今日から丸坊主

　この鬱陶しい髪の毛を全て刈れば、丸坊主にすれば。心の不安は消えると思った。私はお風呂場にて、いわゆるバリカンというものを機動させる。

　「はらり。」毛の束が、衣一つ纏わぬ皮膚に心地よく着地する。そのまますべりおちるものもあれば、少し擽ぐるようしばらく付着するものも様々だ。胸の長さまであった髪は、一度全体に刃を通すだけでは綺麗に整う訳ではなかった。まちまちになった毛を見て、笑みと涙がこぼれる。

　また、毛束はおちる。ずっとそれを繰り返す。

自由にしてください。願って叶った行動だった。
いや、
願って焦った衝動だったか。

　すっかりと風通しが良くなった、丸い自分のてっぺんをそっと撫でる。小学生の頃、友達と毎日寝転んだ、通学路の芝生をふと思い出して、切なさと涙がこぼれる。

心は軽くなって　いない　願いに反して

　シャワーを浴びる。そして私は今日も、白い紙袋の中から錠剤を取り出し、冷たい水と共に、彼らを私の体内へと誘導するだけなのである。

20代女性　今日から丸坊主。