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私たちは自由を求めて進み続けた

夜の灯りクリニックのヨルです。
今回は恋愛・結婚にまつわるお話の最終話になります。

前二話は「結婚はどこへ消えた?」「恋愛は永遠に私たちのものだ」というタイトルで記事を書きましたので、ぜひご覧下さい。

文明社会において「結婚」は私たちの前から消えてしまいました。私たちはそれを探しに行くか、探しに行かないか、自分で決めなくてはなりません。

文明社会において私たちは「恋愛」と一緒に暮らしています。「恋愛」は私たちを慰めてくれますが、「結婚」がどこへ消えたのかを教えてくれません。

そういうお話でした。

そろそろ恋愛・結婚のお話を締めくくろうと思います。「結婚」はどこへ消えたのか、その答えは実は明快です。

「結婚」は元いた場所に帰りました。
「実家に帰らせていただきます」という訳です。

今回は、荒川和久さんの記事・グラフを引用させていただきます。

ここでは離婚率のデータをお示しします。長期推移は未婚率と離婚率で大きな違いがありません。離婚率を見れば概ね結婚の行方が分かります。

前二話で見た未婚率のデータと同様に、1970年代後半から離婚率が破竹の如く上昇しているのが分かります。

しかし、過去に視野を広げて、1800年代のデータを見るといかがでしょうか。
普通離婚率と特殊離婚率のいずれにおいても現代よりも高い時期に到達します。

私たちは、私たちの世代で急に離婚率と未婚率が跳ね上がったことを嘆いているかもしれません。

それは本当は嘆くには値しません。
何故なら私たち人類は、少なくとも3組に1組の夫婦は離婚し、約半数は独身で過ごすことが想定された生物種だからです。

歴史的事実を客観的に見る限り、近年の未婚率・離婚率の上昇は異常に陥ったのではなく、ホモ・サピエンスの平衡状態に還ったと考えるのが妥当です。

それでは、本当に異常だったものは何でしょうか。
答えは明白で、明治憲法が発布されてから戦後の高度経済成長期に入るまでの近代日本で信じられていた国民皆婚思想が異常でした。

先入観を排して考えてみましょう。
初恋の人と一生添い遂げるカップルがどれほどいるでしょうか。
二人目の恋人となら一生添い遂げることができますか。
三人目なら間違いがないと言えるでしょうか。

何人目でも同じです。
我々は恋愛結婚をする限り、少なくとも3組に1組は離婚を経験する生物種です。

我々の恋愛ホルモンは3年程度しか効果が持続しないと言われています。産まれた子供が卒乳するまでの時期を想定しているのかも知れません。ホルモンを優先すれば、野生下において人類は毎回異なる父親の子を出産していたことになります。

私たちは孤独を嫌います。その一方で流動性の低い人間関係を苦手とする生物種でもあります。

不都合な真実かもしれませんが、現生人類はかつてない程に結婚ではなく恋愛を必要としています。
私たちは、おそらく現在想定されている思春期よりかなり前に、かつてよりも強い恋愛感情を経験しています。
ここでいう恋愛とは、必ずしも現実の人間同士の交際である必要はなく、恋愛感情を抱かせてくれるあらゆる体験、例えばアニメやゲーム、仮想空間から受け取る刺激を含みます。

こういう生育環境の中で、現生人類は恋愛を提供してくれる媒体を強く求めます。「草食系男子」という言葉が流行した背景には、若者の恋愛離れがあるのではなく、むしろかつてないほどの恋愛欲求の高まりがあるのだと感じます。

私たちに罪があるでしょうか。
私たちは自由を求めて進み続けただけです。

現生人類の悲しさはどこにあるのでしょうか。
少なくとも人類に恋愛を長期的に提供し続ける能力がないことは悲しいことです。人類が生み出した名作と呼ばれる小説は全てこういう孤独に端を発しているのかもしれません。

歴史的にみてホモ・サピエンスは人生のごく一時期しか「未婚の恋人」と恋愛してきませんでした。

人類が永遠に恋愛を求め、かつ、人類に恋愛を長期的に提供し続ける能力がないとしたら、私たちはどこに向かうのでしょうか。

私たちは私たちの住む文明社会という生態学的ニッチを理解しきれていないのでしょう。

三話続いた恋愛・結婚のお話は一旦ここで終わります。
しかし、今後も考えてゆきます。

書くべきことがたくさんありますが、時間が足りずもどかしいです。

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