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我孫子の読み方に対する納得の理由

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 我孫子という地名をご存知でしょうか? 全国各地にある地名ですが、市区町村名としての我孫子市は千葉県北西部にあります。さてこの地名は「あびこ」と読むのですが、不思議な読み方だと思われる方もいるかもしれません。しかし、実はこれは特別な読み方ではないのです。今日は我孫子という漢字と「あびこ」という読みの関係性をお伝えします。

我→あ

 現在の日本語で一人称といえば、などがありますよね。中でも「私」については、「わたし」と読むか「わたくし」と読むかの2パターンがあります。同じようなことは遥か昔からあって、その一例が「我」または「吾」と書いて「あ」と読むパターンなのです。小学校や中学校の国語でこんな俳句をやった方もおられるでしょう。

万緑の 中や子の歯 生え初むる

 昭和初期の俳人、中村草田男の有名な句ですよね。二句に出てくる「吾子」の読みが「あこ」であることに驚いた記憶が僕にもあります。

孫子→ひこ

 現在では1字目の「孫」の字は「まご」という読みに統一されていますが、かつてはそうではありませんでした。孫の子をひ孫と呼んだり、祖父母の母をひいおばあさんと呼んだりしますよね。ここに出てくる接頭辞「ひ」は、自分から見て1世代遠い血族であることを指します。孫は自分の子の子ですよね。そういうふうに考えて、昔は孫を「ひこ」と読んでいたのです。

 では、2字目の「子」は何と読むのでしょうか? 正解は「読まない」です。実は日本語には「子」の字を読まない場合があるのです。それは「こ」「し」「す」で訓読みが終わる1文字の漢字の後ろに「子」をつけた熟語の一部。梃子てこ梯子はしご梔子くちなし椰子やし茄子なす杏子あんず柚子ゆずなどがその例になります。今回は孫が「ひこ」と読まれて「こ」で終わっているので、後ろに「子」がついてもこれを読まないということなのです。

あ+ひこ→あびこ

 これは連濁と呼ばれる現象です。登山(と+さん)、賢者(けん+しゃ)、船舶(せん+はく)など、日本語には多くの例がありますね。

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