてきたのですが・・・・最大の理由は、「めっちゃ頑張ってほしいのなら雇用側が高い賃金を支払うべき、そしてその賃金の元となる商品、サービスに消費者は安さを求めるな」「安いものが欲しいなら礼儀やサービスに一切文句を言うな」と考えるからです。

また、個々人のモットーとして、賃金に関係なく最善を尽くすというのは、素晴らしいのですが、1つ問題があります。

むかしむかし、OL進化論という素晴らしい漫画がありました。4コマですが、働くという現場でのリアルな問題が上手に風刺されていました。

1人、とても頑張り屋さんがいました。1人辞めたので、今いる人数で仕事をこなすには、獅子奮迅の働きが必要だし、残業もしまくらないと終わりません。今日も残って頑張る!とやる気満々の子に、先輩が注意をします。
「頑張ってこの人数でまわしてしまうと、上は人員補充をしないわよ。」
1人のピュアな頑張りが、部署の全員を賃金以上の過酷労働に陥れる、という話でした。

私がこの注意される側のタイプだったのです。もともと仕事の手が非常に早く、処理速度が速い、機動力があるタイプです。しかも頑張ってしまう性格。
1人で2人分の業務量はこなせてしまう。
これ、できるほうが評価される、のではないことを知りました。
〇さんすごいね、頑張ってくれてありがとう! では、ない。
できるほうが基準にされてしまうのです。
〇さんは(当たり前に)できてるのに、なんで他のみんなは遅いの、できないのと同僚に被害が及ぶ。人間関係が不穏になります。
はっきりと「アンタさ。まわり見えてないよ。やめてくんない?」ありました。まったりと時給分の働きでぼちぼちやってきた先輩たちには不快でしかなかった。

かつ、誰か辞めても、〇さんがいるから補充不要、となり
自分が休むと2人分程度の欠員状態に陥るし、2人補充しないと辞めさせてくれない、もありました。

さて、それでも、です。
「安い時給なんだからテキトーに(適当にではなく)手をぬいてサボりつつ
ダルいんでのんびりやろ」という主義でバイトを「時間内滞在してこなす」ことに何の疑問ももたない、むしろ「自分、手抜き上手ww」といかにサボっているかを自慢してしまうような人と

「この地域とこの業務だと時給〇円にしかならないけど、働く以上は時間内、精一杯勤めよう」という矜持がある人とでは、
数年後。数十年後。手にするものが違うと、私は信じています。

あんたやる気が目障りなんだよ、という頑張らない人たちがいないような
かつ、会社がパフォーマンスに見合った評価を賃金でしてくれるような
いい風が吹いている勤め先に、いつか出会うと思いますよ。

近所のスーパーに若い男の子がいました。
整った髪、背が高く、低いレジ台は辛かろうに
かなりレジから遠い精肉あたりにいても、朗々と響く彼の声。
どんな忙しい日曜の夕方でも、たまに訪れる平日の昼でも
どんな横柄な客にも、どんなもたもたしたおばあさんにも
常に同じテンションで同じ朗らかさで「いらっしゃいませ^^」
テキパキと丁寧に品物をさばき、流さない。にこにこしている。

息子より若いなぁ・・・男性のトシはわからない。
学生?事情でフリーター?大学生にも見えるが20代後半にも見える落ち着き。

とても穏やかな気持ちになれるので、よほど混んでいなければ彼のレジに並んでいた。忙しいし、おばさんに絡まれて気分よかないだろ、と
笑顔で「ありがとう^^」といつも言うのみだったが
たまたま珍しく、私の会計が終わったあと後ろに並んでいない。
平日6時、忙しい時間だ、でも一言だけ。
「おにいさん、いつもとてもさわやかね、いつもありがとう」
びっくりした顔になったあと、満面の笑みで照れながらお礼を述べてくれた。

ここでこれ以上構ったらキモ客である。会釈して作荷台へ。
夫にも「お客様の声」に投稿してあげなよ、と。
ところが先日の改装で紙のお客様の声コーナー、撤収されてしまったのだった。よほど心無いクレームが多かったのか。。。。
電話で・・・?うーん、自分コールセンターだからわかるけど
どうしよっかな・・・

ところが、翌日から彼は消えてしまったのだった。
うっわ、私がキモかったか!? と動揺したが
おそらく、卒業、春休みシーズンだ。
彼は大学生だったかな? 就職決まったのかも。
故郷に帰省かな?

夕方の殺気立ったスーパーに春のひだまりのようだった彼の声がなくなり、この数日さびしい。

たかがバイト、かもしれない。でも、常に誠実に業務と人にむきあってきたあの青年の未来は、きっと間違いなく、明るい道が待っている。

レシートに印刷された0君(少し珍しい姓だから書かないけど)の名前を眺め
頑張れ、青年。あなたのその純粋さで傷つくこともこの先あるかもしれないけれど、おてんとうさまは見てる。

彼がずっと健康でありますように。彼が思う幸せを手に入れられますように。

人生はなんのかの、帳尻があうようにできている、と50代まで生きて思う。
短絡的な目先の「トク」「ラク」は、数年後数十年後に利息をつけてあなたの人生に返済を迫る。(つらい経験あり)

誰に褒められなくても、小さなトクではなく徳を積み上げた人には
お金とは限らないけど、宝箱が行く手に突然降ってきたりもする(これも経験あり)

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